
砂肝雑記
ふと思い立ったので、King Gizzard and the Lizard Wizardの現時点(11/09/24)でリリースされてるアルバムに関することを殴り書きしてみます。アルバムによって振れ幅のすごいバンドですから、アルバムによって文量に偏りが出ると思います。出ます。
Anglesea
彼らの記念すべき初の公式リリースです。おそらく彼らの出身地オーストラリアの地名が由来でしょう。内容としてはOh Sees(表記ゆれゆるして)直系のガレージサイケといったところでございますでしょうか。当社比です。実は公式ホームページから各種定期購読音楽配信ページに飛ぶことができます。
ただまあ、このEPに収録の楽曲はすべて後にリリースされた初期曲コンピレーション、Teenage Gizzardでも収録されていますから、よっぽどのこだわりがなければそちらを聴くのがよいでしょう。
Willoughby's Beach
二枚目のEPです。私はこれがガレージ三部作では一番好みです。音楽的には前作からの地続きですが、三曲目のLunch Meatをよーく聴いてみるとこの頃からメタルっぽいことはやってみたかったのかな~~~~?って思うんですよ。どうなんでしょうか・・・?そういえばこのEPもタイトルはオーストラリアの地名が由来だと思われます。愛国心素晴らしいですね!
私は二曲目のBlack Toothが一番好みです。ガレージ三部作の中でも一番すきです。
ウィンドウズ・ムービィメーカーで作ったみたいなおぞい映像が最高です。歌詞だって、「ちゃんと歯ァ磨けよ!」っておっとーおっかーに言われるって内容ですよ、本当に最高です。近年のライヴでもそこそこ演奏されてますし、人気曲なのでしょうか?
12 Bar Bruise
おめでとうございます!記念すべき1stアルバムです!ガレージ三部作最終章にして彼らの初となるフルアルバムです。これも前作前々作から続く路線の内容です、一曲を除いて。
テルミンや特徴的なディレイ・ギターなど、彼ららしさが全面に出てきています。部屋に四台の携帯電話を置いて録音した曲もあり、彼らのDIY精神を感じさせます。タイトルは12小節ブルースのことばあそびでしょう。bluesならぬbruise(あざ)。ひょうきんなタイトルでとてもすきです。実はこのアルバムと次作はカバーアートが二種類存在しており、コレクター魂を震えさせます。私はオリジナルカバーのレコードしか持っていないので、もう一枚ずつ買うはめになっています。(flightless recordsからの再発盤が別カバーになっています。)
Sea of Treesが一番すきです。この曲も近年でもよくセットリストに入っていますね。うれしいです。あああああ!!!!来日してください~~~~~
Eyes Like the Sky
2ndにしてものすごいアルバムですよ、ガレージ・サイケデリック・ウェスタン・スポークンワーズ・ロックです!!! …??
西部劇やRDR(西部開拓版GTA的なゲーム)から影響を受けたアルバムで、全編を通してBroderick Smithによる語りが展開しています。Broderick SmithはAmbrose Kenny Smithのおっとーです。前作の文中で「一曲を除いて」と書いたのは、実は前作にも一曲だけBroderickによるスポークンワードが収録されているためです。Sam Cherry's Last Shotです。とはいってもフルアルバムでその路線を展開するとはだれが想像できたのでしょうか・・・
曲自体はファジーなガレージサウンドとなっていて、西部劇的な味付けはされているものの前作までの地続きと言えるでしょう。
2023年、Broderickが亡くなられた際、追悼としてこのアルバムがライヴで一部再現されました。その時の映像がYouTubeで見れますが、メンバーが次々とAmbyにハグするシーンがなかなかジーンと来ます。
Float Along – Fill Your Lungs
3rdです。大好きです。「サイケデリックロック」として彼らを見た場合、最高傑作と言っていい内容だと感じます。ガレージの勢いはそのままに、アコースティックな音やインドの楽器を取り入れ、ぐっとサイケデリックになりました。一曲目のHead On/Pillから早速16分におよぶトリップ・ソングとなっております。ライヴでは更に長く演奏をすることが多く、「あと一曲!」と言ってHead On/Pillを30分間演奏していたのはフフっとなりました。二曲目I'm Not a Man Unless I Have a Womanでは、レコード盤のみイントロにラジオの音声が入っていてファン心をくすぐってきます。ラストを飾るFloat Along – Fill Your Lungsはまさに極上のサイケデリックとなっています。ライヴ映像で女性の誘惑を無視しながら演奏するStuがなんだか笑えてしまいます。
今ではもはや彼らの代名詞ともいえる奇数拍子はどうやらこの曲がはじめてなようです。様々な面で「らしさ」が一気に爆発した一枚と言えるでしょう。大好きです。 どうでもいいことですが、カバーアートをよく見るとJoeyがNEU!のTシャツを着てるんですよね。私はレコードを買うまで気が付きませんでした。
Oddments
4thです。個人的にはここまでが初期gizzだと思っています。本作は統一感といったものは一切なく、様々なスタイルの楽曲が収録されています。レコードで再生したときに節目となる曲(一曲目、六曲目、ラスト)ではファジーで短めなガレージ曲が収録されていて(Alluda Majakaは三分あるので短くないです😜)、かと思えばStressin'、Homeless Man in Adidas、Work This Timeといった今までとは毛色の異なった浮遊感のただよう曲が収録されていたりします。ライヴのWork This Timeでは、JoeyがDavid Gilmourに迫るいぶし銀の長尺ギターソロを披露しているのでそちらをオススメします。
Sleepwalker、It's Got Oldと私の大好きな曲が多数収録されていますが、キリがないのでこれくらいにしておきます。そういえばオーストラリア人の友人にベジマイトは好きかと聞いたら嫌いと言われました。hateとは言っていなかったと思います。
I'm in Your Mind Fuzz
5thです。キングギザード新時代の幕開けを感じさせるアルバムです。このアルバムを最高傑作に挙げるかたも多いと思います。ハイライトはなんといってもMind Fuzz組曲でしょう。4部構成の本組曲はクラウトロックのような一本調子のドラムにフニャフニャなファズギター、繰り返されるベースフレーズ、と兎にも角にもミニマルでハイテンションな曲となっています。前々作収録のHead On/Pillを研ぎ澄ますとこうなるのでしょうか?キングギザードの基本となる音楽性を定着させた歴史的な一曲です。CellophaneのMVは特殊な加工がされており、3Dグラスを通すと3DでMVを楽しめるようになっています。
Hot Waterの印象的なフルートのフレーズは後の大名曲Robot Stopで再利用され、ライヴではセットで演奏されています。しかしまあ、お湯!お湯!お湯!お湯!お湯!お湯!お湯!お湯!お湯!って、本当に最高な歌詞です。お湯以外のことを言ったと思ったらそれも日付変更線だの懐疑論者だの俺はひ弱だだの、脈略があるんだかないんだかよくわからないものになっています。大好きです。
Quarters!
6thです。四分の一!全曲10:10、アルバム合計40:40のすごいこだわりようです。(聴くとわかりますが、フェードや効果音で調節されているので難しいことではないです)洒落たリズムに乗せた揺蕩うかのような楽曲、The Riverはちょっと不思議な曲で、全体を通して5拍子で演奏されています。最後の楽章だけ4拍子になるのですが、かえって不思議な拍子と感じてしまいます。私だけでしょうか?この曲は彼らの代表曲の一つで、後にリリースされるメタルアルバムがメタルか何かの章を受章したときにもこの曲が使用されていました。なんで?それは違うと思う。
…二曲目のInfinite Riseではいわゆる無限音階が使用されていて不思議な感覚になる楽曲です。マリオ64の階段のアレです。全体的にゆったりとしたソフトでサイケな内容で、リラックスしたいときにピッタリな一枚です。そういえばカバーアートも四分割ですね。
Paper Mâché Dream Balloon
7thです。全編アコースティック楽器のみで収録された、フォーキーなアルバムとなっております。実は、エレキベースも使用されているのでさっきの一文はウソです。とはいえ収録楽曲は60sを感じるソフトで楽しげなものが揃っていて、さながらコンセプト性の無いコンセプトアルバムとなっています。アシッド・フォークっていうやつです。五曲目Trapdoorは本アルバムでは特異な楽曲で、アップテンポでマイナー調のガレージっぽい楽曲です。アコースティック・ガレージ・・・?この曲も後にフレーズが再利用されます。
ラストのPaper Mâchéでは、本アルバムの収録曲からワンフレーズずつひっぱってきたメドレー曲になっていて、良い余韻になっています。 そういえばこのアルバムをレコードで買ったらインストバージョンも付いてきました。気になる方は是非。
Nonagon Infinity
8thです。大名盤です。アルバムのタイトル通り終わらないアルバムです。はじめて再生すると一気にガー!!っと始まりびっくりしますが、それもそのはず最後の曲からシームレスに繋がっていて、リピート再生にすれば二度と終わることのない恐怖のアルバムになってしまうのです・・・・(ほんとはMr. BeatとEvil Death Rollの間で一瞬途切れます)こういった点から、レコードよりもCDや定期購読音楽配信サービスで聴いたほうが本領を発揮するアルバムと言えるでしょう。内容としては、Head On/Pill、Mind Fuzzを発展させた、クラウトロックのモトリックビートにホークウィンドやモーターヘッドを無理矢理ぶつけたようなハイテンションで攻撃的な曲が並びます。彼らの代名詞の一つ、微分音はRobot Stopのギターソロが初出ですね。Mr. Beatはこのアルバムではかなりやわらかい内容で、首を振るのに疲れたときの小休憩にもなります。Wah WahはThe Riverに似た5拍子のシャレたリズムに強烈なファズ&ワウのサウンドをのっけた他ではあまり聴くことのできない独特な楽曲です。ラスト曲(このアルバムの場合ラストって言っていいのかわからない)Road Trainでは一気にツーバスが流れ込み、モーターヘッドのようなハードでスピーディーなメタルと化します。曲の最後で一気にスピードアップし、そのまま一曲目のRobot Stopに繋がります。彼らの代名詞の一つ、微分音はRobot Stopのギターソロが初出ですね。Mr. Beatはこのアルバムではかなりやわらかい内容で、首を振るのに疲れたときの小休憩にもなります。Wah WahはThe Riverに似た5拍子のシャレたリズムに強烈なファズ&ワウのサウンドをのっけた他ではあまり聴くことのできない独特な楽曲です。ラスト曲(このアルバムの場合ラストって言っていいのかわからない)Road Trainでは一気にツーバスが流れ込み、モーターヘッドのようなハードでスピーディーなメタルと化します。曲の最後で一気にスピードアップし、そのまま一曲目のRobot Stopに繋がります。さすがにもうやめます。最初は九回繰り返してやろうかと思いました、ごめんなさい。
ちなみにRoad Trainとは路面電車のことではなく、オーストラリア内陸部を走る長大編成トラックのことです。それを知った上で聴くと「男一人、ハンドルを握る」という歌詞がめちゃくちゃかっこいい。
Flying Microtonal Banana: Explorations Into Microtonal Tuning, Vol. 1
9thです。こっから五枚は全部2017年にリリースされました。ものすごい活動量です・・・彼らの代名詞の一つである微分音が全面に出された初のアルバムです。微分音といってもいろいろあるのですが、Gizzはとりわけトルコ微分音スケールを使用します。実はトルコ微分音スケールは様々な曲で聴くことができ、意外なものではカービィのBGMやスプラトゥーンの楽曲でも聴くことができます。そもそも微分音って何?という方はウィキペディアを見てください。Rattlesnakeはクラウトロック的なミニマルリズムにトルコ風味を上乗せしたターキージャーマンです。(?) MVがYouTubeのあなたへのおすすめでよく出てくるから、この曲でGizzを知った人も多そう。
7曲目Doom Cityでは、後に多用されるC#スタンダードチューニングが使用されていて、非常にヘヴィな楽曲となっています。ラストのFlying Microtonal Bananaで風の音がブツ切りで終わっているのは、もちろんミスではなく伏線です。そういえば、このアルバムのバンドスコアが出てましたけど微分音のTAB譜ってどうなっているんでしょうか。ご存じの方いらっしゃいましたらおしえてください
Murder of the Universe
10thです。おめでとうございます。かな~りヘヴィになりましたね。なんとこのアルバムでは2nd以来のスポークンワードが復活しています。繋がりのない(ようでありそうな気もする)三つの組曲から構成されていて、個人的にはプログレアルバムだと思っています。スポークンワードとはいっても今回は歌も取り入れられています。
第一章The Tale of the Altered Beastでは時折ファズの発信音が鳴り響き、ドラムのフィルで一気に全楽器が入ってくるという展開があるのですがそれが本当にかっこよくてシビれます。
第二章The Lord of Lightning vs. Balrogは過去アルバムの要素がよく出てきます。歌詞にはNonagon Infinityのフレーズが登場し、People Vultures、Mind Fuzz、Trapdoorの一部フレーズが再利用されていて、ライヴではそれらがメドレー形式で演奏されることもあります。
第三章Han-Tyumi and the Murder of the UniverseはバンドのマスコットHan-Tyumiにまつわるナンセンスなようで現代社会を風刺する物語が繰り広げられます。Nonagon Infinityに出てきたあのロボット君です。元人間で現ロボットの彼は人間らしいことが出来ずに退屈しているようで、「死ぬこと」と「ゲロを吐くこと」を切望しています。Vomit Coffinですね。最終的に彼は大量のゲロを吐き宇宙はゲロで埋め尽くされて宇宙もろとも死んでしまいます。まさに彼はMurder of the Universeとなったのです。このタイトルは元はホークウィンドの名曲Masters Of The Universeのことばあそびだと思いますが、そこからこんなにも壮大な物語へと発展するのです。
私はこのアルバムでGizzを知ったので、とても思い入れの深いアルバムです。最初はレコードだとThe Lord of Lightning vs. Balrogの途中でA面からB面へ移行する狂気的な仕様(オブラートに包んだ表現)だったのですが近年の再発盤では二枚組になって解決しました。ありがとうございます。
Sketches of Brunswick East
11thです。サイケポップバンドMild High Clubとのコラボアルバムで、一気にソフトな感触のアルバムになりました。Sketches of Brunswick East I/II/III、The Spider and MeといったMild High Clubの要素が色濃いポップな楽曲はもちろんですが、一方ではD-Day、The Bookといったトルコ微分音のヘヴィな楽曲も収録されており、意外とバラエティ豊かなアルバムとなっています。
現時点でフルアルバムとしては、他バンドとのコラボレーションはこれが最初で最後となっています。
Polygondwanaland
12thです。プログレです。一通り全部のアルバムをある程度聴いたファンが最高傑作に挙げることが多いように感じます。内容としては、奇数拍、ポリメーター、ポリリズムを多用したとても複雑なものです。一曲目のCrumbling Castleは長尺曲で、人気曲の一つです。最初からドラムの拍とギターの拍が全く違うことにお気づきでしょうか。同じテンポで別の拍を演奏するものをポリメーターといいます。小節の頭は同じですがケツは最小公約数までズレ続けます。逆にポリリズムとは、小節の頭とケツを合わせて異なった拍を演奏するものを言います。(似て非なるものですが勘違いしてる人が多い印象です)これらの複雑な演奏を全編に渡って繰り広げるのが本アルバムとなっています。
溜めに溜めて最後の最後でハイテンションな四ツ打ちドラムで爆発する瞬間は本当に気持ちがいいです。プログレによくある気持ちよさな気がする
技術的なものではないところでいえば、(これまでのアルバムと比較すると)かなり大人びた印象です。一曲目の長尺曲以外でも曲間は繋がっていて、四部構成となっています。Polygondwanaland~Deserted Dunes Welcome Weary Feet、Inner Cell~Horology、Tetrachromacy~The Fourth Colourです。とはいってもライヴではCrumbling CastleとThe Fourth Colourをメドレー形式にして演奏されることが多いです。
なんとこのアルバム、レコードやCD、カセット等の製造・販売が誰でも自由に出来るようになっています。discogsのアルバムページを見るとえらいことになっています。カバー違いもあってコレクター涙目。マリオ64のサウンドフォントバージョンやスーファミかなんかで再生できるバージョンもあったりしてやりたい放題されています。自分は近い将来、日本語の帯付きでそれっぽいインサート付けて出してみたいって思っています。出したら買ってね💛
Gumboot Soup
13thです。狂気の5枚連続リリースもこれで最後です。まあ数年後に同じことしてるんですけども・・・
基本的には大人びた静かなサイケポップで、一曲目のBeginner's Luckはものすごくやさしい曲です。びっくりするくらい。まあタイトル通りギャンブルの曲なんですけども。五曲目のSuperpositionはボーカルにオートチューンのエフェクトが掛かっています。Gizzとしては珍しいですが好き嫌いはかなり分かれそうですね。私はちょっと・・・・・・苦手です…。All Is Knownのようにトルコ微分音が使用されている曲や、The Great Chain of BeingのようにC#スタンダードチューニングのストーナーロックも収録されていて、バラエティ豊かな内容になっています。私はラストのThe Wheelがお気に入りです。
実はこの曲レコードだとスイッチを切らない限り再生が止まりません。インナーグルーヴってやつです。有名どころだとThe BeatlesのSgt PeppersやP-MODELのAnother Gameでも体験ができるやつです。
Fishing for Fishies
14thです。2017年に五枚も出したかと思えば一年開いて2019年にリリースされました。私の大好きなアルバムの一つです。ソフトで上機嫌なポップ・ロックアルバムです。ただ、かなりメッセージ性の強いアルバムとなっています。一曲目Fishing For Fishiesから可愛らしいMVに上機嫌な曲調ではあるものの、魚を食べるのをやめてくれ、鮭や鱈はそんなことを望んでいない。と、魚食文化が発展し尽された国の国民としてはメッセージ性がかなり強いと感じる歌詞になっています。
楽曲そのものは軽やかですが、メイキング映像を見るとフライングVなどメタルで多用されるギターを使用し、ドロップチューニングを施し録音していることがわかります。This ThingやReal's Not Realが分かりやすいです。これの種明かしは次アルバムです。
ラスト二曲では一気にテクノ調へと変化し、これまたGizzの新境地を覗かせています。Acarine~Cyboogieです。 ばればれだとは思いますが私はこのバンドのソフトな面が特に好きなので、このアルバムを聴く機会はとても多いです。ピッチナントカとかいう音楽を個人の物差しで(中略)するサイトでは低評価が付けられてしまっていますが、そんなものはアテにならないのでものすごくオススメ出来るアルバムです。オススメです。
Infest the Rats' Nest
15thです。なんということでしょう、おもっきしメタルです。一曲目からしてストーナーとかドゥームメタルみたいなサイケ系のメタルとかではなく、スラッシュメタルですよ。ビックリです。刻まれるギターリフ、高速のツーバスで一気に駆け込んでくる一曲目、Planet Bは、初めて聴いたときにはついバンド名を再確認してしまいましたがボーカルがしっかりStuでした。攻撃的な音楽に乗せられる目ェかっぽじってよく見てみろ、"代えの地球"なんて存在しないんだ。といったメッセージ性の強い歌詞。そう、音楽的には分かりませんが、アルバムのテーマは前作からの地続きになっているのです。前作の録音で使われたギア達が生き生きとしています。四曲目のSuperbugはThe Great Chain of Being以来のストーナーロックだし、八曲目のSelf-Immolateではいつものディレイギターが鳴っているので全く地続きではないということはありません。
Gizzの環境問題に対する関心というものは確かに本気で、彼らの公式サイトから直接レコードを買うと、レコード本体以外にビニールは使用されていません。シュリンクの代わりにオリジナルデザインのボール紙に封入されているのです。更に、レコードをプレスするときに発生する端材をリサイクルしたレコードを安価で販売しています。以前私が某大手黄色い音楽メディア店でGizzのレコードを注文した際、ボール紙の上からシュリンクで包装されており、複雑な感情になったことがあります。"過剰包装"と言われてしまうことも多く環境問題に無頓着でありがちな私達ですが、本作から学ばなければならないことは多いと感じます。 ごめんなさい、シリアスな話題になってしまいました。 本作を最後にEric Mooreが脱退してしまいます。
K.G. : Explorations Into Microtonal Tuning, Vol. 2
気を取り直して16thです。Flying Microtonal Bananaでブツ切りで終わっていたものの伏線回収です。風の音、ズルナの音色が逆回しで流れ、あの不思議な音階が奏でられます。そう、トルコ微分音シリーズの第二章です!バンド名を冠したK.G.L.W.から流れるように始まるAutomation。実はこの曲もともとはメタルでした。ものすごい変わりようです。
七曲目Intrasportは、世にも奇妙なトルコ微分音ディスコソングです。ロック分野でのトルコ微分音は実は先駆者がいたりもするのですが、ノリノリディスコソングでトルコ微分音を使用している例は知りません。少なくとも私は。長らくライヴで演奏されてきませんでしたが、つい先日ついに演奏されました。おめでとうございます。九曲目のHoneyは、FMBでは聴くことのできなかった微分音アコースティック曲となっています。流れるようにヘヴィなストーナー曲のThe Hungry Wolf Of Fateへと移行し、曲調の差に驚かされます。そしてまたもや風の音が響き、
L.W. : Explorations Into Microtonal Tuning, Vol. 3
途切れることなくIf Not Now, Then When?へと移行します。
17thです。この曲はファンキーなクラビネットが印象的なトルコ微分音ファンクです。微分音エレピが印象的な二曲目O.N.E.、ほのかなインド要素を感じる四曲目Supreme Ascendancyと、続きものながらも前作より音楽性の幅が広い印象を感じます。六曲目のEast West Linkはミニマルなリズムが展開され、FMBに収録されている曲と近い印象を感じます。
ラストの曲はなんとK.G.L.W.。前作一曲目と同名で、同じフレーズが繰り返されます。しかしヘヴィなドラムが流れ込みストーナーロックへと変貌するのです。この曲、ヘヴィさだけで言えばITRNを越えているのでは?と思います。(トルコ微分音シリーズは全体を通してややヘヴィな印象がある)Gizzお得意の何拍なのかよくわからない複雑なリズムにヘヴィなC#スタンダードギター。Gizzの持つ様々な顔がこれでもかと盛り込まれています。
この曲はしっかりと綺麗に終わっているので、FMBから続いたトルコ微分音シリーズは(おそらく)終わりです。聴くときは、プレイリストなどを作って三作同時に聴くことをオススメします。実質的に三枚組アルバムです。
Butterfly 3000
18thです。大好きです。これまでのアルバムでチラチラとのぞかせていたエレクトロニックな側面が一気に爆発したアルバムです。全体的にメジャー調、明るい音色、遅すぎず早すぎない心地よいテンポで構成されています。しかしこのアルバムは実質的にPolygondwanalandの続編的なアルバムなのです。使われている楽器、歌詞のテーマには共通性が見られません。が、そうです。ポリメーター、ポリリズムです。ポップでわかりやすいメロディに影を潜めていますが、アルバム全体を通してポリメーターやポリリズムが展開されています。プログレです。もしかしたら世界一ポップなポリメーターポリリズムアルバムの一つかもしれません。一曲目のYoursから早速それが炸裂していますね。ドラムとシンセが全く異なる拍で入ってきます、ポリメーターです。またこのアルバムも(いつも通り)途切れることなく進みます。二曲目Shanghaiではメロディに曲名通りなアジア風味が感じ取れますね。無茶苦茶複雑ですけど。五曲目Interior Peopleは私がこのアルバム一番好きな曲です。長らくライヴで演奏されることはなく、Eggyというジャムバンド(flightless所属の同名バンドとは別バンド)が先にライヴ演奏するという変な状況でしたが、ついに先日本家でライヴ演奏されました。おめでとうございます。
このアルバムは全曲でMVが作成されており、公式YouTubeで視聴が出来ます。全て繋がったビデオが公式からリリースもされています。
そしてこのアルバムはなんといっても狂気的なリリース数でしょう。カバーアートや歌詞カード等の言語差分が恐ろしい数出てるのです。スペイン語やヒンディー語、韓国語といったな有名な言語はもちろん、西オーストラリアの原住民族、ヌンガル族の言葉でもリリースがされています。もちろん日本語もありますよ、その名もキングギザードそしてザリザードウィザード。なんじゃそれ?はっきり言って歌詞の訳も無茶苦茶で、一部文字はフォントが非対応でなさけないデフォルトフォントになっています。いろんな翻訳サービスを使ってみましたがここまでおかしい翻訳になることもなく・・・どうやったらあんな訳わからない日本語になるのでしょうか。初見で笑いが止まらなくなってTシャツも買いました。日本語の。バタフライ3000。

Made in Timeland
19thです。エレクトロニック路線であることは前作と同じといえますが、毛色はまったくもって異なっています。当初このアルバムはTimeland Festival来場者へのオマケで作られていたようで、去年までは一切デジタルリリースがされていませんでした。フェス自体は延期になってしまったようで、結局普通にレコードが売られました。レコード買ったら入ってるダウンロードコード入力したら携帯黎明期のチェーンメールだけが入ってるといった徹底ぶりでしたが、現在ではBandcampで買えますし、各種定期購読音楽配信サービスで聴くこともできます。めでたし。内容としては、15分のアンビエントテクノが二曲収録されています。一曲目のTimelandはひたすらアンビエントな癒される楽曲ですが、興味深いのは二曲目のSmoke & Mirrorsです。ついにGizzはラップにも手を出しました。私はそこまでラップが好きというわけではないのですが、さすがに初めてこれを聴いたときは驚きました。
本アルバム収録の二曲はどちらもライヴのオープニングカウント用に作られたものなので、カウントの映像があります。公式YouTubeで見れます。
Omnium Gatherum
20thです。おめでとうございます。タイトルはラテン語で寄せ集めみたいな意味合いらしく、内容もバラエティに富んだものになっています。
一曲目のThe Dripping Tapは18分に及ぶHead On/Pill直系のハイテンションなジャム曲です。近年のGizzの曲では一番好きかもしれません。人気も随分と高いようで、ライヴでは早くも定番の曲になっています。ゆったりととしていてまろやかなメロディに身を任せていると面喰います。一気に来ます。バッキバキに歪んだファズギター、勢いに身を任せたミニマルリズムのドラム、繰り返されるフレーズ。おもいっきりトリップソングです。でもってコーラスでは最初のメロディアスなフレーズがリフレインしてきます。テンションは高くなってるけど。ジャム一辺倒ではないところが良いですね。実はこの曲、元となるセッションは前述のFFFメイキング映像で確認ができ、Tropical Fuck Stormとのコラボ作、Satanic Slumber Party(Hat Jam LP)で聴くことができます。
二曲目のMagenta MountainはおそらくB3Kのあたりで既に元となるものは出来ていたと思われます。リズムこそ複雑ではありませんが、シンセがふんだんに使われたアジア風味のメロディは関連性を感じますし、Ya LoveのMVにはマゼンタ色の山が映っています。三曲目のKepler-22bはSoBEで見られたジャジーな雰囲気、Gaia、Predator XはITRNのようなヘヴィメタル、Sadie Sorceress、The Grim Reaperはラップ、The Garden Goblin~Blame It on the Weather~PersistenceのメドレーではGumboot Soupで見られたシックな曲を聴くことが出来ます。あまりにもバラエティ豊かなので、いろんなバンドのコンピ盤かのような印象すら抱きます。そういえばPredator Xというプレデターシリーズとは似ても似つかないパチモノC級映画があります。絶妙に面白くないので是非見てみてください。Gizzの音楽性総まとめみたいなアルバムなので、このアルバムを最初に聴いてみて、気に入った曲から次に聴くアルバムを探すということもできます。個人的には七曲目のEvilest Manも大好きなのですが、まだ一度もライヴで演奏されていません。残念。
Ice, Death, Planets, Lungs, Mushrooms and Lava
21thです。全体的に長尺な曲が並ぶジャムアルバムです。各楽曲の曲名にちなんだスケールでジャムを行いながら収録をしたようで、スタジオに入るときに用意していたのは曲名だけだったそうです。無茶苦茶楽しそうです。
一曲目のMyceliumは底抜けに明るい印象を抱きます。ミクソリディアスケールだそうです。二曲目のIce VはMVが面白くて大好きです。"Double down
Checkmate"の言い方がすごくかっこいい。Joeyが踊り狂っています。四曲目のLavaはこのアルバムで一番気に入っています。エオリアンスケールだそうです。まさしく溶岩のようなドロドロとしたリズムに不思議なスケールのメロディが合わさり、とろけてしまいそうな感覚に陥ります。
八曲目のIron Lungは人気曲ですね。曲の前半はゆったりとしたリズムにフワっとジャジーなコードで進みますが、三分を過ぎたあたりでファズギターのフィードバックが鳴り響き、一気にハードな展開へと移行します。五分過ぎあたりからはさながらハードロックのヘヴィな曲調になり、七分あたりでまた序盤の静かな展開へと戻ってきます。MVはAIで作られており、曲調に呼応するように目まぐるしく変化する狂気的な映像は是非一度見てみてください。タイトルは鉄の肺と呼ばれる人工呼吸器でしょうか。Flash Delirium(MGMT)のMVに一瞬映ってるアレです。
Laminated Denim
22thです。15分の楽曲が二つ収録されています。Made in Timelandパート2ですね、アルバムタイトルもMade in Timelandのアナグラムです。内容としてはクラウトロック+ポリメーターです。Made in Timelandパート2とは言ったものの曲自体は安心感のあるGizzサウンドで、とても気に入っています。一曲目のThe Land Before Timelandは雰囲気こそクラウトロックのそれですが全編に渡ってポリメーターが使われており一筋縄では行きません。テンポよくチャカポコ刻まれるカッティングギターはNEU!のオマージュでしょうか。大好きな曲です。
二曲目のHypertensionは打って変わってマイナー調のジャム曲です。IDPLMLに近い印象です。ライヴでもIron Lungとメドレー形式で演奏されることが多いです。
Changes
23thです。実はIDPLMLから本作までは2022年の10月にリリースされました。さらに言えばMade in TimelandとOmnium Gatherumも2022年のリリースなので、またしてもこのバンドは一年の間に5枚もアルバムを出してしまいました。なんなんだ・・・
これまでの10月リリースアルバムはジャム要素の強いものでしたが、本作は練りに練られています。2017年から練られています。本来2017年連続リリースのアンカーはGumboot Soupではなく本作の予定だったそうです。あまりにも練られているので、一回や二回聴いたくらいではあまり良さに気付けないアルバムでもあると思います。まず一曲目にChangeという様々な要素を含んだ長尺曲があり、Changeの要素要素を拡張させた小曲が並びます。更に曲名の頭文字をつなげるとChangesになります。たとえばHate Dancin'はChange序盤の軽快なエレピのセクション、Astroturfは五分過ぎあたりからのシャレたジャジーなセクション、Gondiiでは七分あたりからのエレクトロニックなセクションをそれぞれ取り上げて拡張し、一つの曲として仕上げています。ものすごい構成で、何回も何回も聴いているとやっとそのすごさに気付ける恐ろしいアルバムです。スルメってやつですね。
レコードはいろんなカバー差分が出ました。コレクターをいじめるのが好きなバンドですよね。
PetroDragonic Apocalypse; or, Dawn of Eternal Night: An Annihilation of Planet Earth and the Beginning of Merciless Damnation
24thです。アルバムタイトル長すぎませんか?まるで近年量産されているライトノベルのタイトルです。メタルのGizzが再来しました。SNSで「次はテクノを作るよ!」と言っていたらこれが出たので面喰いましたね。メタルといっても今回はスラッシュ一辺倒ではなくスラッジやプログレメタルの要素が多めです。五曲目のGila MonsterではついにAmbyがラウドなボーカルを披露します!これがまたかっこいいんですよ。ライヴで一緒にヒラー!ヒラー!モンスター!フーッ!ってやってみたいです。来日してください。後半で奇数拍子になります。続いて六曲目Dragonは、まさしくプログレッシヴ・メタルです。好きです。奇数拍子にポリメーターにクサいフレーズに目まぐるしい展開。これまでのGizzが培ってきた要素を一気に拾い上げる大名曲になっています。
ラストFlamethrowerはザックザクに刻まれたスラッシュメタルで突き進みます。しかし後半ではシンセサイザーや電子ドラムが使用され、「次はテクノだよ!」の発言が脳裏をよぎります。 …
本作はレコードのみDawn of Eternal Nightというスポークンワードが収録されています。もともとは各曲のイントロに収録される予定だったというウサワばなしを聞きましたがどうなんでしょう・・・
The Silver Cord
25thです。出ました、テクノアルバム。テクノといってもB3Kのようなものではなく、無理やり過去のアルバムを引き合いに出すとすればMade in Timelandでしょうか。本作にはスタンダードミックスと二枚組のエクステンドミックスがあり、断然後者がおすすめです。サイケデリックな味付けがされたテクノポップで、長尺のジャムが繰り広げられます。本作は前作と対になるアルバムとして作られました。前作がYin(陰)、本作がYang(陽)だそうです。曲中で前作のフレーズが登場したりと、かなり意図的に関連性が作られています。その為かGizzverseと呼ばれるGizz特有の世界観を考察するワンピース考察勢的なひとたちがFFF、ITRN、PDA、本作でカバーアートが繋がるのではないか!と考察していました。リリースされたときの反応が面白かったです。考察外れてしまいましたね。
オープニングを飾るTheiaが一番お気に入りです。もちろんエクステンドバージョン。
Flight b741
26thです。いや~良いですね最高です。ブルースロックですよ、最高です。このアルバムはメンバー全員がボーカルとして参加しています。Cavsのボーカルはバンド史上初ではないでしょうか。(他メンバーはコーラスなどで参加したり、リードボーカルを務める曲があったりする)
一曲目のMirage Cityからドンピシャすぎてニヤニヤが止まりません。ロックって、こういうものを言うのですよ。さりげなく披露されるスライド奏法が泣けます。後半で一気にスピードアップして爽快!素晴らしいオープニング曲です。ライヴでは前半と後半を分けて、間に何曲か挟んだりもしてます。来日~ 二曲目Antarcticaも歪んだファズギターと軽快なピアノの掛け合いが心地よいです。三曲目Raw FeelはまるでStonesです。が、奇数拍子なんですよ、Gizzらしさがはっきり出ていて最高です。続くField of Visionでも相変わらずの奇数拍子からスタート、チョーキングを多用したブルージーなギターフレーズが最高です。六曲目Le RisqueではついにCavsがメインボーカルを務めます!!!!!この曲が先行シングルなのですが、初見でマジで大声出しました。お前歌うのか!!!!!!ってなりました。最後の最後でStuがメインボーカルになるのですが、その瞬間の安心感すごいですね。トリハダ立ちました。このニクい構成にCavsの意外性と、先行曲にふさわしすぎます。
八曲目Sad Pilotはゆったりとしたリズムの美しいブルースロックです。この曲は実はLe Risqueが先行リリースされるだいぶ前からライヴで演奏されており、本アルバム収録曲で一番初めに聴いた曲でした。その時点ですでにこのアルバムの期待値は最高だったのですが、期待を更に上回る最高なアルバムが出てきてくれました。私の好みにドンピシャなだけです。
続く九曲目Rats In The Skyは心地よいアップテンポです。ライヴではHot Waterとメドレー形式で演奏されることもあります。
本アルバム収録曲はどれもメインボーカルがたくさんいてとても楽しいです。YouTubeの公式動画のコメント欄に誰が歌っているかをタイムスタンプ付きでコメントしている方がいらっしゃいますので、それを追いながら聴いてみるのも楽しいです。
さいごに
長くなり過ぎました。勢いで書いたので変な文章になっているところもあると思いますが見過ごしてください。今後Gizzはオーケストラを導入したアルバムをリリースすることが決定しており、すでに一曲が先行リリースされています。
一体どれほど幅の広いバンドになるのでしょうか・・・いつか演歌アルバム出しますよきっと。それはさすがになくてもシティポップアルバムくらいならホントに出しそうです。楽しみです。こんな素晴らしいバンドをリアルタイムで追えるのは幸せなことですから、どうか来日してください・・・・お願いします。 ありがとうございました。これでとりあえず終わりです。