見出し画像

徹夜明けにアイスクリーム 4

「失礼を承知で聞いてもいいかな、それ、なにか新手のコスプレとか」
我ながらなんて遠慮のない性格だこと。だが昔なじみ相手に遠慮するほど不健全な性格でもないしね。
「いきなりきたね。お兄さんらしいよ。いっそ懐かしいよ」
そう言って彼、今田章吾は遠くを見るような仕草をした。
「炎天下で汗を拭うことさえ忘れてツルハシやスコップを握った日から20年?いやもっとかな。思いだすねぇ。金はなかったけど、将来への不安や疑問もなかった日々が」
なるほど、人間の本質はそう変わらない。その笑顔は、俺ではなく里井に向けられていた。
ほらな、やっぱり変わっていない。なにしろこの男は、アパレルの店長という社会的な顔より、ナンパ師という属性の方で知られた人間だった。
女ウケの悪かった俺からしてみれば羨ましいようなタイプなのだ。
そのくせ、男たちにもウケは良かったから、そこはベタな表現だが人間性の違いというやつなのだろう。我ながら反省すべきだな。
柄にもなく過ぎ去った若き日の感慨に浸っていた俺だったが、里井の小気味の良いツッコミが入った。
「イヤ〜そうきます。それ言う。受ける〜」
いきなりのストレート。正確には俺じゃなくて今田氏へだったが。
あろうことか手まで叩いてやがる、なんて女なんだ。


いいなと思ったら応援しよう!