燃え尽きるのが先か、燃え広がるのが先か
前回ポストから色々トピックスが多くて、何から書いたらいいのかという感じなんですが、1カ月の間に色々とありまして。
1号店ブリューパブテタールヴァレの7周年があり8年目に突入。他店の周年シーズンやら、自社の飲み会やらでバタバタと。
GW前半は、ブリューパブの立ち上げサポートで新規免許がおりたので、一気に3バッチ仕込み。
GW後半はイベントで京都初出店。ゆるラン部の遠征も来てくれて盛り上がりました。
バイオマスボイラーのメーカーさんが堺にあったので、そちらを見学させてもらったりして色々情報収集したので、それについてはまた改めて。
今月になって、京都の人気ブルワリーのヘッドブルワーであり共同経営者の一人が退職するという記事がポストされて、けっこう思うことがあったのでそれについて。
彼のポストには明確に「燃え尽きた」と表明されていました。
ここまで明確に心情を記したポストも珍しいと思いながら、そのブルワリーだからこそだなぁとも思います。
創業当初、本当に高品質でクリエイティブなクラフトビール製造がしたくてスタートするブルワリーは多い。
というかほとんどのクラフトビール製造者は、うまいビールを作りたいから起業すると思う。
うまいクラフトビールが出来れば簡単に売れるというものでもないが、
本当に高品質なものはやっぱり人気が出るというのもまた一つの真実で、彼らもまた高品質なクラフトビールを生み出して、ブランディングも成功して、拡大路線を続けているわけです。
創業当初から比較的慎重な戦略で、クオリティを最優先にしてきた彼らであっても、ビール製造事業の本質である規模の経済とのジレンマに最近は悩まされているのは、最近のSNSやブログのポストから感じられてきました。
そもそもビール製造というビジネスは大量に作って大量に販売するというのが王道の戦略であって、これまでほぼ唯一の勝ち方と言ってもおかしくなかった。
彼らのクラフトビールが人気になって売れれば売れるほど、
職人の仕事がどんどん食品工場化していくのは当たり前のことであって、設備や投資が大きくなって組織が大きく従業員も増えていけば、そのマネジメントは複雑になっていく。
そもそもビール製造の仕事は基本的に地味な反復と力仕事が大半で、ただの工場勤務なのだから、ふとした瞬間に、何やってんだろう、と気付いてしまう可能性は高い。
クラフトビールをもっともっと燃え広がらせる前に、
自分自身が燃え尽きる可能性について、実は私自身も定期で考える。
だからこの波紋を広げるであろう彼のポストには非常に共感しているし、共感して同じ道をたどる人がこれからも出続けるだろうとも思う。
日本のクラフトビールシーンはまだ30年弱
日本のクラフトビール業界は2025年に30周年イベントを実施する予定なんだけども、まだまだ未熟な業界なんだなぁと改めて思う。
歴史や伝統的なバックボーンや系譜が弱いから、燃え尽きたときによりどころが無い気がするのだ。
家業でやっているところも少ないし創業者が燃え尽きちゃったらそのまま衰退するしかないところが大半だろう。
特にこの5年くらいはブーム化しているのもあって、
想いだけや勢いだけでスタートして、最大火力のままあっという間に燃え尽きちゃうんじゃないか?と思うような人も少なくない。
マーケットがもっと燃え広がる(例えばシェア10%以上になる)までには、もっともっと長い期間火をくべ続ける必要があると感じている。
弊社の企業理念
「ブリューパブを通じて、ビールの文化と楽しさを伝え日本に新しい価値を創造する」
創業当初、ブリューパブ事業それ自体が目新しくて新しい価値だったかもしれない。が、今では日本にも多くのブリューパブがあってそれだけでは既存の消費者には響かないようになった。
だけど、新規の消費者を獲得するためにはブリューパブはもっともっと日本に数が要る。
今回のブルワー燃え尽きる問題の一件で一層感じている。
これは、そもそもクラフトビール製造は必ず拡大路線の戦略を採らないといけないのか?という長年の課題の一つの答えでもある。
クラフトマンシップを維持しながら大規模化することの難しさ。
アメリカのクラフトビールシーンがそうなったように、99%の大量のブリューパブのようなマイクロブルワリーが乱立して、トップ1%の大規模クラフトビールメーカーが大手のマーケットシェアを奪えるようになる。
日本のクラフトビールシーンもそうなりつつあるが、燃え尽きるのが先が、燃え広がるのが先か。
美味しいクラフトビールを作りたい、というモチベーションはすぐに燃え尽きる。
燃え広がっても燃え尽きない燃料が、新しい価値になる。
ブリューパブスタンダードが提供できる価値も変わっていく。
日本のクラフトビールシーンにはもっと大きな野望が要る。
今日はちょっと散文で。