地獄の門をくぐったら天国と地獄が混在していた件 序章
地獄の担々麺
かつて、藤沢駅に地獄があった頃、何回か門をくぐっていた。
ただ、チキン野郎な私はプロフェッショナル編以外食べたことがなかった。
時は2023年12月15日
藤沢に地獄がなくなったので
地獄の担々麺 茅ヶ崎ベース界
と言う所に行くことにした。
ここはかつては普通の地獄の担々麺だったが、店を新しくし、少し本店系とは違った担々麺を出すようだ。
まず、麺が違う。本店系は中太麺だが、界は細麺らしい。
また、本店系の辛さのランクの
ヘリテイジ、無限という何辛かわからない表記ではなく「100辛」「200辛」としっかり辛さの表記がされている。とても親切じゃないか。
自称激辛好きの私。迷わず200辛を選択。
チケットを店員さんに渡すと即座に「あの……物凄く辛いですけど大丈夫ですか?」と聞かれた。
大概のものは「物凄く辛い」と言われても美味しくいただいていた私は一言。
「辛いの大好きなので大丈夫です!」と答えた。
あーどんな辛さかな、プロフェッショナルは普通に甘みを感じたんだよね!てか、普通の担々麺だったんだよね。だって30辛だもんな……
「おまたせしました!」
出てきたものがこちらです。
なんか、全く別物出てきたぞ?こんなに赤い粉かかってなかった気がする。あーちょっと花椒苦手なんだよな……まぁ「この赤さならイケる」と思った。
………思ったんだよ。
猫舌の私は少しずつしかラーメンを食べることができない。本当に麺3本くらいずつ、しかも熱いからすすることもできないわけだ。
一口食べた瞬間、あ、うん、辛いのわ。これは辛い。洋物唐辛子の独特な香りと花椒の香り。
でも、食べれない辛さじゃない、いけるな、美味しいかも。
それを5回くらい口に運んだだろうか……異変が起きた。
胃が……痛い
痛いなんてもんじゃない、もう胃が暴れてる。
え?食べてすぐにこんなになる?え?
なんて考えていると、手にも異変が生じる。
痺れて感覚がなくなってきている。微妙にプルプルと痙攣もし始めている。
やばい!!なにこれ、口の中は平気なのに身体が拒絶し始めてる!これ以上食べたら死ぬ?ここで?担々麺食べて死ぬの?
「すみません!やっぱりもう食べれません!」
何とか笑顔を作りつつ、店の人にも笑顔で「まだ完食者いませんからー」と言われ心の中で「先に言えよ!」と悪態をつきながら、足早に(今思えばフラフラしてたと思う)店を出た。
外は小雨……どころじゃないくらい雨が降っていた。来店したときは降っていなかった。もちろん私は傘など持っていない。
いや、持っていたとしても……させる状態ではなかった。
急激な胃痙攣、手足の痺れ、感覚麻痺、大量の冷汗、胃の痛みに伴った激しい吐き気。
待って……これショック症状じゃん。
私はとりあえず何とか歩きながら、メイン通りの脇の細い小道に雨の中座り込んでしまった。
ババアが、雨の中座り込んでいる。
この光景を傍から見たら「やべぇやつ」としか思えない。しかももはや胃の痛みでうずくまっている。
でも……動けない。救急車?
本気でそう思った。しかし、まだ思考は少しだけ正常に働いていて「激辛担々麺を食べて救急車を呼んだ」なんてとてもじゃないけど恥ずかしい。嫌だ、何が嫌って激辛大好きなんて言ってるのに、救急車呼ぶなんて……嫌だ!!
しばらくすると不思議と胃の痛みが消えた。少し重いだけで、同時に吐き気も消えた。
あれ?なんだ、よかった。治ったわ。まだ手足はおかしいけど大丈夫。
ふぅ、あぶねーさぁ帰るか。
立ち上がって数歩歩いたとき、また激痛が襲ってきた。おい、騙し討か?動いたらだめなのか?
そしてまた急激に襲ってきた吐き気に「耐えろ自分!!」と多分早足になってない「自称早足」で駅に向かった。
本来駅から店まで5分もかからない。
でも、店から駅は遠かった。とても遠かった。
空いていてくれ!オストメイト!!(ごめんなさい)
茅ヶ崎駅のトイレは駅中。PASMO出すその時間すら危険な状態だった。
急いでオストメイトの自動ドアを叩く「開」!!
……そこから、どれくらいの時間が経ったのだろう。
少しなのか、長いのか。どっちにしても本当にこのトイレが必要な方々。激辛担々麺を食べただけの私が占拠してしまってごめんなさい。ごめんなさい……まだ……出れません。
吐き気は何とか治まったものの、胃の痛さは変わらない。トイレ地べたに躊躇なく座る私。どうしよう……帰れない。
なんて思っていると、またあの「寛解期」が来た。動ける!イケる!
胃の痛みが嘘みたいに引いた私は、何食わぬ顔(顔面は蒼白だったと思われる)でオストメイトを出て、そのまま電車に乗った。電車の中で胃が痛くなることはなかった。
が……電車を降りて乗り換える際、またあの激痛と吐き気。これ、電車乗っちゃだめなやつだ!!
駅から少し離れた完全個室のある漫喫を目指し、またもや変な歩き方で足早じゃない心だけ足早で向かった。何度も襲ってくる吐き気と戦い、胃の激痛と戦いながら。
幸い、ここの漫喫は受付が対面接客ではなくすべて機械で自分でやるため、他人と一言も話さずに済んだ。口を開いたら言葉の前に何かが出そうだったから。
完全個室が空いていたのも、日頃の行いが良かったからだろう。
すぐに横になっていたさと吐き気と格闘。そして……寝てた。
おそらくは意識消失だったのかもしれないが、気がついたときには胃の痛みは感じなかった。
いや、騙されないぞ。また動いたら痛くなるんだ!少し様子を見よう。
そのまま5時間ぐらい寝てればまだ違ったのだろうが、半端に起きた私。その後何回も何回も激痛と寛解を繰り返したまさに「地獄」。
なんとか漫喫から出れたのは3時間後だった。
満喫から出たとき、まだ胃の重みを感じながら、また襲ってくるかもしれないと恐怖を感じながら何とか電車に乗り、無事帰宅。
横になりながら、少しまだ胃の痛みが残った頭で考えた。
「次は100辛にしておこう」
一生懲りないと思う。多分いつか本当に、激辛食べて本当の地獄に行くと思う。
そんな一日だった。