見出し画像

法務部の独立

前回、経営陣の関心事項にフォーカスして、法務部からイニシアティブをスタートしよう、という話をした。そうしたところありがたいことにご覧頂いた方からTwitterにてこんな反応を頂いた。「時事問題や法改正を題材に織り込めば、もっと注目を集められるのではないか」と。今回は、これについての考え方を記載しつつ、筆者として念頭に置いている法務部像について述べてみたい。

まず、このTwitterでのご指摘はおっしゃる通り。でも、前者の時事問題というと、得てして他社の危機管理事案などをベースとしたレビューであったりすることも多く、即座に収益に繋がるものではない、つまり、予算がつきにくい。また、後者の法改正に伴う新規案件は、案件組成力といった他部署を巻き込んでの会社としての総合力が問題になる※。当然、巻き込むための事業部の優秀な人材も必要になる。

ここでインハウスロイヤーにとって一つ重要なことがある。「他部署はコントロールできない」ということである。ここで「コントロール」と言っているのは、ある個別の案件を法務として止めるかどうかとかそういうレベルの話ではなく、他部署の陣容を含む実力、ひいては会社全体の実力は、法務部にはコントロールできないという意味だ。

会社には波がある。業績が良い時、悪い時、社会のニーズが上向きの時、下向きの時などなど。その波に応じて、会社はリソースを調達し、そして、リソースが時には失われることもあり、そんな流れの中でその姿を変えていく。法務がどれだけ一緒に仕事をしたいと思ってたとしても、その優秀な部署は明日はもうないかもしれないし、あっても目先のことに精一杯で、余力がないかもしれない。

だから、他部署のアクションを一切待つことなく、法務だけでコントロールできることがあるとすればそれは何か、常に考えていかなければならない。そしてそれを見つけたら、他部署に声をかけることなく、まず法務でできる範囲で完成させる。その後、他部署は乗りたければ乗ってくればいい。

そんなわけで、このことを、「法務部の独立」と呼んでいる。実際にこのように法務が自らのイニシアティブでサクサク進んでいけば、ビジネスの可動領域を拡大させつつ、法務が目の前の政治問題(?)などに巻き込まれるリスクも低減させることができ、一石二鳥というものだ。

※なお、念のため、ここで法改正というのは、法改正を利用して新たなサービス・商品を世に送り出すようなことであり、例えば民法改正に伴い約款を改定する、などというレベルの話ではない。後者のようなことは、もちろん当然法務でやる前提である。

いいなと思ったら応援しよう!