私が日本選手権で定めていた「裏テーマ」
はじめに。
お久しぶりです。
2020年11月のインカレが終わって書いたノートが1番最近のnoteだった気がします。
私自身が1年間ヘッドコーチとしてどのようにチームに関わったのかをかなり細かく書きました。
たくさんの方に反響をいただきました。本当にありがとうございます。
インカレが終わってから、間も無く日本選手権が12月の頭にあり、12月はそのまま修士論文の執筆に集中していたためnoteを書く余裕がありませんでした。
今回は日本選手権の様子を少しお伝えした後に、私が日本選手権を迎えるにあたって密かに定めていた「裏テーマ」についてお話します。
日本選手権in堺
12/1~12/5の期間で行われた日本選手権。
筑波大学の初戦はJHLに所属している福岡ゴールデンウルブス(以下ウルブス)さんに33-27で勝利し、翌日2日にトヨタ車体ブレイブキングス(以下車体)さんに21-37で敗れ全日程を終了しました。
これまでこの日本選手権は、チームにとってどのような位置付けにするか非常に難しい大会だったそうです。主要なメンバーである4年生がインカレで学生競技に一区切りをつけることと、卒業論文に追われてコンディションを整えることが難しいことがその理由です。
4年生が全員参加しない代も当然あり、代によって比重をどのくらいかけるのか、藤本先生と4年生が相談して決めることが多くなります。
今年は春リーグが中止になり、秋リーグとインカレでチームを成熟させていったのは間違いありませんが、全員に「まだやれる感」のようなものがあった気がします。4年生の多くが次のステージでプレーすることも相まって、JHLのチームに勝利することを目標に大会への準備を進めていきました。
この大会の3年前、2017年の大会では現・豊田合成の徳田新之介さんがキャプテンの代で北陸電力に勝利を収め、大騒ぎをしたのは良い思い出です。
さて、今大会に話題を戻します。
1回戦のウルブス戦、インカレ含め私たちが積み上げてきたディフェンスと、整理されつつあったアタックを発揮することが出来れば勝機はあると思っていました。
コーチとして戦術的に準備していたのは、相手の個人得点パターンに対する対策です。
JHLでの勝利はありませんが、映像を見る限りバックプレーヤーを中心に得点力のある選手が揃っていた印象があったので、ディフェンスシステムをどのように対応させるか、いくつかパターンを準備していました。
60分間、ゲームを戦う中で対応できればいいと思っていました。インカレほど戦術を変化させることはなく、矢野、藤川、タケにほとんど託していた印象です。
試合をすればするほど戦術面が洗礼されていく感覚を覚えました。もっとこのチームで試合ができればなあ、そう思ってしまうほどに。
車体戦は事前のミーティングで「攻撃はシンプル、あとはシュートがどれだけ入るかで対応を決めよう」と選手たちに伝えました。
前半は作戦がバッチリハマり、こちらが数的有意で試合を進められる時間が多かったこともあり、前半は2点差で折り返します。しかし、後半は同期の北詰を中心に個人戦術面でどうしても敵わない部分が出てきてしまい、力尽きました。
この代のチームの軸として結成当初から引っ張ってくれた選手たちは、次のステージを見据えた大会になったのではないかと思っています。
先ほど挙げた4年生はもちろんのこと、3年生の佐藤はアタックの中心として60分通してチームをコントロールしながら、重要な局面では点も取って活躍してくれました。
下級生たちも、JHLのチームを間近で見ることで刺激になった部分は大きいのではないでしょうか。実際に目の前にして感じてみることで開ける感覚があることは間違いありません。
それがたとえ、「そこまで出来るイメージがわかない!」と思っても、そこ感じたハンドボールは彼らの経験の中で一つの基準となり、今後努力する方向性を定めるのに役立ちますし、
努力した先でまた挑戦して、その都度イメージをアップデートしていくことで、自分がそのステージで戦うイメージをより強くしていって欲しいと思います。
日本選手権で定めていた「裏テーマ」
「全員を試合に出すこと」
インカレ後、日本選手権をどう戦うか選手たちやスタッフとも話していましたが、この設定は私個人が自分に対して課していたテーマでした。
理由は前の章で伝えた通り、実際に経験しないと、実感しないとわからないことが多すぎるからです。
ウルブスとも、車体とも、コアなメンバーだけで戦おうと思えばできたと思います。
彼らが上手く行っても上手くいかなくてもずっとコートに立つことで、チームとして「やり切った感」を感じることができたと思います。
しかし、大学チームであるこのチームは毎年4分の1の選手が入れ替わる「流動的なチーム」であり、それは同時にこのチームが「育成のためのチーム」であることを示します。
私たちはアスレチックデパートメントからサポートを受け、大学日本一を目指したチームづくりをおこなっていますが、それ以上に大事なことはこのチームを継ないでいくこと、そこに携わる選手を育てていくことだと思います。
だから、この大会で全て綺麗に収めようとしたくなかったのです、私自身が最後のベンチだとしても。このチームはこれからも続いていくし、そのために後ろに座っている今後筑波を引っ張っていくであろう選手たちに少しでもプレータイムを託したかったのです。
4年生を立ててあげたい気持ちはものすごくあります。実際に、車体戦の最後5分、7mスローを取ったら3年生の山田に打たせるつもりでしたし、ベンチに向かってそう伝えていました。しかし、ベンチでもマッチー(4年生の町田)に打たせよう!という雰囲気になったこと、マッチー自身が7mスローを取ったことで本人に打たせることになりました。
矛盾してんじゃんと言われればそれまでですが、らしさを失ってはいけない、大事なのはバランス感覚を持っていることだと思います。
車体戦が終わり、これで自分の仕事はひとまず終了し、ホットした気持ちと、これでよかったのか、もっと何かできたんじゃないか、そう思いながら会場を出ようとしたとき。
マッチオフィシャルをしてくださっていた審判長の福島さんからの
「本当に良いチームを作ったね」
この一言が本当に嬉しくて、救われました。
コーチとしてどう関わるか
先日このようなツイートをしました。
私が関わっているは選手たちだけではなく、選手たちの将来であることをいつも意識しています。
そして、その影響がハンドボールを少しづつ良くしていったり、筑波ハンド部を少しづつ良くしていったり、いい結果が巡り巡って帰って来ればいいと思っています。
筑波には学生のうちから海外へ挑戦する選手が何人かいます。
彼らを誇りに思います。
そして、彼らがいないからといって弱い筑波であっていい訳がないし、つまらないチームである訳
にもいかない。選手はもちろん、スタッフもそう思って戦っています。
だからこそ、今期は荒島選手のように花開いた選手もいるわけですし。あ、まだまだ開くそうです。
彼の他にも試合経験を積むことでどんどん開花していく選手はうちには大勢います。
彼らは努力を怠らない選手たちですからね、そこは自信を持って言わせていただきます。
来年度からも大学ハンドボール界を盛り上げてくれること間違いないでしょう。
さて、今日はこの辺りにします。
ご意見ご感想お待ちしております、ぜひ一緒にお話ししましょう。
本日もお疲れ様でした!
筑波大男子ハンドボール部 元ヘッドコーチ 森永 浩壽