【コロナ廃業】外国人率ほぼ100%の日本酒バーが廃業した背景
コロナで店が潰れました。
もうすぐ1年が経ちます。
大阪心斎橋に、Hana Sake Bar(はな酒バー) という日本酒をメインに日本産のお酒を楽しんでもらう小さなお店がありました。
季節による変動もありましたが、年間を通したデータだと、外国人率91%です。
店内は連日外国人だらけです。そのほとんどが欧米からの観光客でした。
私はここの運営を任されていました。
コロナがやってくるちょっと前、2019年はオープン以来初めて黒字でフィニッシュできた記念すべき年でした。
オリンピックを控え、2020年の店はさらに売り上げを伸ばして大繁盛。の予定でした。
コロナは長引くのでは?
ここから閉店への決断に、時間はかかりませんでした。
外国人客が断たれると一瞬で経営が難しくなる方法で運営を続けていたからです。
なぜ外国人だらけになったのか
運営会社は外国人が多く利用する宿泊施設の経営を軸にしています。
私自身も数年前まで観光客向けのゲストハウスを運営していました。
インバウンドブーム、東日本大地震、民泊/Airb&b の参入、とにかくいろんな人、企業の参入。参入障壁の低いホテル業界のここ10年は、ネジが一部外れたまま運行している木製ジェットコースターのような状態です。
原発事故の影響が落ち着いた、2012〜2013年頃、宿業界は活況を呈しました。
その勢いの中オープンしたのが Hana Sake Barでした。
宿の外国人集客力がそのままバーの集客につながりました。
何でも "始めの印象" というのは後々に影響する大事なものです。
人は見た目が9割、人の第一印象は初めの数秒で決まる、ということですね。店は人ではないですが。
インターネット上の口コミの破壊力はもはや敵なしです。
google、トリップアドバイザー、情報提供サイトや誰かのブログ。
外国語で誰かが評価やコメントを投稿すると、次の日また外国人がやってきます。
そうなると無限にループしていきますので、もう止められません。
Hana Sake Bar = 外国人
確定です。このイメージは結果的に最後まで抱えることになります。
Ed Sheeranもやって来た。 外国人集客に必要なこと
では、それまでの事業などが何もない状態から外国人を集客していくには、どうしたらいいのでしょうか。
(1) Google マイビジネスへの登録
必須です。人は、いきたい場所を探す際、 Googleマップを使う世の中になりました。欧米人の様子を見ていると、この傾向はさらに高まります。
Googleマイビジネスに登録(無料)すると、Googleマップに表示されるようになります。
(2) トリップアドバイザーに登録
必須ではありませんが、やはり欧米人の知名度は抜群ですので、損はないです。
(3) SNSやブログなどで情報発信
SNSは必須です。Facebook、インスタグラム、ツイッター、うまくいった時の破壊力はどれもかなりのものになります。SNSへの投稿はいつ誰が見ているか分かりません。うまく誰かに拾われるとそこから大きく展開していく、ということもよくあります。
Hana Sake Barの場合、2017年にNew York Times のオンライン版で紹介されたことが一つの契機にもなっています。
New York Timesを見た方の来店は、結局閉店した2020まで続きました。
今の時代、看板をみて来店されることは、競争の激しい土地だとまずないといっても過言ではないと思います。
Ed Sheeranは、バンドメンバーやボディーガードなど引き連れてやってきましたが、看板を見て車を店の前に止めたということは考えられないです。
外国人を呼び込むメリット、デメリット
(メリット 1) 金払いがいい
ターゲット層をある程度明確にしておく、店のコンセプトをはっきりさせておく必要がありますが、日本に旅行にこられる方の多くは、「食」を楽しみにされています。食べると飲むにはお金をかけてもいいと思っている人も少なくありません。単価の低いお客さんを多く抱える戦法は、消耗戦になる可能性が高いです。
(メリット 2) 店が活気付く
お客さん同士が勝手に盛り上がることも多々あることから、にぎやかな雰囲気を作りやすくなります。スタッフのモチベーションも上がりますので、相乗効果が起こります。どんな業態でも、やっぱり流行っているところって活気がありますよね。
(メリット 3) 常連がいない
あえてメリットとして挙げますが、一元さんは後腐れがないです。お互い気遣いなく楽しんでもらえるのは、精神衛生上とても良いです。
あと、私個人の好みかもしれませんが、常連がカウンターで盛り上がってる店って、入りづらいです。。。
(デメリット 1) 言葉の壁
英語や中国語がよくできて、サービス業で働きたい、という人材はかなり稀です。
軽いノリの英語でなんとなくコミュニケーションを取る、くらいの英語力でなりたつとすれば、お客さんもそれ相応、と言わざるを得ません。いいお客さんに楽しんでもらおうとすると、少し上のレベルでのコミュニケーションを持っていることが望まれます。
マナーを守り、お互いを尊重する関係を、ほんのひと時であっても作り上げたいですよね。日本文化はノンバーバルなコミュニケーションで成り立っていますが、世界的に見るとこれは稀です。心のやりとりには、口頭のやりとりが必要。これができるスタッフがいると、外国人を相手にする店の勢いは高速でブーストします。
Hana Sake Barは、ほんとにいいスタッフに恵まれていました。
(デメリット 2) 常連がいない
さっきと話が違う!でもやっぱり売り上げを考えると常連さんは必要です。店、スタッフ、オーナー、心地よい環境で心地よく楽しんでもらえると、また来ていただける。好循環は安定した収益を生みます。しかし、これには大変な気遣いや労力がかかる場合があります。努力するキャバ嬢はやっぱり稼ぎもいいんだと思います。
Hana Sake Bar の体力がなかったのは、観光客を対象にしたというところです。
それって、"差別化" だったんですけどね。
世の中、先のことなんてわからないものです。
独自の取り組み 1 (日本なのにチップの習慣)
日本初?!Hana Sake Bar にはチップを置く習慣がありました。
もちろん任意ですが、チップに関してお客さんの目に留まるところに案内していました。
理由は、
(1) 賃金の安さをスタッフのために少しでも埋め合わせる
(2) 断ることに疲れた
ということです。
コミュニケーションを取って楽しんでもらうお店でしたので、皆さん帰り際にチップを置こうとするんです。こちらはそれなりの情報提供を英語でしますので、それに対しての対価としてだと思います。
断ることもないか。とある時を境に積極的に打ち出してみました。
「日本に来たのにチップって書いてある。。」
という口コミを残されてこともありましたが、わずか1件でした。
我々の文化に反するのかもしれませんが、Hana Sake Bar では普通に機能しました。
その気持ちを持つ人に対して、こちらは断ることはしません。
という書き方でしたので、強制はもちろんしていません。
独自の取り組み 2 (日本酒の講習会)
外国人向けの日本酒セミナーを毎日のように開催していました。ここからお客さんに直接つながったのはいうまでもありませんが、飲食店を紹介するウェブサイト以外のところでも露出が増えていったことで、講習会に来ないお客さんにもリーチできるようになっていました。
そこにあるものを直接売る。
ということだけではなく、そこにあるものを利用して、別の売り方を考えることに損はないですね。
日本人のお客さんも、このように大事に育てていれば、、、まだ店は存続していたかと思うと悔やまれますが、それはそれでまた次に活かしていきたいと思います。
まとめ
差別化、時代の流れに合わせた情報発信、リスク分散、そして身を粉にする努力。。。
当たり前かもしれませんが、全部できてやっとなんとか成り立つ。くらい厳しい世界です。
また店をやるチャンスがあれば、これにさらにプラスプラスしていく勢いを持って臨みたいと思います。
40も半ば。体力的には早めにチャレンジした方がいいかもしれませんね。
日本食に対する外国人のイメージは上がる一方です。
"健康" がコロナを機に世界の大きなテーマになっていることは否定しようがありません。
(お酒は不健康なものとしてのステイタス も上がってしまいそうですが。。。日本酒はユネスコの世界無形文化遺産登録に向けて動き出しています。)
魚文化、野菜、米、日本酒、ニッポンの食文化は自信をもって世界に自慢できるものです。
「健康食大国、ニッポン」
を押し出せるチャンスが必ず来ます。
コロナ後の日本、世界で観光業、飲食業は大きく変化していくことは間違いありませんが、いずれ外国人は戻ってきます。1年後なのか、2年後なのか10年後なのか分かりませんが。また日本中で外国人たちが喜んでいる姿をみれることを今から楽しみにしています。
外国人がより日本を楽しめるよう、いろいろな面で改善していけることはあると思います。この記事で、一人でも飲食業界の国際化を考えていただける方が増えたらいいな、と願っています。