小笠原の電波望遠鏡を見に行った話
そうだ、小笠原に行こう。今回は泊まりで。
初めて小笠原に行ったのは2022年5月のこと。
「今行かないと一生行かないのでは?」
と思い勢いで着発ツアーに申し込み、初めて長距離の船というものに乗って、片道24時間・現地滞在4時間半の行程で行ったのが初回でした。
おがさわら丸の中を1日で一万歩歩くほど堪能し、父島では武器みたいなサイズの葉っぱが落ちてるのに大喜びしたり、アフリカマイマイの殻にビビリ散らかしたり、アカバの歯磨きをしたりと人生初小笠原を楽しみました。
お手軽に小笠原を楽しむなら着発ツアーオススメですよ。ナショナルランドさんでたまにやってます。
とはいえ当日は小雨だったこともあり、4時間ちょっとの滞在では行けなかった場所もたくさんありました。その一つがVERAの小笠原局。電波望遠鏡の一種で、ほぼ同じデザインの大型パラボラアンテナが水沢(岩手)、入来(鹿児島)、石垣島(沖縄)、小笠原(東京)の4ヶ所にあります。4ヶ所の電波望遠鏡みんなで力を合わせて直径2300kmの電波望遠鏡に相当するパワーを発揮しよう!という設計の、なかなかスケールのでっかい望遠鏡です。パワーをより発揮するためにはアンテナ同士の距離はなるべく離れていたほうが良いので、中にはすごい立地に置かれるアンテナもいます。そのベストオブ辺境の一皿が小笠原です。そんなわけで2023年1月に再び小笠原に行きました。
※この記事は書きかけを年単位ですっかり忘れてたのを加筆公開しました。
おがさわら丸に乗って
竹芝で結ちゃん(おがさわら丸と同じく竹芝から発着する東海汽船のジェットフォイルのキャラクター)のぬいぐるみを買ってそのまま乗船。初手で思いっきり南へと連れ去られることが確定する結。平和な日常が一変です。
冬は海が荒れることも多いようですが、特にそんなこともなく平穏に南へと進むおがさわら丸。前年にドルニエ君で新島に行った時はあっという間に飛んで行った距離も今回はどっしりゆったり進みます。
おがさわら丸は気が効くので航路上の見所ポイントに差し掛かると船内放送でなんかいい感じの音楽と共に解説をしてくれます。羽田空港、アクアライン、伊豆大島…そういえばこの時の音楽は3曲あって、本土、伊豆諸島、小笠原諸島で変えているようですよ、多分。
すきな乗り物を選ぶんじゃ
竹芝を出発して24時間、小笠原父島の二見港に到着!早速宿に荷物を置いて移動手段を確保します。
原動機付き自転車、電動アシスト自転車、普通の自転車。
バスやレンタカーもありますが、今回はとにかく時間に追われるのがイヤだったので普通の自転車を借りることにしました。
電動アシスト自転車は毎日返却する必要がありますが、普通の自転車は初日に借りて最終日の出航直前までの長期レンタルもOKです。アシストがない分は筋肉と気合いでなんとかしましょう。
えっ原付がオススメ?自分が運転したら島の医療を圧迫するからダメです。
見所いっぱい、高低差もいっぱい
市街地抜けて早速登り坂。ある程度までなら立ち漕ぎで進みますがずっとは無理なのでだいたい押して進みます。更にその途中で結構見所もあるのでなかなか進みません。
本土ではまず植物園の温室でもなければ見られない木々が普通に生えていたり…
枕状溶岩と解説があったり…
いかにも絶海!という雰囲気の光景が広がっていたり…
などなど。自転車を押して登る小休憩にちょうどいい、いやそれ以上の頻度で見どころが目白押しです。ちなみに途中ですれ違うのは原動機付き自転車、電動アシスト自転車、自動車、徒歩、などなど。普通の自転車はいませんでした。
辺境の皿、VERA
ほぼ登り坂を進むこと90分。木々の向こうに大型アンテナ特有の唸りが聞こえてきました。
あっこれ野辺山で聞いた系のやつ!周りの木は全然違うけど!!(暖かい小笠原はタコノキ、涼しい野辺山はシラカバが印象的でした)俄然テンションが上がります。
途中で一度入り口を間違えそうになりましたが無事に到着。
観測中なのか、幸運にも動いている姿を見ることができました。
ご覧くださいこの美しい宇宙からの電波を集めるパラボリックな曲線美!!
その宇宙電波の受け皿を支える架台の逞しさ!!
この優美な直径20mの皿!!
今ここで動いてる小笠原局と同期して水沢局、入来局、石垣島局も同じ宇宙電波を拾うために動いてるのかな。んで小笠原局のデータは物理的に運ぶんだよね、多分おがさわら丸で。運がいいとデータと一緒に乗船できたりするのかな?
唸るアンテナと空の先に思いを馳せながら、素晴らしい時間を過ごしました。監視カメラがあったらはしゃぎ回る怪しいやつが映っていたと思います。違うんです!不審なだけで悪いことはしてないんです!怪しいだけなんです!!
スピード下山
暖かいので忘れそうになりますが今は1月、日没が迫っています。名残惜しいけど真っ暗になる前に街に帰るんじゃ!!
ここで自転車の本領発揮です。往路で溜め込んだ位置エネルギーだけで下山できま…いや危ないほどスピード出るぞこれ!?油断すると島の医療リソースが危ない!!
暴れ散らかすエコパワーをブレーキで無駄にしながら下山開始。途中でアシスト自転車の方々となんとなく合流しながらどんどん市街地に向かいます。アシスト自転車の返却時間が近いので自然と集まる形になるのかもしれません。
往路は90分かかりましたが帰りは15分。所要時間1/6ですよ!すごい!
そんなわけで小笠原のVERAに会いに行った話はおしまいです。夜にはカノープスもよく見えたし、時間の関係で行けなかったけどJAXAの追跡所も遠目に見えたし、また行きたいなぁ小笠原。
道中で『どっから来たんだあのノーアシスト自転車…』みたいな視線を浴びた気がしますがきっと気のせいです。