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脊髄損傷から留学挑戦へ

本ポストでは理学療法士の私がこのニュースを新聞で読み思ったことを記します。

こちらのクラウドファンディングは終了していますが脊髄損傷を受傷した八木郷太さんの手記が残っています。

こちらの記事によると八木さんは学生時代に柔道で脊髄損傷を受傷され後遺症として麻痺が残ったそうです。重度の障害が残ったものの、日本の障害者制度やインフラ改善のため留学を決意するに至り留学を志しておられます。

重度の四肢麻痺を持っておられる方には日常生活を送るためヘルパーによる介助がかかせません。

私は理学療法士なので脊損患者の日常生活や労働がいかに大変か、また周囲のサポートや周辺環境の設定にどれだけの職種が時間をかけて携わるのか、おおよその想像がつきます。

脊髄損傷後遺症を抱えたまま留学?

見出しを見て医学的知識に加えて留学経験のある私はびっくりしてしまいました。

そしてその後、彼の勇気を称える気持ちでいっぱいになりました。

留学したことのある方には分かると思います。
留学って本当に大変なんです。

日本の留学者数は2024年度も減少傾向だと言われています。

私が留学した2017年までは増加傾向だったので、コロナ禍による影響が大きかったものと予想します。コロナ禍の後は円安による外貨の高騰と物価高の影響で市民生活に影響が出ており、留学に対する前向きな姿勢をとるのは難しいかもしれません。

八木さんはそれでも留学して学ぼうとしています。行政の応援やクラウドファンディングによる支援費の獲得はもちろん重要です。お金がなければ生活はできません。しかしここで最も重要なのはスポンサーではなく本人の熱意です。

私が海外大学院に在籍していた時、先天性の疾患を患い電動車椅子に乗り留学していた日本人女性の学部生がいました。彼女は友人も多くキャンパスライフを心から楽しんでいました。海外には生涯者と健常者を分け隔てることなく平等に接する人々が多いように思います。

それは乳幼児に対するコミュニティの対応にも現れていると思います。

当時一緒に渡航した2歳と5歳の子供を連れて公園で遊んでいた時のことです。初老の白人女性が話しかけてきてくれて、
「あなたの子供達は本当に美しいわ。こんなに元気に遊べるなんて素晴らしいことよね。」と言ってくれました。

そんなことって日本ではなかなかないですよね。育ち盛りの子供は大きな声を出したり泥だらけになったりと決して美しい見た目ではなかったのですが、それを叱りつけるのではなく褒めてくれる。海外にはそのような文化が残っているところもまだあります。

一方で、差別に合うのもまた現実です。海外で挑戦する日本人サッカー選手がよくされるアジア蔑視のポーズを目の前でされたこともあります。相手は子供でした。

異国の地に住むということは旅行では遭遇しない目に遭うということです。差別は世界中どこにでも存在しますが我々日本人は島国で陸続きの国境を持たず日本語に守られた独自の社会で生活するうちにこの事実を忘れてしまっています。海外で暮らしていると差別されます。ただアジア人だからという理由で。

比較的人口も少なく商業的規模の小さいニュージーランドでさえ差別は存在しました。

留学するということは日本社会に守られた壁の中から生身で現実の世界に飛び込んでいくことに他なりません。良いことも悪いことも日本人の常識を大きく飛び越えて降りかかってきます。

その事実を知っているからこそ八木さんの勇気に感銘を受けました。

アメリカはとても広い国ですしどのような環境か地域差もあるでしょう。詳しく分からないのですが、少なくとも車椅子の方には日本より住みやすい環境がインフラとして整っているのではないかと思います。また障害者の権利に関する市民の意識も高いでしょう。パラリンピアンをリスペクトする姿勢にも成熟した文化的背景を感じます。

身体障害を持つ身で海外で勉強をするということは時間も労力もかかるのが事実です。決して費用対効果が高い手段とは言えません。留学を志し成功する人もいれば失敗する人もいます。

しかし海外で一定期間努力して学位や認定資格を取得する、あるいは取得できなくても挑戦したという事実には価値があります。マイノリティに属して国際感覚を養ったり、異なる文化の人達と共通の話題を探してコミュニケーションをとったり、時には不利な条件で自分と異なる文化圏の人と交渉する経験などすべて実際に海外に滞在しなければ得られないものです。

そしてそれらの体験は慣れ親しんだ環境と習慣の中で過ごした経験しかない人にはできないものです。

「障害者に対する福祉を発展させるためにその分野の先進国に留学し知見を持ち帰る。」

簡単ではないけれど、実際に体験した人の意見は価値があります。八木さんが無事に留学を終えて帰国されるよう陰ながら応援しています。

私たちも八木さんの学びに対する前向きな姿勢に学ぶことがたくさんあるのではないのではと思いこの記事を書きました。

読んでいただきありがとうございました!



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