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【いるかプロジェクト始動5】近未来コミュニティ構想(小説風)「ミドリさんの過去」

これまでのあらすじ
2026年、たっくん(ぼく)は、名古屋での仕事を辞め、八ヶ岳のコミュニティーに加わった。お金のないたっくんは、斉藤夫妻のシェアハウスに住むことになった。そこには、さまざまな分野のプロフェッショナルな人たちとの同居。休む間もなくたっくんは、ミカさんの言われた仕事場へ出向く。そこで聞かされた仕事は、政府をつくる仕事だった。


「ミカさん、冗談はやめてくださいよ。本気にしちゃいますよ、政府を作るなんて」

「あら、冗談に聞こえたかしら?」

「え!じゃ〜、本気??」

「もちろんよ、こんな大仕事だから、あなたに声をかけたのよ」

確かに、システムエンジニアとしては、AIのアルゴリズムについては脂が乗り始めていた。ぶっちゃけ名古屋の会社では、AIのプログラムに携わる機会も減ってきていたのも事実だ。まさか、AI政府を作るなんて、このコミュニティは凄すぎる。

「ここが、あなたの席よ」

「ありがとうございます!」

あれ?一番おくのPCの前には誰かが既に仕事をしているみたいだ。服はラフだけど、髪はポニーテールに結き、画面に真剣に向かっている。

(ああ、この子が薪ストーブをつけて温めてくれていたんだ)

お礼と挨拶をしようと近づいていくと、彼女がスーッと立ち上がり、

「たっくん、おはよ!」

腰を抜かしそうだった。昨日歓迎会で、酔っ払って絡んできたあの子だ。

「あっ、あっ、きっ昨日の。昨日はどうも」

「今日から一緒に働かせてもらいます、近藤ミドリです。ミドリって呼んでくださいね」

酔っ払っていない彼女は別人のようであるけど、やっぱり可愛い。

「こちらこそ、よろしくお願いします!」

ミカさんが割って入った。

「あら、もう知り合いだったのね。そうか、シェアハウスが一緒だったんだ」

ミドリさんは、ぼくと同い年だった。高等技術学校を出てすぐに就職。社会人としては先輩。この八ヶ岳のコミュニティの暗号通貨の開発に携わっていたらしい。そして、AI政府を作るプロジェクトに加わることになったようだ。

AI政府は、コミュニティの拡大に伴いいろいろな調整ごとを担う役割のハブシステムだった。まだ日本国政府がかろうじて機能しているし、北杜市のお役所だってある。ただ、役所もコロナ前と比べても4分の1程度の職員しかおらず、薄給での仕事で、モチベーションは低い。何せ、日本は債務不履行となって以来地方自治体はおろか国の維持だって危うい状況だった。病院では、額面では8倍。食料だって輸入品は10倍以上の値段になっていた。そんな弱った政府に対し、日本より早くに国としてピンチを迎えていたイギリス政府、いや正確には世界の権力者が日本政府へ入り込んでいたのだ。

その夜、ミドリさんと夕食の後ゆっくり話をした。

ミドリさんは25歳で結婚し、子供はいなかったが、夫はコロナ期にワクチンを打った翌日に心筋炎で亡くなった。22年の後半からは日本だけではなく世界の先進国、つまりF社のワクチンの影響が出始め、超過死亡率は40%増、出生率も50%まで低下していた。日本政府が、何のエビデンスもないままにm RNAワクチンに踏み切り、多くの人が犠牲となったのだ。他国では、薬害訴訟の嵐。日本ではその国民性からから、集団訴訟といったことは起こっていなかった。もうそのワクチン問題も風化しつつあるのが現状だった。

「私はワクチンを打っていないの。色々な情報が飛び交っていたけど、やっぱり何かおかしいと思ってね。だけど、旦那さんは、職域接種とかいって会社が集団で打つから仕方ないって言って、三回目のワクチン接種して、それで・・・・」

「辛い話だね。ぼくもワクチンは打っていない。もともと右へならえが幼い時から嫌いで、まだ大人になりきれてなかったからな、はははは。」

ぼくは、から笑いをしてその場のくらい雰囲気を変えようとした。

「あのコロナからは本当に色々なことがあったわね。安倍元首相の暗殺から始まり、岸田さんも命を狙われてさ。結局自民党は、無くなってしまった。戦後自民党が日本を引っ張ってきたのは事実だけど、結局、アメリカ政府の意向を汲んで運営されていただけ。そのアメリカだって、もうバラバラになってしまって。」

「そうですね。安倍さんの事件の数日後に現地を見に行きましたよ。ちょうど出張していた場所から近かったので。テレビで見るよりかなり狭いところでしたよ。いずれにしても、何もかもがおかしいという印象でした。」

「実は、私の父は警察官でね。あの事件に関わっていたの。」

「え!マジ。関係者の娘さんってことだよね」

「そうなるわね。もう、死んでしまったけど。」

「また、びっくり」

「父はね、警察庁の警備部にいたの。警備部ってね、世間ではSPって言われている部署よ。あの時の直接の担当ではなかったけれど、急に警備の配置換えがあったらしい。父もそれほど気にしていなかったみたいだけど、同期が奈良の安倍さんの警備担当者だったから、こっそりその後話を聞いたらしいの。素人が素人の銃で心臓を射抜けるかって。その後、その担当の同期は行方が分からなくなった。そして父は任意で事情聴取中に、心筋梗塞でね。」

ぼくは、そんな色々あったミドリさんを、守りたいと思った。それにしても女性は強い。夫に父にやるせない事情で亡くなった身内がいるのに、あんなに毅然として明るいなんて。

つづく


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