【勢いで書く】VOCAParty!の投稿曲を全てレビューしてみよう【恋】
はじめに(すみませんの心を乗せて)
ここが「note」ってのか〜なんだか興奮してきたな
という事で、実に昨年のボカロリスナーアドベントカレンダーぶりのnoteとなってしまった事をお詫び申し上げます(追記:先に別のnoteを投稿する事になりました)。当記事はobscure.氏主催の「 #ボカロリスナーアドベントカレンダー2024 」参加記事になります。今年も本企画の実施、大変お疲れ様です!
今回も、アドベントカレンダーという年1回の機会となれば当然手間をかけた記事をお出しする方が相応しい...とは思いつつも、割とギリギリまでnoteの準備をしてこなかった苔氏という車の妖怪(これは今思い付いた設定)の仕業によって、当初の予定から変更しまして、12/14からニコニコ動画にて開催のボカロパーティー「VOCAParty!~ Year-End Party 2024 ~(以下、『VOCAParty』)」投稿曲の全曲レビューを決行する事となりました。
VOCAParty!とは、「2024年の合成音声音楽を振り返るパーティー」として11月に突如発表された、動画投稿リレーと生放送企画から成るニコニコ公式企画です。いずれの企画にも数々の2024年を彩ったボカロP及びボカロリスナーが参加しており、大きな盛り上がりを見せましたが、苔氏は今回14日に開催の、総勢24組の人気ボカロPによる動画投稿リレーに注目し、そこで投稿された計24曲の作品について勝手にレビューをさせていただきます。
誰に頼まれたでもありませんし、自分で勝手に時間的制約を設けて本記事を書き始めておりますので(その期日すら1週間ほどオーバーしている現実泣)、確実に自信のある内容をお届けできる、という保証はありませんが...本記事を読んで、今まであまり触れて来なかった方の作品も含め様々な楽曲に触れていただくきっかけを生み出すのが今回一番の目的です。
少なくとも今回選出された24組が、2024年を彩ったボカロPの方々である事はニコニコによって保証されておりますので、是非とも"今"のボカロシーンを知るという意味で本記事を足がかりにしていただければと思います。また、当然今回紹介したボカロPの他にも2024年素晴らしい楽曲を残された方々は無限に存在しますので、自ら探求の道を切り開いていけるような、ボカロシーンへのワクワク感もお届けできれば幸いです。
謝辞
この記事を仕上げる間に、4年半以上使い続けたiPhone11をiPhone16へと買い換えました。かなり限界が近付いており画面の一部が反応しないという致命的な不具合も生じていましたが、なんと美品同様の価格で下取りしていただき、今では快適な暮らしを取り戻しています。
初めて1人でiPhoneを買う上、機械に弱い事でお馴染みの苔氏に、懇切丁寧な説明をしていただいたAppleの店員様に、この場をお借りしまして改めて感謝を申し上げます。
楽曲紹介
※紹介順は楽曲の投稿順に同じ
1. この薄暗い日々に、愛と、少しのメロディを。/夏山よつぎ
VOCAParty1曲目を飾るのは、ボカコレ2024冬に投稿された「ころしちゃった!」がスマッシュヒットを記録した夏山よつぎさん。パニック映画のようなテーマを、臨場感もありつつ極めてキャッチーに描き出す世界観に、苔氏も非常にハマっておりました。
そんな夏山よつぎさんの新曲は、「ころしちゃった!」と同様のエレクトロスウィングでありながら、より芯の太いベースラインの充実のホーンセクションを軸に、歌謡ポップスを色濃く踏襲したメロディーをKATIO×MEIKOのデュエットで歌い上げる、渋くも華のある作品になっております。
本作は先月のTHE VOC@LOiD M@STER 57にてリリースされたコンピアルバム『レトロ・ポップス』の収録曲であり、まさにそのコンセプトの芯を通したような作風に仕上がっています。
近年、合成音声の技術が向上する中で、"ボーカルの力を信じる"ボカロ曲が増加傾向にあるように感じます。近年はSynthesizer VやCeVIO AIなど、デフォルトの状態から既にフェイクやしゃくりといった"歌い手の癖"が宿るような合成音声も次々登場し、バラードといった純粋な歌モノの評価が変化してきている中で、まさに歌謡曲を踏襲した"歌モノ"と言える本作が、KAITO×MEIKOという合成音声の最古参の一角を採用した点は個人的に面白いポイントだと思います。
合成音声にとって、楽曲におけるボーカルの"説得力"を生み出すのは技術的な部分だけでなく、その合成音声のキャラクター性に左右される部分が大きいと考えています。カイメイという、クリプトン年長組として"大人の愛"といった複雑な感情を託されてきた歴史のある2人が、愛とやるせなさ交わる繊細な感情を描いた本作を歌うのは非常に説得力があり、2人の歌唱にも自然と熱量が乗ってくるのを感じるような作品となっております。
2. いいですか/黒うさぎ
2曲目は、9月投稿の「全部夢だった!」がスマッシュヒットを記録した黒うさぎさん。次第に追い込まれていくような内向きの情念を、同じくボカロPであるヌルさんによる絞り出すような感情の乗った調声の重音テトSVで歌い上げた本作は、多くのリスナーに衝撃を与えました。
そんな黒うさぎさんの新曲でも、ヌルさんの重音テトSVとのコラボレーションが実現しました。
本作は「全部夢だった!」以上に内向きの黒い感情に満ち満ちており、現実にある全てのものが敵に見えるような強烈な絶望へと落ちていく様を描いています。救いの芽を全て摘み取っていくような嘲笑的な俯瞰の問いかけも交えながら、それらの言葉は全て"無力なわたし"の中で完結しているのです。
このようなテーマを扱いながら、随所には強力なキャッチーさを落とし込んでいるのが、黒うさぎさんの強さであると考えています。終始焦燥を煽るように響くクリック音や、一瞬の心の迷いを映すようなBメロのグリッチ音など、サウンド面で随所に心を掴むギミックが仕掛けられているのはもちろん、黒うさぎさんが全て手掛けるMVの演出にもかなりの幅を感じます。特にサビで登場する主人公の心の中を表すような廃施設?のシーンでは激しい動きのあるアニメーションが使用されるなど、見れば見るほどにその内向きな感情に我々も巻き込まれていくような感覚を覚える、確かな質感のある作品となっております。
3. アルデンテ/EO(エオ)
3曲目は、2023年末に投稿された「8番出口(非公式イメージソング)」のヒットから、そこに派生するようなコンセプトのシリーズで存在感を示したEO(エオ)さん。「8番出口」から「私の終点」まで続いた"しりとり"シリーズでは、特にEOさんのセンスとコンスタントに曲を上げ続ける自力が発揮されていたように感じました。
そんなEOさんの新曲は、アルデンテというパスタの茹で加減を主題とした、刹那的な恋の歌となっております。
一見絡みにくいと思われる2つのテーマですが、パスタの"限られた一時の最適な状態"という意味のアルデンテと、機を逃した恋の儚さを上手く落とし込んで、ダイレクトにお洒落な印象を与える作品に仕上がっております。
サウンド面では、間奏のリリースカットされたようなピアノが印象的です。特に2番Aメロのフォールしていくような音程から間奏に移行するパートは、歌詞の沈んでいくような心模様と呼応しており、ミニマルな構成の中でアレンジ面に確かな深みをもたらしています。シンプルながら印象に残る、EOさんの強み光る作品となっております。
4. 2024感謝曲 (feat.カル・テト12月中旬)/マキシウキョウ
4曲目は、重音テトSV歌唱によるブラスを主軸とするパワー溢れる楽曲で話題となったマキシウキョウさん。ボカコレ2024冬投稿の「重音テトのフェルタゴ~ン」を始めとする重音テトおよびその派生キャラたちを題材とした作品や、「伊っ達さ」のようなオリジナルキャラクター達の人間味溢れる作品は、多くのリスナーの心を惹き付けました。
まず、本作に登場する「カル・テト」というのは、マキシウキョウさんが今年6月から毎月投稿している、その月の近況報告を4人の重音テトが四重唱にて披露してくれるという内容の動画シリーズになります。そんなカル・テトたちを迎えた本作は、マキシウキョウさんの2024年投稿曲である4曲をカル・テト+オーケストラアレンジで展開していくメドレー動画となっております。
総じてオーケストレーションとしてかなり充実度の高い内容となっており、「重音テトのフェルタゴ〜ン」や「紅白回転ダ・フラスバーン」といった重音テト"たち"のドタバタ劇を描いた作品では原曲のパワフルさを残した、壮大なホーンセクション響く疾走感溢れるアレンジである一方、「伊っ達さ」はそれと対比するようにワルツを思わせる淑やかなアレンジに仕上がっており、一曲の中に確かなバラエティーを生み出しております。
本作の〆には改めてカル・テトたちが登場し、「今年も1年ありがとね」のコーラスと共に大団円で締め括ります。年末の特番を視聴したような、まさに1年の〆に相応しい作品となっております。
5. カーシニゼーション/シカクドット
5曲目は、合成音声のキャラクターソングやネットミームをテーマにした楽曲でお馴染みのシカクドットさん。ジャンルに囚われず、作品のテーマ毎に様々な作風を使い分ける実力者です。
そんなシカクドットさんの新曲は、「カーシニゼーション(carcinization)」という、あらゆる甲殻類は最終的にカニのような形態へと進化するという、実在する理論をモチーフとした作品になっております。進化の過程でそんな「すべての道はローマに通ず」みたいな話があるのかと思いますが、そのまさカニです。
本作ではアッパーなロックチューンに乗せて、音街カニとカニ音テトが踊り狂います。特に軽快なカニソロ(ギターソロ)、そしてギターを掻き鳴らしながら首をぶん回すテトには強く目を引かれます。
アレンジ面では、ラスサビ前の「ビヨンドマイライフ」の一節で転調し、一気にラストスパートをかけていく展開が印象的です。どこを取っても勢いの衰えない、今にも横歩きを始めそうな作品となっております。
6. More And More A Cute!/豆カカオ
6曲目は、「でいどりーむ」や「みゅーじっく♡えんじぇぅ」など、初音ミクを始めとした合成音声のイメージソングで話題となった豆カカオさん。作風も広く、1つのキャラクターを取っても様々な魅力を見せてくれるのが特徴です。
そんな豆カカオさんの新曲は、初めて鳴花ヒメをボーカルに起用した、高く伸びやかな声の生きる王道のパワーポップです。
鳴花ヒメが"あなたのメイド"となり、「あなたな帰りを待つの」と初心な恋心を歌い上げる本作。ツンデレキャラな所とか、"あなた"に救われた過去がある所とか...豆カカオさんが鳴花ヒメを通して描こうとしている理想のキャラクター像を、メイドという設定を1つ乗せる事で見事に描き上げいるように感じます。
アレンジ面では、全体的にシンプルな編成である事で、2Aメロのチップチューンパートなど、細かいアレンジの変化がより際立つように感じます。王道ポップスだからこそ、手数の多さ、そして何よりキャラクターへの愛がストレートに伝わる作品となっております。
7. ヘッチャカ/さたぱんP
7曲目は、ボカコレ2024冬投稿の「ヤババイナ」を始めとした、アニメーター内田清輝・グ弐さんとのタッグを組んだ、いわゆる"電波曲"と言える圧倒的情報量の楽曲群、またそれらの作品から派生したショート動画が大バズし、現在Youtubeのチャンネル登録者100万人を超えるボカロPの一角、さたぱんPさんです。
そんなさたぱんPさんの新曲は、映像に同じくボカロPのにこにこもかれーさんを迎え、先述のシリーズと比べて"電波曲"の雰囲気は鳴りを潜めた、ポップで軽快なロックチューンとなっていますが、やはり予測不能のBPM変化やジャンル横断など、カオスを極めしさたぱんP節は健在です。
さたぱんPさんの動画は初投稿から観測していますが、ボカコレ2023夏投稿の「あーーーーーーーーーー」あたりから約1年ほどで、圧倒的に編曲力に磨きがかかったという印象があります。一見無秩序の中にも確かな型が存在しており、本作では"夢と現実"というコンセプトを軸に急な曲展開を誘導したり、歌詞のストーリー性を持たせつつも擬音などの情報量を詰め込んでいくなど、カオスの中にもキャッチーに突き抜けた要素を数々散りばめているのです。
映像面では、流行りのキャラクターのバストアップ+ダンスモーションをストレートに取り入れているのが印象的です。圧倒的なスピード感で独走する個性と"今っぽさ"が入り混じる、まさに時代の先端を行く作品となっております。
8. 2代目閻魔/読谷あかね
8曲目は、音楽と映像の掛け算で、唯一無二のコンセプトを携えた作品を次々と投稿している、ボカロP兼動画クリエイターの読谷あかねさん。初投稿の「散り散り」以降重音テトSVをメインに使用していますが、今年はコンセプトの更なる拡大に伴い、葛駄夜音や和音マコといったUTAU方面にも幅を広げているのが印象的です。
そんな読谷あかねさんの新曲は、地獄にて"2代目閻魔"として選ばれた者の、ブラックな労働環境への嘆きと徐々に崩壊していく情緒をキャッチーに描いた作品になります。
そのコンセプトはまさに奇想天外といった具合ですが、曲のビートに合わせて打ち鳴らされるガベルや個性的な表情の変化など、とにかくその世界観に強烈に惹き込むためのギミックが数々散りばめられています。
"天の裁き"という高尚なものが機械的になっていく事によって、次第に正義の面目は剥がれ、自身の欲を満たすための"制裁"に歯止めが効かなくなっていく...まさに寓話として描けてしまうような、可笑しくもストレートな教訓を込めた、映像クリエイターならではの作品となっております。
9. こいのうた/あだちかすか
9曲目は、勢いのあるギターと知声を始めとする真っ直ぐで芯のあるボーカルを引っ提げた、ド直球のパワーポップで人気のあだちかすかさん。飾らない表現が誰かにとっての華になるのだと、そう確信させくれる作品の数々を投稿しています。
そんなあだちかすかさんの新曲、単刀直入に言えばこれが口から溢れました↓
という訳で、こちらもこのくらいどストレートに気持ちを伝えてしまうのが、この曲に対する"正解"の姿勢であると、そう感じた訳です。
...とはいえもう少し具体的な事を書いていくのですが、本作はまさに恋の生き写しのような曲で、恋を知る瞬間から、それが確かに自らの中で結実していくまでの過程を、あまりにも瑞々しく閉じ込めた作品です。
特に強く心掴まれたのは、1番Aメロで"愛"について「つまんない」とか「馬鹿みたい」などと軽くあしらうような言葉を並べながら、その先のサビ頭で「君を愛してる」というストレートな愛の告白へと振り切る部分です。その言葉は口をついて出たようで、Aメロ頭から既に"愛"の一文字で頭がいっぱいだったのではないかと、そんな妄想を膨らませずにはいられません。この一節の爆発力にあてられたら、"想いを言葉にすること"の重要さを疑う人はいないはず。知声のあどけない声も存分に活かした、あだちかすかさんの曲の中でも突き抜けて前向きな作品となっております。
10. おはなしは続く/sabio
10曲目は、ボカコレ2024冬投稿の「愛哀曖」でデビューして以降、真っ直ぐな言葉を携えた圧倒的なクオリティのポップスで幅広いリスナーの心を魅了していったsabioさん。ポップスと一括りに言ってもその作風は非常に幅広く、元々"高村風太"という名義でセッションユニット「ぷらそにか」やバンド「Hi Cheers!」のメンバーとして活動してきた、もう言うまでもなくその道のプロです。
そんなsabioさんの新曲は、宮舞モカと重音テトSVをボーカルに起用した、まさしくボーカルの力に厚い信頼を寄せたポップ・ロックになっています。
どのパートを取っても、真っ先に心の側に駆けつけてくるような爆発的な引力を宿したそのメロディーは、卒業・別れの歌のようなアンサンブルを奏でながら、しかしそこには確かに再会への希望を託した言葉が歌われています。既に先の未来にいる2人が、また会うその日まで確かに人生という「おはなしは続く」という事、更にそのもっと先,未知の世界にも光は溢れているという事を、しなやかで途切れる事を知らないモカ・テトの歌声が、確証へと変えてくれるのです。
アレンジ面で特徴的なのは、2番後のインターリュードでギターソロに加え、Dropのようなフックとなるサウンドが使用されている点だと思います。sabioさんの楽曲の強みは、J-POPらしさとボカロ曲らしさ、その両方を非常に高い次元で表現し、一作品の中に共存させている点であると考えています。幅広くポップスに精通している事は言わずもがな、初投稿の「愛 哀 曖」のように、ボカロ的なアプローチにも振り切る事ができる、そんな柔軟さと実力の光る凄みのあるアプローチが、まさに本作でも遺憾なく発揮されています。今後の活躍に一層期待高まる、力の入った作品となっております。
11. 監視してます/ヒロモト ヒライシン
11曲目は、4月投稿の「生活についての考察」が話題になったほか、2024年トップクラスのメガヒット曲であるサツキさんの「メズマライザー」ではギターを担当しているヒロモト ヒライシンさん。時にはカラリと開放的に、時にはどこか哀しげに響くギターサウンドが特徴的です。
そんなヒロモト ヒライシンさんの新曲は、終始怪しげなギター・ベースが絡み付くように唸りを上げながら、引き摺るように続いていく愛のもつれを描いた作品になります。
「最後にしよう」と言いながらずるずると続いていく関係、それが不純なものとはお互い分かっているでしょう。本作で向けられている"監視の目"は一体何なのか、ここは解釈の難しい部分ですが、本作の主役である女性と限りなく似た見た目をもつそれは、彼女の"理性"あるいは"後ろめたさ"といった内面が具現化した象徴なのではないかと考えています。常にこちらに手招いてくるそれは、繰り返すだけの関係からまだ引き返そうとする心の現れなのかもしれない。だからこそ、その関係に堕ちていく、彼女の影の部分がより鮮明になるような、そんな対比を描くための存在として"監視の目"があるのだと思います。サスペンス的な複雑な構造を纏った、味わい深い作品となっております。
12. 今日から君はスター!/picdo
折り返しとなる12曲目は、近年の足立レイブームの中で、2021年から足立レイのキャラクターソングを作り続ける、間違いなく足立レイ界隈における中心人物の1人であるpicdoさん。最近は露出があまりありませんでしたが、この期にめでたく完全新曲の発表となりました。本当にありがたい。
そんかpicdoさんの新曲は、足立レイの魅力を真っ直ぐに描き出す、ストレートなテクノポップです。
picdoさんの楽曲は大きく「足立レイのキャラクターソング」と「picdoさん自身の内面に言及する曲」に分けられると考えていますが、picdoさんが足立レイそのものを表現する時、それは必ず"光"として描かれているように思います(最近の曲ほどその傾向が強い)。本作のイラスト・歌詞においては、足立レイがあらゆる創作の中で主人公"として躍動する様が表現されており、いかに足立レイがpicdoさん自身の世界を広げてきたか、そんな力強いメッセージをそこに託しています。
更に、歌詞には主要な足立レイ楽曲を想起させるワードも複数登場しており、自由に開かれてきた足立レイの創作の輪、そしてそこに生きる人への熱い想いも浮かんでくるようです。先月、遂に自立した事でも話題となった足立レイ。足立レイが今後更に広い世界を見られる事を願わずにはいられない、愛溢れる作品となっております。
13. レシートラスト/いえぬ
13曲目は、カラフルな音色のチップチューンに乗せて、初音ミクを中心としたボーカロイドの"感情"を独自の視点で描くいえぬさん。プロセカNEXT採用曲「オーバーコード」を筆頭に、いえぬさんの演出するボーカロイドの魅力に多くのリスナーが惹かれています。
そんないえぬさんの新曲は、初の重音テトソロ楽曲として、レシート切れ間際である事を表す"レシートの赤線"と、変われない自分自身の次第に追い込まれていく心模様を重ねた、まさに唯一無二の視点が鋭く発揮された作品となっています。テトの縦ロールを装飾するリボンとレシートを組み合わせるという、デザイン性への着眼点にも驚きがあります。
人生というものは、何もしなければ一番簡単に浪費していくものだと思います。それは自身が「変わりたい」と強く願ったとしても行動を変えるのには相当なパワーが必要な事で、たとえ諦念やあらゆる負の感情を振り切って懸命に歩んでいったとしても、最後に残された結果はまさに「“昔は酷く嫌っていた あの意気地なしはさ 今のお前の様な奴だな“」と言葉を突き付けられるような、後悔の念だけが残るものかもしれない…そんな逃げ場のないしがらみが、この1曲に凝縮されているように感じます。後半にかけて叫びのようにも聞こえてくるテトの歌唱も、日々を積み重ねるほどに増幅する苦しみと完全に共鳴しているようです。
それでも、最後には切れる間際のレシートを取り換え、次の自分が光を掴むために歩みだす、大きな覚悟が描かれています。変わらないように見える日々の中にも、大切な人との関わりや喜びは確かに宿っており、今まで積み重ねてきたものを一度リセットしてやり直す事は、その積み重ねが報われなかった事へよりも更に大きな苦しみに満ちているかもしれない。それでも、遥か遠くの理想を掴むため、自身が変わるための一歩を踏み出す…そんな一筋の希望を残して、本作は光に包まれるように〆を迎えます。いえぬさんの深い思考をキャッチーに描き出す、そんな魅力と熱量に溢れた作品となっております。
14. また私に夢中になってくれるでしょう。/アメリカ民謡研究会
14曲目は、10年代半ばから"ポエトリーリーディング"を取り入れた楽曲を投稿し続け、近年のポエトリーリーディングの流行に多大なる影響を及ぼしているボカロPの1人、アメリカ民謡研究会さん。自身の作品も2023年初頭から一気に注目度を高め、アプローチする層を拡大し続けています。
そんなアメリカ民謡研究会さんの新作は、2人の世界を象る、強烈な依存関係を描いた楽曲です。
この"依存"というテーマは、近年のアメリカ民謡研究会さんの作品においては特に主題として描かれている事が多い印象で、代表的な作品としては「戻れ戻れもどれもどれも。」や「永遠に違うよ。」などが挙げられます。本作もまた、終始一人称で描かれる"あなた"へ向けた言葉、心象の描写に完結しているのですが、上述の作品が明確な"孤独"へと終着しているのに対し、本作は一つ一つ世界から二人を構成する要素を排していった果てに、確かに2人だけが抱き合う刹那の様子が描写されています。それは2人が現世から隔絶されゆく"堕天"の様でありながら、儚くも美しく、時の流れを緩やかに感じさせるように映ります。
しかしながら、やはりそこに描かれる言葉は一方通行であり、最後まで相手の感情が見える事はありません。「私が絵本を閉じてあげる。」この一節を信じるならば、本作において終始呼びかける"あなた"とは、即ち架空の存在なのではないでしょうか。詰まるところ、自分自身は1人の世界へと閉じ篭り、理想とする"命"だけを抱いて眠りに着いた...本作にはそんなメリーバッドエンド的な解釈の余地も残されているように感じられます。
そんな考えれば考えるほど"孤独"の匂いが強まるように思われる本作ですが、紡がれる言葉に宿る"温もり"は本物です。安らかな後味を残す本作は、今回のVOCAParty!という場において、アメリカ民謡研究会さんの世界観のより深くへと扉を開く、繊細な美しさに満ちた作品となっております。
15. Polaris/Project Lumina
15曲目は、ボカコレ2022秋投稿の「一輪の花」のヒット以降多くのリスナーの支持を集め、ボカコレ2024冬投稿の「VOCALOID COMMUNICATION!!!」ではルーキー3位の大活躍を見せたProject Luminaさんです。キャリアの中でボーカロイドへの愛を培いながら、楽曲を通して真っ直ぐな想いを伝え続けるボカロPです。
そんなProject Luminaさんの新曲は、星界ボーカルを存分に活かした、一切の曇りなく伸びやかな響き織り成すバラードです。
率直に、サビの「あなたの言葉は北極星」という一節が、本作の主題だと思います。降り積もる暗闇が続くような、そんな人生を照らす唯一の光を体現するのに最も相応しい一節が、まず真っ先に胸に飛び込んできます。本作にはこのフレーズが二度登場しますが、それぞれ聴かせ方に確かな幅を持たせているのが印象的です。1サビでは静かな伴奏の中繊細に歌い上げ、一滴の灯火のような切実さを滲ませるような歌唱である一方、ラスサビでは直前の落ちサビで歌声と波音のみになった所から一気に盛り上げ、その言葉に爆発的な信念を託すような歌唱を演出しています。
そんな北極星が、「あなたには敵わないよ」と不意に弱さを見せる部分では、今までに感じた事の無い心の陰りも表れているように感じます。自分にとって悠久の光が突如ちらついて見えた時、思わず"愛"を伝えるための言葉が次々溢れ出していく。そして2回目の「あなたの言葉は北極星」に繋がる...この描写は、"あなた"から受けた愛を返す、つまり今度は自分自身があなたを照らす"北極星"となるという、そんな過程を描き出した、力強い印象を宿した一節だと思います。突き詰めた真っ直ぐさ、つまりProject Luminaさんにしか描けない表現が大いに詰まった作品となっております。
16. サイエンス/MIMI
16曲目は、活動初期からピアノでの表現に拘ったポップソング・バラードを生み出し続け、「ハナタバ」や「くうになる」など数々の大ヒットを記録しているMIMIさん。年に12曲以上と、近年にかけてハイペースになっていく投稿頻度も特徴的です。
そんなMIMIさんの新曲は、比較的最近導入した重音テトSVをボーカルに起用した上で、MV中にもテトのキャラクター+アニメーションを採用した、軽やかなピアノの際立つポップソングです。
MIMIさんの楽曲コンセプトは、大小様々な心の隙間を埋めていく、寄り添うような歌詞を一貫して紡いでいます。そして、そのような楽曲はボーカロイドのキャラクター"でない"一枚絵を使用した動画と融合される事が多く、これによりよりナチュラルにメッセージ性を伝え、ボカロに触れるかなり広い層へのアプローチを実現させているように感じます。
一方、本作は対照的に、テトのキャラクターを全面に押し出し、イラストレーターである3774.さんのアニメーション+ダンスモーションが躍動するMVとなっております。他、「はぐ」や「ツキミチシルベ」など、初音ミクや可不といったボカロキャラクターが登場するMVは存在しますが、本作は特に、『考えるほどに絡み付く不安を解くための"サイエンス"、解を求める』というコンセプトを、重音テト自体のキャラクターに託したいという意図が見て取れます。
テトの使用される作品には、時に人間的な温もりを強烈に感じさせるキャラクターが付けられる事があります。また、ミーム的な生まれ方・広まり方をしているテトが己の存在証明を自問するという点も、本作に綴られる言葉一つ一つに熱を感じさせる一要素だと思います。MIMIさんらしさ、そして本作ならではのアプローチが光る作品となっております。
17. シャワールーム・ファンタジー/shikisai
17曲目は、2024年前半に実施されたプロセカ公式企画『プロセカアカデミー』にて生徒に抜擢、そして見事「花溺れ」がプロセカ収録を果たした他、「フューチャーノーツ」がマジミラ楽曲コンテストで準グランプリを獲得するなど、今年大躍進を遂げたshikisaiさん。高度な編曲技術を携えて幅広いジャンルに展開しながら、投稿もおよそ月1と非常にハイペースな、今最も熱量のあるボカロPの1人です。
そんなshikisaiさんの新曲は、研ぎ澄まされたグルーヴと自在なメロディーの光る、ハウスとラウンジ系の良いとこ取りのナンバーです。
本作は今年リリースのコンピアルバム『JUICE BOX』収録曲のアレンジ版であり、"洋楽"をコンセプトに制作されています。正直、苔氏は今の洋楽のトレンドなどをミリも知りませんが、日本語詞である事もあり、J-POP的なアレンジに落とし込んでいる部分も大きいかと思います。
「贅沢と君とカプチーノ」を始め、直近のshikisaiさんは比較的落ち着きのある歌モノが注目されていますが、どんなジャンルにおいても一言"優勝"と言いたくなるような、爆発力のあるメロディーと節々まで隙の無いアレンジがその魅力を支えていると思います。本作では浴槽に溶かしたくなるような、やり場のない気持ち絡む1人の夜を描いていますが、このような優美な音楽に彩られれば、そこにはまさに夢心地の空間が広がります。
また、本作の構成にも注目で、本作を1サビ、2サビ、3サビを区切りとして大きく1、2、3番に分けていくと、曲構成は以下の通りになります。
以上から分かる通り、曲が進むにつれて敢えてメロの数を段階的に減らしており、これがむしろ、3分という尺の中で大きな展開を生み出すのにかなり寄与しているように感じます。特に3サビ前、Aメロの最後「溶けて泡になれたらね」で泡の音も使いながら落とし、一気に最後のサビへ持っていく展開は、我々をカタルシスへ引き込むような、大きな感情の緩急を演出しています。今のトレンドも完全に捉え、今後ますますの活躍を確信させてくれるような、どこまでも味わい深い作品となっております。
18. Gore Diner/wotaku
18曲目は、EDM、ジャズ、エレクトロスウィング、hardcore...等々ありとあらゆるジャンルをコンセプト毎に使い分けながら、様々な角度で"闇"を纏った世界観を描いた作品で大人気のwotakuさん。今年は、あらゆるボカロP・リスナーによって、wotakuさんの大ヒット曲である「シャンティ」のRemixを集結させたアルバムがフリーでリリースされるなど、今までに無い角度のムーヴメントも発生していました。
そんなwotakuさんの作品は、タイトル・サムネから既に狂気的な空気感迸る、「Gore Diner(訳:流血の料理店)」という楽曲です。タイトルの時点でトップクラスに恐ろしい。
そんな本作ですが、想像以上に正統派のエレクトロスウィングとなっております。本作は"エレクトロスウィング系アイドルユニット"という非常に尖ったコンセプトで活動するHellzapoppin'への書き下ろし曲という事で、落ち着きすら感じる硬派なサウンドを打ち出しています。映像も含め最早猟奇的とすら感じさせる赤黒く煮詰まった演出も数々登場しますが、本作にはそんな溢れ出す狂気もキャッチーに彩るような魅力が詰まっています。
本作における間奏部のガバキックなどは特にwotaku節が牙を剥くポイントで、その破壊力はもちろん凄まじいのですが、全体を通して最も印象的なのは、低音域の迫力が過去作と比較しても群を抜いている点ではないかと思います。ブラスやキックを始め、全体的に音の密度が異常に高く、イヤホンで聴いていても肺の奥まで届いてくるような圧巻の響きがあります。スピーカーなら普通に流しても破壊してきそうな迫力で、wotakuさん従来の魅力を存分に発揮しながら、更なる進化を感じさせる作品となっております。
19. 溶けちゃいそう/なみぐる
19曲目は、『ずんだ○○』シリーズの大ヒットの勢いに乗り、ボカロ内外問わずインターネット全体で幅広い活躍を見せるなみぐるさん。ブラスを軸としたサウンドで非常に多彩なジャンルへと展開し、ネタからシリアスまでコンセプトに応じて自在に対応できる圧倒的な実力を備えています。
そんななみぐるさんの新曲は、合成音声ソフト『Voisona』の一角であるAisuuのリリース2周年記念作品として投稿された楽曲です。
なみぐるさんは合成音声たちに独自のキャラクターを付け加え、その魅力を存分に引き出す楽曲コンセプトに定評がありますが、本作はまさにその"Aisuu(アイス)"という名前と、同じくVoisonaのキャラである知声を推しているという公式設定(!)を活かして、"溶けちゃいそう"なくらいのアツい愛情を凝縮したキャッチーな2stepです。
とにかくAisuuの等身大の少女のような歌声と設定がピッタリとハマっている!"君"の事を想って揺れ動く感情を、様々な妄想を描いた歌詞と、同じくボカロPであるミ端さん手掛ける多彩な表情のAisuuが登場するMVで見事に表現しており、こちらもAisuuへの愛おしさを膨らませずにはいられません。
また、毎度の事ながらサウンド面が非常に緻密であり、全体をポップに彩るカッティングギターや、サックスを軸としたブラスアレンジは全体に絡み付くように自在に組み込まれています。また落ちサビのパートでは以上の楽器が生音的な響きを演出しており、緻密ながらスッと胸に入ってくるような、自然な温もりも感じさせてくれます。コンセプトも含め、なみぐるさんの"聴かせる力"が凝縮された作品となっております。
20. TECHやってく?/Shu × Hylen (映像:はゆ茶)
20曲目は、Shu × Hylen × はゆ茶という、異色のコラボ作品。3人ともそれぞれ楽曲及びイラスト提供で人気音ゲーに進出しているという共通点はありますが、特にボカロP出身のShuさんと音ゲー・クラブ出身のHylenさんという、言うなれば畑の違うコンポーザー2人がどんなコラボレーションを見せるのか、投稿前から一際注目を浴びていました。
そんな異色のコラボによる新曲は、コンセプト自体はガッツリShuさんの色に染め上がっており、他方で要所要所にHylenさんのハードなアレンジが加わる事で、全体のパワーが一層強化されたTECHに仕上がっております。
Dropだけを切り取っても直滑降ベース(Shuさん命名)・ガバキック・カットアップとあらゆるアプローチが詰め込まれており、TECHの名手2人が集う事により、お互いが音楽で好き放題遊び倒している様子がダイレクトに伝わってきます。
その遊び心は映像面にも溢れており、はゆ茶さんの手によって主にShuさん自身をモチーフにした数々の小ネタが散りばめられています。その中でも、たこルカが福岡やニコニコに纏わる様々な建物を金色に染め上げていくパートは、今年の初め『シルバーコレクター』を自称したShuさんが、たこルカ曲で既存楽曲復活祭2024で1位を獲得した事を思わせる胸アツなパートで、ある種自分をネタにしまくる事をフリにした、粋な演出だと言えます。全ての要素引っ括めて、今最も"情報量の音楽"を具現化した作品の一つだと思います。
21. 凹凸/OLDUCT
21曲目は、ボカコレ2022秋で初投稿の「ラグトレイン (OLDUCT Remix)」で注目されると、翌年からはオリジナル曲でも高い人気を集め、今年待望の1stアルバム『A01』をリリースするなど、今特にリスナー注目度の高いOLDUCTさん。全作品でイラストレーターもあいさんとのタッグを組み、エレクトロ系の幅広いサウンドと強烈なキャッチーさ携えるアニメーションとの融合で、唯一無二の世界観を表現しております。
そんなOLDUCTさんの新曲も、もあいさんとタッグを組み、OLDUCTさんお馴染みの歌愛ユキ×初音ミクをボーカルに起用した、緊張と心地良さの共存するリキッドファンクとなっております。
本作におけるユキとミクは、深夜の工業地帯の監視員のような立ち位置の装いとなっており、2人が可愛らしく躍動するMVと、それと対比するような冷たくも忙しなく稼働する工業地帯の模様が印象的です。ツインテールをライトとして使うミクなど、映像面でまだまだ触れたい所はありますが...個人的に最も印象的なのは、途中ユキとミクが動き続ける中で、線画だけが止まったまま残る演出です。この表現が見ている側に錯視のような効果を生み出し、より暗闇にいる2人の現実感を引き出しており、見れば見るほど深く吸い込まれるような心地になります。
勿論サウンドの解像感も極めて高く、基本的に冷静で無機的なビートの上で、細やかなベースやブラス、キックが忙しなくも絶妙な温度感で躍動しており、絶え間なく稼働し続ける夜の現場の空気感を完全に掌握しているように感じます。特にアウトロにかけて前に出てくるベースは、哀愁すら感じさせる趣があります。夜の空気を掌握する、確かな技術とセンスの光る作品となっております。
22. サミティファイ/吉田夜世
22曲目は、2023年11月投稿の「オーバーライド」が今年に入って爆発的な大ヒットを記録し、今年1年はその勢いを保ったまま数々の音楽チャート上位に名を連ねた、まさに今年の顔と言える吉田夜世さん。今回およそ11ヶ月振りの動画投稿で、どのような方向性で展開するのか、非常に注目を集めました。
そんな吉田夜世さんの新曲は、初音ミクをボーカルに据えた完全新作で、豪快なサウンドを携えて、虎視眈々と"頂点"を狙う闘志を描いたアッパーなテクノチューンです。
「I know 愛脳.」などを始め、攻めた展開から入ってサビで一気に明るくなるという構成は実に吉田夜世さんらしく、本作ではその要素を盛り込みながら正統進化を遂げているような印象があります。全体的なサウンドはより重さを増しつつ、サビへの大胆な転調で、初音ミクの明るく変化する声質も含めて、一気にその"輝き"で心を掴んでいくような高揚感があります。
そんな尖りもありつつ、高速歌唱やサビのストレートなメロディーなど、"王道"も兼ね備える点が吉田夜世さんの強みだと思います。ボカロファンなら誰もが一度は思い描いた"初音ミク"そのものの輝きを、音楽の熱量で更に押し上げていく...そこには決して途切れる事の無い創作の循環、未来への軌跡が浮かぶようです。吉田夜世さんのボカロ愛、そして来年以降の活躍を確信させるような作品となっております。
23. ラブチャー/駄菓子O型(現21%P)
23曲目は、ボカコレ2022秋に初投稿の「あの星に語りかけている」よりリスナー間で密かな注目を集め、ボカコレ2024冬では怪作「あちこちデートさん」が遂にルーキー1位を獲得するなど、今年のボカロシーンを名実ともに圧倒した駄菓子O型さん(VOCAParty!内の生放送企画で、まさかの名前を変えられてしまいました泣)。群を抜いた音楽的素養の高さで、クラシックからブレイクコアに至るまで、異常に幅広い音楽ジャンルを、高度な次元で総なめにしています。
そんな21%Pさんの新曲は、初音ミクをボーカルに据えたハイパーポップであり、『1枚絵動画投稿祭』への参加楽曲「非虜徒」を彷彿とさせる作風ながら、今回自身で手掛ける3Dアニメーションと合わせて、弾ける脳内を体現したような、どこか電波的な雰囲気の作品となっております。
工場のラインの如く無限に生まれ出す初音ミクが「それ、ラブ、ちゃいます?」と幾度となく問いかけてくる様、それだけで脳内は混乱していきますが、爆発的なDropと増殖する初音ミク、更に緻密に詰め込まれた文字情報とキックで畳み掛ける事で、初音ミクの"愛"とか"生"に対する、我々人間への無垢な問いかけがより鋭く突き刺さるような気がします。
人間の複雑な感情を鋭く突き刺す、シンプルながら圧倒的な密度・速度感・技術を感じさせる、21%Pの底知れぬ実力を感じる作品となっております。
24. そにあずれこーど/とりぴよ
いよいよ本イベント最後の曲になります!!
トリを飾る24曲目は、ボカコレ2024冬投稿の「0001」が大きな話題を呼び、ニコニコ超会議2024のテーマソングに選ばれるなど、ニコニコを中心に今年のボカロシーンで輝かしい活躍を見せたとりぴよさん。以前よりヒメミコなどのイメージソングで人気を博しておりましたが、「0001」は足立レイと初音ミクを主軸とし、まさにボーカロイドの"未来"を感じさせるような大作に仕上がっておりました。
そんなとりぴよさんの新曲は、約4年半振りの初音ミク単体ボーカルの楽曲で、とりぴよさんの得意とするチップチューンを軸としつつも、ピアノ&ストリングスを存分に活かした壮大な構成で宇宙のスケールを描く作品となっております。
"滅びゆく星"の光景から始まる本作は、そこに生きた証を残すために宇宙へ飛び立つミクの、果てしない道程が描かれております。そしてその胸に抱かれるのは、その星の生命や文化の存在を伝えるとされる「ゴールデンディスク」。本作はこうして紡ぐ"唄"に未来永劫の力があると信じて、小さな息吹のような歌声を響かせています。
そして何より、最後海辺に置かれたラジオとそれを見つめる足立レイの映像は、まさに「0001」冒頭の模様でしょう。これにより、本作がまさに文明の果てゆく地でアンドロイドが聴いた"ハジメテノオト"であり、更なる未来への再生の唄であったという事が明らかになったのです。時を超えて物語を紡ぐ、とりぴよさんの合成音声たちへの"祈り"を体現したような力作となっております。
以上!!!!
ここまで読んでいただきありがとうございました。苔氏は力尽きましたので、最後に苔氏の運用している「Threads」の宣伝をして終わりにしたいと思います。また、じきに「Bluesky」のアカウントの方も用意しておきたいと思いますので、来年はそちらの方でもよろしくお願いします🙏🙏🙏
〜苔氏プレゼンツ 名スレッド達の軌跡〜
ありがとうございました!!