異世界の剣士~とあるオリジナル小説をもとに並行して行われた話~
第一話:選ばれし者
高橋美穂、28歳の会社員。昨夜は残業で遅くまで働き、帰宅したことが最後の記憶だった。目覚めた瞬間、彼女は自分のベッドルームにいないことを悟った。そこは、巨大な樹木が天を突く、見慣れない森の中だった。空気は清らかで、聞いたことのない鳥のさえずりが耳に響く。美穂は慌てて立ち上がり、自分の服装を確認した。会社の制服ではなく、革製のチュニックとレギンス、そして腰に吊るされた長剣。彼女は混乱しながらも、自分の状況を理解しようと周囲を見回した。
剣を手に取った瞬間、剣は青白い光を放ち、美穂の目の前に一冊の本が現れた。その本は古びた装丁で、タイトルには「異世界の剣士」と書かれていた。彼女は震える手でページをめくり、そこに自分の名前が書かれているのを見つけた。
「高橋美穂、汝はこの異世界に召喚されし剣士なり。今、魔物が跋扈し、人々の生活を脅かす。この剣と共に、平和を取り戻さん。」
美穂は信じられない気持ちで本を閉じた。そんな話はファンタジーの中にしか存在しないはずだった。しかし、目の前にある現実がそれを否定していた。
美穂は最初、剣を扱うことさえままならなかった。だが、彼女の中に湧き上がる決意が、剣を自然に動かす力を与えた。彼女はその場で基本的な剣技を試し、何度も何度も振り下ろした。時間が経つにつれ、彼女の動きは洗練され、力強さを帯びていった。
訓練から数日後、美穂は初めての魔物と遭遇した。それは、巨大な蜘蛛のような怪物で、毒液を吐きながら襲い掛かってきた。美穂は恐怖に駆られながらも、剣を握りしめ、戦うことを決意した。彼女の攻撃は最初はぎこちなく、何度も危険な目に遭ったが、最終的に蜘蛛の弱点を見つけ、致命の一撃を与えた。
「やった…」と、彼女は倒れた怪物を見つめ、生き延びた喜びに涙を流した。だが、戦いの後には、彼女の体に浅い傷がいくつもできていた。
美穂は、その場で傷の手当をしながら、自分の存在意義について深く考えた。この世界で何をすべきか、何ができるのか。彼女は自分の使命を理解し、剣士としてこの世界を救うという決意を新たにした。
「これから、どれだけの魔物と戦うことになるんだろう…」と呟きながら、彼女は次の目的地、近くにあるという村に向かうことを決めた。そこで、彼女は初めてこの世界の人々と出会い、自分の役割についてより深く知ることになるだろう。
美穂は、剣を手に立ち上がり、足元の森道を歩き始めた。彼女の新しい冒険が、ここから始まる。彼女がどんな困難に立ち向かい、どのような友情や恋愛を築くのか、それは次回の物語で明らかになる。