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Born to be wildでいいです2

当時のスポーツクラブを説明するとしたら、何に例えたらいいんだろ。
そうだなとにかく今のスポーツジムをイメージするべきじゃない。
入会金の金額欄にゼロが6つ必要だったり、
ゴルフ場並みに預託金が必要だったり。
要するにとんでもない世界だったというのがシンプルな事実。
なにしろ販売の窓口が銀行だったんだからね。
想像してみてもご覧。
高級そうなスーツを着た銀行マンが、
富裕層の自宅に押しかけて「いかがです、このスポーツクラブ。
預託金400万円で入会金が100万円、月会費が10万円で1年分前払い。
総額で入会時に620万円が、今回の一次募集では300万円。
現時点での試算ではありますが3年後には1500万円で売却が可能です。
〇〇様にこそふさわしいと思われますが、いかがでしょう」
とまぁこんなセリフで売り歩いてたといたといったら信じるかい。
いくらバブルエイジでも、その計算は無茶だろうって。
そこは気にするところじゃない。とにかく笑えるだろう。
少々盛ってはいるけど、当時はこんな感じだったね。世の中すべてがさ。
そんな時代に我を忘れてはしゃいでいると、つ
いつい大きな勘違いをしてしまう。
その余韻の成れの果てがが今のオレ。
とそんなことはどうでもいい。
今日話したいのはあの日、あの場所で起こったオレたちと
愛すべきアイツらとのお話だ。
ドーヴィルは朝がいい、そう言い出したのは、
理数系特進クラスの則川だった。
その場にいた全員が、この意見になるほどと
賛成の意を表したのはいうまでもない。
なぜかってそれはドーヴィルの朝こそ王様の時間だからだ。
泣きわめいたり、はしゃいだりとうるさい子連れの主婦も、
ナンパに目の色を変える無粋な奴らとも無縁の時間。
だって、彼らがやってくるのはもちろん午後、
特に4時以降になると特別料金が適用されるため
混みだすという理由もある。
だがそれ以上に大きな違いは、女の子たちの存在。
その点は今だって同じだろ。
さっき女の子と書いたけど“子”だけじゃなかったって
ことも付け加えておこう。
とにかくドーヴィルの王様時間はよりどりみどり、
百花絢爛、いずれアヤメかカキツバタ状態。
(ゴメンね表現がレトロで)
もちろんそれを狙うハンターたちも多い。
ビギナーのボクたちが早々参戦できる
レベルじゃなかったのは正直に告白しておこう。
高台にある豪華一点張りの会員制スポーツジムからプールエリアへは、
丘を下るような構造になっていた。
夕方になるとプールエリアへの
アプローチには篝火が焚かれていた。
あれはタヒチとかポリネシアのあたりをイメージしてたのかな。
まだ誰もが純情で、夢という言葉が輝きを見せていた頃、
それは僕たちの前に現れた。
彼女の名前は芦沢絵里子。
そうだ今では目にする機会の減った最後が子で終わる女子名。
面倒なのは、それが自分のための奇跡だと信じた人間が
僕以外に5人ほどいたことだ。
もし思い出の夏を一つだけあげろと言われるなら、
仲間の誰もがあの1991年の7月こそ、その夏だと答えるだろう。

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