オレンジジュースとカポエイラ shot4
それにしたって健一郎よ。どうしてお前がユージとつるむなんてことが起こるんだ。お前たち二人に接点なんてどう考えても・・・。ンっ?待てよ。あるじゃないか。しかもとっても身近なところに。で、安西が話を持ち込んできたということは・・・。そういうことかい。
「あのぉなんというか一応、先に言っておくけどオレは関係してないからね。少なくともこの件に関しては」
もし不幸な誤解があるのなら、ひとまず取り除いておくのがお互いのためだ。
柄にもなく低姿勢なオレだったが、その効果は逆に作用したようだ。
「あんたが何をどう考えようがどうこうしようがそれはいいの。とにかくあのテレフンケンをそのままで取り返して」
まぁなんて力強くブレるところのない口調だろう。いつもの美しさに加えて表情もキリッとした男前。長年の友情というバリアーを乗り越えて惚れそうになった。もちろん一瞬には違いないが。こうみえても理性的で自分に厳しいタイプなんだ。
一線を乗り越えなかった理由はもうひとつある。“そのまま”という言葉を強調したことになんの意味があるのだろう。
「なにがあるんだ。っていうよりあの中に何かが入ってるのか。大事な何かを隠したとか」
安西の頭が左右に大きく振られた。
「隠したわけじゃない。気付いたの。それも私がバカだったから。だからなにも聞かずに取り返して欲しい」
わからないことだらけだが、彼女が真剣なことだけは間違いないようだ。