『なるたる』楽屋ご開帳・出張版を読んで
とにかく読みたかった『なるたる』楽屋ご開帳・出張版が届きました。
『なるたる』という漫画はわたしにとってバイブル的漫画です。
この漫画の存在を知ったきっかけは、キッズステーションで放送していたアニメ版でした。当時は小学生だったので、(嫌な小学生だな…)第1話を見て『女の子が空飛ぶアニメ』という認識で見ていました。後の東富士の話、貝塚ひろ子のいじめの話は幼過ぎてよくわからないまま見ていたと思います。
『なるたる』という四文字のタイトルはその後も頭の片隅にずっといました。
それから、中学生になり再びアニメ版を見直して「このアニメ(漫画)めちゃくちゃ話面白いな…」という事に気づき、そこから原作を買い集め、現在まで何度も読み返す漫画になりました。かなり読み込んでいると思います。
多感な中学生の時に『なるたる』なんて読んじゃったらその後の性癖とか創作にも影響でちゃうよね…。実際に、竜の子の絵は小学生の時から描いていました。
それだけ思い入れの強い『なるたる』ですが、世間の『なるたる』評価って、"鬱"・"トラウマ"要素の評価ばかり高くなっていると思います。
最終話の終わり方、ミミズジュース、のり夫の最後…ショッキングなシーンが確かに多いのですが、なるたるの真の面白さって、説明がされない超練りこまれた世界設定なんですよ。
わたしが何度も読み返しているのは、理解ができないからで。
竜の子とは、竜とは、乙姫とは、物質再構築とは、日野レポートとは、鶴丸とは、・・・・・・説明無いんかい!!!!!
読み込んで、そういうことね…とふわっとした理解しか出来ず、『なるたる考察・解説サイト・ブログ』を読んでやっと分かるか分からない漫画、それが『なるたる』なんです。
そんな謎漫画『なるたる』の原作者鬼頭先生が楽屋ご開帳本を個人出版されたので、これは買うしかないでしょう。
【楽屋ご開帳】というのは、コミックスの最後に、キャラクター等の初期設定やラフを載せたオマケページです。のり夫の初期設定が全く違っていたり、さらっと貴重な事が載っている内容でした。(新装版は楽屋ご開帳が無いとか?)
なるたるの理解できないところは解説サイト・ブログを読むと理解が深まるし、めちゃ面白いのでお勧めです。
わたし個人が長年気になっていたことリスト↓
・鶴丸丈夫のプロフィール
・涅見子さんの出生・どこで須藤と出会ったか等
・宮古巽はラスボスになる予定だったのか
・原作は打ち切りであの終わり方だったのか、真のエンディングはあったのか
ここら辺の事が書かれているといいなーという希望を持ち、届いてからすぐ読みました。
いや~~~~~、、、、すごかった。
本当に。
久しぶりに読んで数ページで「うおお!?」って叫びました。
ここから先は内容のネタバレを含みます。
【なるたる前】作品の世界設定から虜になってしまいました。
『なるたる』の面白さって、これだけ世界観・設定練りこまれているから面白いんだ、と身に沁みました。
これらが没になったのがもったいないくらい読みたくなる設定でしたが、後の作品に活かされているのが分かりました。
性格真逆の鶴丸の前身が、没作品で既に存在していたり、『創空の舞』というタイトルからも、後の『終わりと始まりのマイルス』に繋がったのでしょうか?
そして気になっていた鶴丸丈夫の事。答えになるものは書かれていませんでしたが、鶴丸の設定案が読めて満足しました。
竜が使える能力があったかもしれないのか。
鶴丸が『なかよし』を読んでいるコマがあったけど、恋愛興味無し・一筋縄じゃいかなそうなシイナ(小学生女の子)の気持ちを勉強する為に読んでいるもんだと思っていたけれど、少女漫画が好きで読んでいたのかな。
それから、【渾沌の王】って何?!鶴丸が【渾沌】、須藤が【虚無】の二つじゃなかったかもしれないの?
ホシ丸が単純な見た目のままの理由が、鶴丸に美術的思考が無いから、というの興味深かったです。
竜の子の外見がどう決まるのか、その説明は漫画では無いのですが、リンク者の思考の高さ+美術的思考+α(+リンク者の深層心理にあるもの?好きなもの?)から外見が変化していくのかな。
貝塚ひろ子の鬼が禍々しい姿をしているのは、本人の思考能力が高いから、という一文があって理解が深まりました。これは良い情報。
須藤のトリックスターが星の形をしているのは、思考能力は高いが美術的なことには興味無かったからかもしれないのかな。
涅見子の出生等については書かれていませんでしたが、須藤の設定が面白すぎました。
名前も違っていたし、妹がいたかもしれなかったし、その妹は地上の竜という設定だし、このなるたる読んでみたい・・・。
世界を整理(滅ぼす)しようとしていたのは、本編と変わらないものの、竜の融合・一体化するというワードがあったので、竜にはほかにも設定が付けられた可能性が見えて面白い。
読んでいると、『エヴァンゲリオン』を感じました。書いてあったし。
『なるたる』読んでてエヴァみを感じることは無いのですが(同じセカイ系の共通点はあるけど)なるたる構想が97年だと、エヴァの影響と世の中の終末思想の片鱗が見えてきました。
大切な人と一体化したい・火星から来る竜・小沢さとみのアスカっぽさ・・影響を受けていると思う。
宮古巽については書かれていなかったので、重要キャラでは無いってことかな。本編でも手足として利用(お互いに)してたみたいだし、なるたるのラスボスは須藤で良いと思おう。
それから、地球がかつて取り込んだ乙姫が何らかのタイミングで失われた、ってなんで失われたん?てずっと思っていたのですがどうも寿命は1000年らしく(設定が違うが)スッキリしました。
最終話の展開はそこまで変わっていないようだし、構想を始める時から「世界を滅ぼすテーマ」で描いていたことがわかったので、あのラストはあれで正解なんだ。
明ちゃんの死、鶴丸の死(被爆で死ぬ予定だった?)、最終話が駆け足になっていたけど、本当は書きたかった事がプロットに書かれていて面白かったです。両性具有の涅見子とシイナの見開きとか、これから2人が創る地球って感じでそれも良いな。
いや~~、スッキリした事もあれば、さらにこの設定で読みたい・気になる事も増えてとても良い1冊でした。
世界観の入念な創り込みは創作する者全員読んでみてほしいと思うくらい、パワーを感じました。これくらい世界観練らないと面白い漫画にならないんだ。
最近、『火の鳥望郷編』や『PLUTO』のまさかのアニメ化が個人的に熱く、なるたる中学生編もアニメ化してほしいと強く願います。