見出し画像

電子ピアノとアコースティックピアノ

たまに「電子ピアノとアコースティックピアノ(以下「生ピアノ」)を買うなら、どちらを選んだらよいでしょうか?」と聞かれます。

どちらにも長所と短所があるので、目的と場合とあとは条件にもよるのだと思いますね。



楽器をされる方ならなんとなく感覚が伝わるかなあ、と思うのですが

基本的に、電子ピアノと生ピアノは、長くピアノに触れれば触れるほど演奏の方法において全く異なる楽器であることが実感できるのではと思っています。



ライブ演奏では生ピアノがなければ電子ピアノを用いています。

弾いている様子は一見変わりませんが、頭の中で注力している部分は全く違います。

それは、電子ピアノが、常に「同じクオリティの音」を鳴らすことができるという特性によるもの。

チューニングが微妙に動くこともありません。

これは、長所でもあり、短所でもあります。

平たい言い方をすると、どのような演奏レヴェルの人でも、「個別の音」に注目すれば一定の良い音を出すことができるということです。

ところが、電子ピアノはあくまで「センサーによる電子音」なので、生音にはない「間」や「ノイズ」を作り出すことについては限界があります。

例えば、鍵盤を上げた際に鳴る、ハンマーが戻る音や、音の切れ目の細かいノイズなど。

デジタルでいうところの、0と1の間にある無限の数値をすべて完全に表現できないということです。



なので、電子ピアノでピアノのために書かれた曲を演奏する際は、この「短所」をどう補うかを考慮しないといけません。



具体的にいうと、自分自身は電子ピアノで生ピアノの曲を弾くときは、少しオーバーめの表現を意識します。

今使っている電子ピアノ YAMAHA CP4stageだと、マルカートやスタッカートなど、スラーでないフレーズを弾くときは

気持ち短め、生ピアノの3/4~4/5くらいの音長になるイメージで打鍵します。

対して、各音の表情や音質の部分は、電子ピアノの面目躍如の部分でもありますので

音の強弱やメリハリの部分で、少しオーバー目に表情をつけています。
この辺の塩梅も、メーカーや機種によって様々です。そういう意味では電子ピアノにもキャラクターが存在します。
ちなみに自分自身はYAMAHAかKORGのピアノの音は弾き慣れていてなんとなくコントロールできる勘がありますが、Rolandのエレピは最初ちょっと戸惑います。
ライブ会場に電子ピアノが必要なとき、極力楽器は自身のものを持ち込むことが多いのは、そんな理由もあってのことです。


また、録音の際に、打鍵した後のノイズ音や打鍵した後の音の微妙な処理も含めて音楽の一部分であるし、それがやはりどうしても表現上外せない要素であると考えると、生ピアノを選択することになります。

一方で、電子ピアノの音色を優先したいときや、ふわっとした全体の響きを重視したいときは電子ピアノを選びます。

小さなスピーカーでうっすらBGMとして使うのを想定するなら、音色の面では生ピアノよりむしろ生ピアノっぽく作られた電子ピアノの音色の方が割と自然に聞こえたりするときもあります。


ちなみに、2枚目のアルバム「images sans nom」は、すべて電子ピアノで録った音です。

厳密には、デジタルぽさを取り除くために、電子音そのものではなく、電子音をレコーダーを使って録音したものです。

電子ピアノを採用したのにはいろいろ制作上の背景や事情もあるのですが、BGMとして使ってもらいたい意図があったのもひとつです。



ところで、普段の練習に電子ピアノは有効かどうなのかという話。

個人的には、種類を選べば、電子ピアノでも生ピアノの代替になるとは思います。

最近は、生ピアノのハンマーアクションと同じような機能を備えた電子ピアノもありますので、それを使えば、指の粒を揃えたり、指の運動練習には十分使えると思います(実際、自分も夜の練習ではこれを使っている)。

一方で、指の運動技量がある程度育ってきて、さらに深い音色づくりや表現の多様性を追求したいなら、電子ピアノよりも生ピアノを用いるほうが適切だと思います。

(まあ、そりゃあ、可能なら、小さいころからほんものに触れていられることは、何より有益ではありますが)



電子ピアノも生ピアノも、うまく使い分けながら付き合っていきたいなと考えてます。

ちなみに次のアルバムは、ふたたび自宅の生ピアノの音を積極的に使っていこうと思ってます。

(イメージした音を録れるマイクも手に入れたことだし・・・)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?