戦術が成り立つために必要なこと〜パワプロやウイイレがなぜ面白いのか〜
ふざけているように見えて実は真面目なコーチングのお話。
今回はおもしろいコンテンツに関する僕の勝手な意見。では全くなくて、ハンドボールコーチとしての『気付き』を大真面目に綴ったものです。
この考え方が僕の練習の組み立て方に大きな影響を及ぼしていますし、選手目線でも必要な考え方の一つになることは間違いありません。
読んだら面白いと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。
戦術とは何か
国語辞典ではこのように記述されていました。
1:戦いに勝つための個々の具体的な方法。→戦略ともいう
2 :ある目的を達成するための具体的な方法・手段。
ex)「賃金闘争の戦術を練る」「人海戦術」
つまり「戦術」とは、どのようにして対戦相手に勝っていくのかを、1つの場面というミクロ的な視点や、1試合を通して考えるメゾ的な視点、さらにはリーグを通してトーナメントを通して考えるマクロな視点で考えることを言い表します。
今回は1試合の中でのお話です。
コーチや監督は、ゲームを通して変化していく状況の中で相手と対峙しながら最善と思われる「戦術」を選手と共有し、共に戦うことになります。
相手ベンチがこちらのOFに対して講じたDFを、今度はどのように攻略していくのか、シンプルな考え方をすれば「後出しジャンケン」のようにOFとDFは適応し合うことになります。
対応するために実際に動くのは選手です。ウイイレのようにコマンドを押せば選手がその通りの動きをしてくれるなんてことはない訳です。
「戦術」を実行するためには選手たちの「個人戦術力」が必要になります。
「ん?ん?待てよなんだそれ。」ってなりますよね....笑
ちょっと待ってくださいね。今から説明します。
「個人戦術力=技術力×戦術的思考力」
技術力はご想像の通りドリブルを自由自在につくことが出来る能力や、良いシュートが打てる能力です。
戦術的思考力は、その状況に合わせた適切なプレーの選択ができるか。ということになります。
極端な話、どれだけ良いシュートを打つことが出来ても、相手DFが密集している12mから打ってばっかりの選手には魅力を感じませんよね。
良い選手は、良い能力を適切な場面で発揮するから良い選手と呼ばれている訳です。
さて話を戻しますと、相手に適応するために講じた戦術も、実行する選手それぞれの「個人戦術力」に依存しているということになります。
そこが、スポーツの本当に面白いところになってくる訳ですが、同時に様々な問題が発生しやすいポイントでもあります。
面白いと感じるために必要なこと
すこーし意味のある脱線をします。
あの有名な「マリオ」の制作チームは、ゲームを作る上での時間のほとんどを「難易度設定」に当てるらしいですね。
プレーヤーが試行錯誤して「ギリギリでクリアできる!」と感じさせることが、そのゲームのおもしろさに直結するみたいです。
パワプロやウイイレなどのスポーツゲームでは、それらの「難易度」をどのように設定しているのかを考えてみます。
パワプロの投球場面では、投げるコースと球種を選択すればゲーム内の選手が勝手に投球してくれますよね。
つまり、実際の「その球種のボールをそのコースに投げ切る技術」はスキップして、相手バッターをどう打ち取るのかという「個人戦術的な思考力」のみでプレーが成り立っています。
本当の野球なら、ストライクが入らなくなってつまらなくなってしまうところを、自由自在に「ボール半個分」を出し入れできるようにしているところに面白さを感じさせているということです。
ウイイレも然り、シュートチャンス場面において実際に華麗なボレーを決めるのはまずもって不可能と言えるでしょう。しかしゲームの中ではコマンドを打つ込むだけでその動きが実行されるのです。
しかし、実際のプレー場面に戻ってみると、動作を自分自身が実行しなければいけないことで「難易度設定」が爆上がりしてしまう訳です。
わかっているんだけど上手くいかない
「効果的なはずの戦術が成功しない」
コーチなら誰しも経験したことのある状態です。
選手目線でも、イメージできる解決策を実際に実行できるかはまた別問題だと感じることがあると思います。
ゲームならばここの選手が持っている「能力値」に倣って動きがオートで行われることが多いですが、実際のスポーツはそこも全て選手個人がコントロールしなければなりません。
ここまで書いてきたように、「戦術」を実行するためには個々の選手の「個人戦術力」が土台となっており、そこが働かない限り次のステージに進むことは出来ません。
「個人戦術力」のない集団は、相手に押し切られるように、一方的な試合展開を強いられることは間違い無いでしょう。
選手もコーチも、試合中にどうにか出来ることは限られています。逆を言えば、出来ること、コントロールできることに焦点を当てて、目の前の状況を打開していくしかないのでしょう。
そこで苦しくならないために、必要になる個人戦術を試合から逆算して、複合的にトレーニングに組み込むことが僕たちの仕事なんだなと感じます。
試合でどうにもならなかったことは、逆に言えば、どんなトレーニングをするべきなのかヒントを与えてくれますし、そういった「失敗」や「敗北」がなんのためにトレーニングするかを理解するチャンスになるんだと思います。
今日はこれくらいで!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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本日もお疲れ様でした!
筑波大男子ハンドボール部 森永 浩壽