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これから日銭を稼ぎに行くのだ。とても薄情だと思った。

 雀の雛がぽとりと落ちた。アスファルトに横たわっていた。弱っているみたいだった。どうしようかと悩んだ。だけど手を出した。起き上がるとよたよたと歩き出した。せめて車道を避けて欲しいと思っていたらうまく避けてくれた。その直後鴉がそのちいさな雀を咥えて噛み殺した。そしてまた道路に捨てられた。目は生気を失って、いのちは絶たれたみたいだった。死んでしまったんだと思った。目撃した出来事を放置することができなくて、せめてと思って土の上に置いた。生垣の中に隠すみたいに。これ以上は何もできなくて、せめて土に還ることが出来たらよいと思った。ぼくがアスファルトの上にのたれ死んでいたらせめて土の上に置いて欲しい。出来れば人気のない所。それ以上は何もしなくて良いので。

 鴉を責める気にもならないし、非難するのはお門違いだとも思う。ことの成り行きを眺めることしか出来ないし、行った行為がこのいのちのためになったのかも分からない。自己満足かもしれない。自分だったらこうして欲しいを満たしただけかもしれない。ゆっくり弔ってやることも出来ない、これから日銭を稼ぎに行くのだ。とても薄情だと思った。

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