犬にアレを噛まれたぜ!な小説『子犬たち』

マリオ・バルガス・リョサの短編『子犬たち』を読みました。

リョサについては、前回も書いたので興味のある方はそちらも読んでください!

サッカーの練習後、シャワーを浴びている最中に狂暴な犬によって性器を噛み切られてしまった少年クエリャルの悲しい物語。
少年時代には、本人や同級生はその深刻さを理解しておらず、無邪気にも〈ちんこ〉というあだ名がつけられます。しかし、思春期に入り異性に興味を持つようになると彼の負った傷(性器がない)は、違った意味で痛々しくなっていきます。
本来ならば時は傷を癒すものですが、彼の場合は青年、そして大人になっていくにつれて傷口が広がるばかりです。

この小説、短いにも関わらず非常に立体的な作品になっています。というのも、“ぼくたち”という一人称複数と、少年たちの複数の声が段落も変えずにどんどん切り替わります。最初は誰が何を言っているのか分からず、読むのに戸惑うのですが、慣れるとこのテンポの良さが心地よくなっていきます。

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この物語を女性が読むとどんな感想を持つのかな?と考えていると、少し設定が似たピエール・ルメートルのベストセラー小説『その女アレックス』を思い出しました。こちらはミステリーの傑作です!

ところで、「ち〇こ」というワードが 何回登場するか数えてみました。60ページほどの短い作品にもかかわらず、55回も登場していました。しかも、“チンゴロ”という名前の友人も登場するので、危うくカウントするところでしたよ。これは、とんでもない小説ですわ。。。

『子犬たち』は、集英社から出版されている「ラテンアメリカ五人集」という短編集に集録されています。ラテンアメリカ文学の重要な作家の珍しい短編が読める良い本です。皆さんも是非!

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