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【転職活動】英語面接、準備できてますか?
1 本記事の趣旨及び筆者弁護士猫のご紹介
この記事は法務系Advent Calendar 2024の一環として執筆しております。いっちゃん様よりバトンを受け取りました。ドキドキの今回初参加でございます。
筆者弁護士猫は外資系を渡り歩いており、英語ネイティブ・ノンネイティブを含む外国人の同僚たちと日常的に英語で話しながら仕事をしています。これまでの筆者のキャリアの中で、転職活動において英語面接は数多くこなして参りました。
近年ますますのグローバル化の流れの中、転職活動における英語面接はその重要性を増す一方であり、本記事がお役に立てればと考えております。
なお、本記事は面接の場面に限らず英語で話す場合一般に使えるTipsや、英語面接に限らず転職活動一般に使えるTipsについても記載しておりますので、英語面接の差し迫った必要性がない方にもお役に立てる部分があろうかと自負しております。是非ご一読いただければ幸いです。
2 なぜ英語面接がうまくいかないのか
さてここで早速、英語面接がうまくいかない理由を考えてみましょう。筆者の経験上、その理由は以下①〜④のいずれかに集約されると考えています。
①問題1 そもそも英語が話せていない
②問題2 志望動機や転職理由をクリアに伝えられていない
③問題3 パッション&アクティブさが伝わらない
④問題4 リクルーターからの情報との齟齬
面接官経験のある外国人によると、「うーん、CVを見ると確かに素晴らしい経歴で間違いなく優秀な人なんだろうけど、話してみると一体何がしたいのかよくわからないんだよね。」という感想を持つことが多いのだといいます。この「よくわからない」ということの正体は概ね、上記4つのいずれかに集約されるものと思われますので、以下に上記各問題に対する対処法を述べたいと思います。
3 問題別対処法
①問題1 そもそも英語を話せていない
これはいうまでもなくまず英語を勉強していただく必要があります。ただ、面接以外の普段の英語での会話でもそうですが、以下の点を話す時に注意していただければ、英語レベルの大幅アップなしでも多少状況改善できる余地がありますので、ぜひお試しいただきたいと思います。
(1)基礎的文法知識を強化し、必ず文法に則って話す。
英語は文法によるストラクチャーが明確な言語で、文法に則っていない文章は受け取る側にとって非常に理解しずらくなるので、苦手な方は中学、高校レベルの文法からおさらいして、実践できるようにしてみるのがおすすめです。
(2)まず要点を伝える。
"Two points, the first one is [名詞], and the second is [名詞]"のような形で、簡単な名詞を活用し先に要点だけ頭出しして、これから話す内容の予見可能性を高めることが有益です。
②問題2 志望動機や転職理由をクリアに伝えられていない
①と共通する部分もあるかもしれませんが、しかし、仮に英語ができてもお伝えすべき内容が整理されていないければ当然伝わりません。これは英語面接に限ったことではありませんが、志望動機や転職理由は、面接準備段階において、以下の「転職活動三種の神器」のフレームワークで整理することが有益です。
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この「転職活動三種の神器」は筆者オリジナルではなく、転職市場においてはかなり以前から一般的に言われていることでご存知の方もいらっしゃることでしょう。この「転職活動三種の神器」に関して注意が必要なのは、「転職理由は客観的・構造的なものである必要がある」ということと、「不必要なネガティブは回避」ということです。ただ単に「現職の職場の雰囲気が嫌だから」などというのはもちろん論外です(流石にそんな理由を面接で開陳する人はいないとは思いますが)。転職活動においては、この「転職活動三種の神器」により、一貫した転職ストーリーを示し面接官を「なるほど、だからこの人は当社に来たいのか!確かに彼/彼女なら当社で活躍できる!」という印象を持っていただくことが求められ、面接における全ての質問は表面的には異なる質問であっても全てこの「転職活動三種の神器」をテストしにきているということを理解する必要があります。
そうは言っても、具体的にどのように考えを整理するかは難しいこともあるでしょうから、以下に、「転職活動三種の神器」で整理した転職ストーリーの例をお示ししますので、ご自身のストーリーの整理に際してご参考にしていただければ幸いです。
(例1)「これまで●法律事務所で●の分野のドキュメンテーションを中心に行ってまいりましたが、●社に出向した際、ビジネスに精通したエキスパートの方々と共に1から案件を作り上げる経験をさせていただき、ビジネスの最前線で働きたいとの強い意欲が芽生えました(志望動機)。現職は法律事務所ですので私のような年次の若手はドキュメンテーションが中心になりますが、企業に転職することで、ビジネスの真っ只中に飛び込みたいという所存です(転職理由)。これまで培ってきた●の分野でのレギュレーションに関する専門性は、必ずや案件を立ち上げる上で共に働く皆様のお役に立つものと自負しております(自己PR)。」
(例2)「●の分野で●年にわたり●の業務を通じて専門性を高めてまいりましたが、この度現職における人事制度の見直しなどで残念ながら●の分野から離れなければならない可能性が出て参りました(転職理由)。御社はまさしく●の分野では●や●など業界トップの実績を有しておられます(志望動機)。私は●の分野では●年には●といった案件で社内表彰をいただくなどの実績を積んでおり(自己PR)、この知識経験をぜひ、御社で活かしたいという所存でございます。」
③問題3 パッション&アクティブさが伝わらない
筆者は個人的にこれが英語面接においておそらく一番多いお祈り理由ではないかと推測しています。日本人はそもそもコミュニケーションにおいて大げさなリアクションや顔の表情を作らないなどコミュニケーション手法において西欧社会とは大きく異なっています。その上に言語がノンネイティブとくれば、その時点で2歩も3歩もディスアドバンテージがあるように思います。さらに、海外拠点の外国人が面接官の場合オンライン面接になることも多く、空気を共有できないことから余計に伝わりにくくなります。この問題については以下を意識することが有益と考えています。
(a)「座長」は面接を受ける側であるとの意識改革
使用言語を問わず、面接は単純に聞かれたことに答える場であると考えているとすれば180度の意識転換が必要です。面接は面接を受ける側が「座長」を務め、面接官を導く「ステージ」だと考えましょう。自分が主役を演じつつ、観客でもあり共演者でもある面接官のテンションを高めて乗せていくのが面接というプロセスです。落語やプレゼンを要する業界においては「背離れ」という言葉があります。これは観客が興味を持って聞いているうち、前のめりになってくる現象をいいますが、面接において狙うのはまさにこれです。まずこの意識がとても重要です。
(b)パッションを伝える
ではどうやって「背離れ」を初対面の外国人の面接官から、ノンネイティブの言語で勝ち取るのでしょうか。英語面接においてはその一つの要素は単純にストレートにパッションを伝えることであると筆者は考えています。そしてそれをするのに便利な言葉が英語にはあります。それは"My career aspirations are 〜."
このaspirationという言葉は、日本語では願望、抱負、希望などと訳されますが、筆者の経験上は「職業人生をかけてやり遂げたいこと」といったようなニュアンスをも含む非常に強い印象を与える言葉のように感じれられます。上記〜には「転職活動三種の神器」で整理した内容を入れれば、非常に強いメッセージになることでしょう。他にも、be passionate about 〜などこうした場面で使える表現はあるので、ぜひ各自調べてみて頂き、ご自身に合うと思うものを使っていただければと思います。また、今後、Xにおける筆者弁護士猫のシリーズ#ビジネスで使える英語表現において、こうした表現を取り上げていくことを検討中ですので、その際にはぜひご覧いただければ幸いです。
なお、無表情でaspirationを語るのはあまり似つかわしいとは言えません。時間のある時にハリウッド映画などを見て、表情をどう作るか、ポジティブな感情をどう表現するか、外国人俳優の表情や話し方を真似てみるのも良いトレーニングとなると個人的には考えています。面接に過度なボディランゲージは良くないとも言われますが、英語面接においてこのaspirationsを語るに際しては軽く胸に手を当てるなどの動作をしても良いのではないかとも個人的には考えています。但し、このあたりの考え方については、「日本人には日本人のスタイルがあるのだ」という考え方ももちろんあり得るところで、本記事は全てをwesternizeすることが正しいのだと主張する趣旨ではもちろんありません。
(c)具体的エピソードを伝える
「コンピテンシー」という言葉を聞いたことがないでしょうか?これは高いパフォーマンスを発揮する人物に共通して見られる「行動特性」を意味し、20年程前には日本の人事業界でこの「コンピテンシー」が大流行、行動特性を具体的なエピソードから掘り下げていくというスタイルの「コンピテンシー面接」がよく行われました。現在の英語面接でも具体的なエピソードが質問されることがありますが、これはこのコンピテンシーを問われていると理解してよいでしょう。しかし多くの人はここで身構えてしまいます、「私、そんな大げさに語れるようなスゴい行動なんてしてません」と。しかし大言壮語する必要などありません。特にこの記事をご覧になっている方の中にはキャリアをスタートされて間もない若手の方もおられると思いますが、そのようなフレッシュな方からそんな大層な話が出てくるなどとは面接官自身も期待していないことも多いでしょう。候補者の誠実な人柄を伝えられるような、小さなお話で良いのです。業務上のちょっとした工夫などは誰しも日常的に大なり小なりしているのではないでしょうか。それを面接準備の段階で棚卸しして、言語化してストックしておき、面接の場で適宜見せていけば良いのです。質問されなくても「転職活動三種の神器」の説明の中で、自己PRのサポート材料として自ら触れても良いです。一つ一つは小さいものであっても、回数を重ねることでジャブのように面接官に効いてきて、「おお、なんというアクティブな人材なんだ。きっと当社で活躍してくれるはず!」という期待を抱かせることができるはずです。さらに高度なテクニックとして、面接終盤で面接官から「何かご質問は?」と聞かれた際に、面接官からの回答へのカウンターでこのコンピテンシーや自己PRをダメおしで披露できるような質問をし、自らの舞台に引き込むというのがあり得ますが、そこまでしなくとも上記を踏まえていれば十分良い結果を勝ちとることができるでしょう。
(4)問題4 リクルーターからの情報との齟齬
最後に注意が必要なトリッキーな点がひとつ。多くの場合人材サーチ会社の外国人リクルーターが応募企業との間に入ると思われますが、その場合リクルーターに与える情報をうまくコントロールしないと、意図しない情報が面接官に対しリクルーターから面接前に伝わってしまうこともあります。上記の通り言語の問題もありただでさえ応募者本人からの情報が伝わりにくい中で、ネイティブのリクルーターが同じ英語を母国語とする面接官にもたらす応募者に関する情報は、面接官にとって大きな意味を持つことになるのは当然です。特段ネガティブな内容でなくても、リクルーターから面接官が聞いた情報と、応募者が面接で話す内容が齟齬すると、面接官にとっては非常にわかりにくい状況が出現することになるわけで、わかりやすく「転職活動三種の神器」で整理した内容をお伝えしていく上でこれは絶対に回避したいところです。リクルーターは確かに「フレンドリーで陽気な兄ちゃん」のようなキャラであることもありますが、しかし決して、何かプライベートなお友達になったりよろずお悩み相談に付き合ってくれるような存在でもないわけで、リクルーターと接する時にはどの程度の情報を見せていくかについて注意が必要ということを最後に申し添えたいと思います。
4 最後に
ここまでお読みいただきありがとうございます。ご質問やコメントがございましたらぜひお知らせいただければ幸いです。
最後に若干の所感を。筆者も大変僭越ながら上記偉そうに記載したものの、いうまでもなく面接は見えない他の候補者との戦いになることも多く、筆者も競り勝ったこともあれば競り負けたことも当然あります。もっとも、転職は面接だけがその要素ではなく、共に働くことになる応募企業の方々、規制環境、マーケットなどのビジネス環境、応募企業自体のビジネス状況、そして報酬面など必ずしも応募者からコントロールできない様々な関連するファクターがあり、仮に面接で競り勝ったとてこれら問題は残ります。これは負け惜しみでもなんでもなく、筆者は競り負けた場合においても結局事後的に、筆者側の実力不足等の事情も含めて「ああ、あそこで競り負けてよかったのかもしれない」(なおこれは決して、先方企業様に問題があったという趣旨ではありません)と思うことも多く、まあ結局、なるようにしかならないっす、というのが結論ですね。
というわけで、法務系Advent Calendar 2024、お次はblanknote様でございます。どうぞよろしくお願いいたします。