れいわ新選組「命の選別」騒動の顛末
経緯
れいわ新選組が揺れている。いったい何が起きているのか?この間のニュースを追えていなかった方のために経緯を解説する。
7月3日、れいわ新選組の大西つねき氏が週2〜3回ほど配信している自身のLIVE配信チャンネル(当該回は”「正しさ依存症」とそれを生み出す教育について”と題されていた)において、新型コロナに関する話題に触れた際に視聴者から寄せられるチャットに答える形で以下のように発言した。
「高齢者は死んでいいのか?高齢者は死ぬ確率は高いし、そもそもね…その話しましょうか?どこまで高齢者を長生きさせるのかっていうのは我々真剣に考える必要があると思いますよ。何でかっていうと、いま介護の分野でも医療の分野でも、これだけ人口の比率がおかしくなっている状況の中で、特に上のほうの世代があまりに多くなっている状況で、高齢者をとにかく死なせちゃいけない、長生きさせなきゃいけない…っていうそういう政策をとってると、これ多くの…お金の話じゃなくて、もちろん医療費とか介護料って金がすごくかかるんでしょうけど、若者たちの時間の使い方の問題になってきます。どこまで高齢者を、ちょっとでも長生きさせるために子供たち…若者たちの時間を使うのかっていうことは、真剣に議論する必要があると思います。こういう話はたぶん政治家は怖くてできないと思いますよ。命の選別するのか?って言われるでしょ?命、選別しないとダメだと思いますよ。はっきり言いますけど、なんでかっていうとその選択が政治なんです。選択しないでみんなに良いこと言っていてもたぶんそれ現実問題として、たぶん無理なんですよ。だからそういったことも含めて、順番として…これ順番として、選択するんであれば、もちろん高齢の方から逝ってもらうしかないんです」
この動画が”emil”と称する人物によって切り取られ、7月7日にTwitterに投稿された(emilはプロフィール欄の自己紹介や過去の投稿などから、れいわ新選組には批判的な日本共産党の支持者とみられる)
この投稿は同じれいわ新選組の次期衆院選候補である大石あきこ氏の目にも止まり「許されるものではない」と同日に引用リツイートされ、瞬く間に拡散された。
その結果、大西氏のこの発言は各種メディアでも批判的に取り上げられることとなる。
荻上チキSession22(TBSラジオ)/ 7月8日
れいわの立候補予定者が「命の選別」発言 山本代表釈明:朝日新聞/ 7月9日
れいわメンバー「命の選別」発言 山本太郎氏が謝罪(時事通信)/ 7月10日
これを受け、れいわ新選組の山本太郎代表は7月10日にLIVE配信を実施し、一連の騒動について陳謝すると共に総会において大西氏の処分(除籍)を諮る旨を述べた。
さらに総会の前日(7月15日)、同党に所属する参議院議員の木村英子氏も自身のHPにおいて大西氏を批判する声明を発表した。
7月16日、れいわ新選組の臨時総会(非公開)が開かれ、大西氏は離党届を提出。しかし同党はこれを受理せず、賛成14、反対2で大西氏を除籍処分とした。
山本太郎氏の記者会見(7月16日)
大西氏の記者会見(7月16日)
船後靖彦氏の声明(7月16日)
総会での反対意見
安井みさこ氏の声明(7月17日)
田島つよし氏の声明(7月17日)
この処分に支持者から反発が起こり、大西氏を擁護する意見と批判する意見が拮抗する炎上騒ぎとなった。
主な批判派の意見
大西氏の発言は優生思想につながるものであり、生命の尊重と平等を訴えてきた党の方針に反する。
高齢者の選別を認めれば次は障害者次は無職の人…とエスカレートしていく恐れがある。
主な擁護派の意見
動画は悪意に満ちた切り取りであり、故意に誤解を誘おうとするものである。
動画の中で大西氏は障害者のことには触れておらず、優生思想という批判は拡大解釈に基づくものである。
れいわ新選組の規約が不完全なために党が山本太郎代表の独裁体制になっている。
れいわ新選組の規約(資料)
れいわ新選組の綱領(資料)
周辺の動き
なお”れいわ新選組若者勝手連”と称する大西氏の支持者がTwitterで実施したアンケートでは、大西氏の除籍に反対する意見が圧倒的だった。
そうしたなか、京都府警が去年11月に発生したALS患者に対する嘱託殺人事件の容疑者2人を7月23日に逮捕した。
7月24日、騒動の発端となったemilと称する人物に対し、日本共産党の志位和夫委員長が異例の慰労ツイートをおこない、様々な憶測を呼んだ。
7月25日、れいわ新選組候補者の野原善正氏が党運営に対する不信感を理由に離党願を提出(7月30日受理)。
各メディアの報道
大西つねき氏(れいわ新選組)の演説を文字で読む 現代社会が抱える金融システムの不条理(田中龍作ジャーナル)
山本太郎の国会活動を支えてきた人物「解党的出直ししかあり得ない」(長周新聞)
大問題となった「命の選別」発言、大西つねき氏が本当に伝えたかったこと(現代ビジネス)
「山本太郎現象」その後 混迷するれいわ新選組のゆくえ(論座)
【川端祐一郎】「命の選別」論争の不毛(クライテリオン)
相模原事件後も止まらない「命の選別」 医療の世界の「自己決定」と「自己責任論」(BuzzFeed)
7月27日、大西氏は自身のYoutubeチャンネルで今後のことついて語り、一連の騒動について反省の弁を述べた。
以上が7月末時点での騒動の顛末である。少数政党ながら野党で最も勢いがあると評されていた山本太郎代表率いるれいわ新選組の突然の波乱劇。皆さんはどうご覧になっただろうか?
嬉しいです!