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同期会の夜によくあるいくつかのマチガイ 3

「もしかしてその彼女と」カンだけいい女、絵李伊の声に諦めたような表情で吉池が頷いた。

「振られ男?いやいや寝取られ男??フランス語でいうところのコキュ?コキュでいい」妙に嬉しそうだな絵李伊、男の不幸がお前の好物か。性格が悪いって言うわけじゃないが、コイツは女にしては妙に無防備なところがある。無神経ってことでも無いんだけどね。まぁそれがいつもの絵李伊だ。吉池もそのあたりは気にしていないみたい。

「う〜んコキュか、響きは悪くないけどって。そこはいいだろ別に話の本筋じゃないし」いやそうはいかないんだな吉池くん。

「で、コキュの吉池氏としては、その彼女の連絡先はわかるんだよね」絵李伊よ、お前はオレの代弁者か。偉いぞ。

「だったら、彼女なら駿太のことわかんじゃない」おぉ畳み掛けるか。

「もう聞いた。さっきオレ“いたよ”っていったよね。あいつら去年の秋には別れてたから」

「で、その女と今度の駿太の件がどう関わってくるんだ」

「変なクセがある」

「どゆこと?」これは酒田。

「死にたがりってあるんだよね。オレも実際に見るまでは知らなかったけど」

「あれかリストカットとかか」坂東だ。

「どうかな?ちょっと違ってるかな。少なくともオレのときはそんな感じだった」

「そもそもさ、お前たちどういう感じでその女と知り合ったの」冷静だね井上よ。

「そうだよ、そこから。さっおネイサンにいってごらん」乗ってるな絵李伊よ。

吉池の話は、あっちへ飛び、こっちへ転がりとなかなか要領が得なかった。もっともその責任の半分は途中で飛び出す主に絵里衣や酒田による奔放な発言のせいでもあるのだが。

まとめるとこうだ。その彼女。優乃というらしい。池川優乃。ついでに言っておくと相性はユーノーらしい。you noなのか、you knowなのかは聞き漏らした。

「どう思う、さっきの吉池の話」

「あれが本当だとしたら、イカレ女だな」

「吉池は嘘をついたり、つまらない冗談を言うタイプだと思うか」

「思わないな。少なくとも俺たちにそれをいって、やつにメリットというか。なにか得られるものがあるか」

「ないな。だとしたら駿太はまずいことになってるかも知れない」

「そうだ、吉池もうすうすは感づいている」

「まだ好きなのかな」

「その女のことを」

「アリエル」と絵李伊。

あぁこれだとわからないよな。まぁ一言でいうと死にたがりは死にたがりだが。なんていうんだろ、一人で死ぬのは嫌なんだそうだ。つまり、そう希望は一緒に死んでほしい。それも口に出してていうことはない。だけど、その気にさせちまうんだな。古い表現をすると別の意味での魔性の女。地獄の犬を引き連れて道と道が交差する場所に現れる死の女神。そういやぁ日本でも六道の辻は冥土への入口なんていってたような。

「地獄のサイレーンだな」

いや酒田、さも重々しげに言うけどサイレーンはどっちかっていうと海のほうだから。
「でもわかる。ちょっといいかも」おいおい絵里衣よ。ここでそういう事言うなよ。それとも女ってのはみんなそうなのか。

「警察かな。手遅れじゃないといいけどな」

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