4BY 活性雑穀どぶろく KODANE
はじめに
4回目のどぶろく造りです。
瓶内活性のどぶろくで雑穀入りです。何も考えずに面白く美味しいどぶろくですが、そのどぶろくが生まれた背景には非常に面白いストーリーが存在します。日本酒の背景まで知りたい方はご覧ください。
私は日本酒の営みを探るため、日本の酒の歴史を潜ってその地層を見ていきました。そうしてみると日本の酒は大きく4つの時代に分類できることがわかりました。
1,現代…嗜好品としての日本酒
2,農耕時代…御神酒としての日本酒
3,狩猟~農耕時代…どぶろくとしての日本酒
4,人類誕生以前~狩猟採集時代…顕花植物の生存戦略のためのミード、猿酒
このなかで人間が意図的に酒造りを行ったのが1から3の時代です。
人間はいちばん欲しい物のために酒を造る習性があります。
1の嗜好品ではお金のため。2の御神酒では穀物のため。3のどぶろくでは子孫を得るために酒は造られました。それぞれ商売繁盛、五穀豊穣、子孫繁栄のために酒を造ったと言えます。
現代の製品としての日本酒においては2,3の精神は薄らいできていますね。しかし神社や冠婚葬祭で使われる際の日本酒には、五穀豊穣・子孫繁栄の思想がこの現代にも表層に現れてきます。
今回の活性雑穀どぶろくKODANEは、3の子孫繁栄の酒に焦点を当てた日本の酒をイメージして製造しました。
子孫繁栄を願う口噛み酒
世界では約1万年前に穀物栽培が始まり、日本では約2800年前に稲の水耕栽培(田んぼ)による穀物栽培が始まったと言われています。弥生時代の始まりですね。
私たちは、2800年前から米を手に入れるようになったと考えていました。しかし2005年に岡山県で6000年前の米のプラントオパール(米が存在していた証拠)が発見されます。
実は2800年前に伝わったのは水耕栽培方法と治水工事や鉄器具などの効率の良い稲作システムで、稲はもっと前の縄文時代中後期から日本に入ってきており、麦やヒエなどと一緒に栽培されていたのです。
当時の栽培方法は焼畑農法です。縄文後期には焼畑による陸稲(おかぼ)や麦、そば、芋、栗などの栽培が行われていたことがわかっています。
この時代はまだ稲が水耕栽培で日本を統一する前で、米も麦もヒエも同じ穀物として分類されていたのでしょう。現代や農耕時代のような米信仰がなく、穀物による国・王・神の支配がない世界です。
当時の人たちには、穀物や国による人間の管理がありませんから、酒を造る理由はお金のためでも神に返して豊穣を願うためでもありません。
人間は一番欲しいもののために酒を造る生物である。
当時の人間が一番欲しいもの。
それは子孫です。
彼らは子供を得るために酒を造りました。
いや、彼らではない。
女たちが酒を造った。
彼女たちは子供を授かるために酒を造った。
彼女たちは焼畑で栽培した穀物、芋類、木の実、野生のイネ科の穀物を原料に酒をつくったと考えられます。当時、栽培は命を産める女性の仕事です。
彼女たちは自分たちでつくった原料を煮て、その一部を口で噛んで土器に戻しました。その役目は子供の産める年齢の女性です。唾液の分解酵素と穀物や発芽した麦の酵素や触媒効果でデンプンを糖化しました。
古くから酒を造ってきた部屋や酒造りに成功した土器を使ったり、その破片を新しい土器に入れれば優良酵母は伝達されて発酵ははじまる。花を咲せる木の下や聖域と言われる場所に土器をひと晩置くことで野生酵母を取り込み発酵させることもできました。
女性は口噛みによって、穀物に命を贈与し、それは発酵という形で新たな生命を生みました。
刀自と妻問婚
この一連の酒造りを指示する者は刀自(トジ)と呼ばれる家長のおばばです。杜氏の語源と言われていますね。
この時代は男性よりも女性が上位の女系制です。一家の大黒柱は男ではありません。何故なら、米も金もない時代では子供が何よりも上位に位置されるので、子供の出生をコントロールができる刀自(おばあちゃん)が一家の家長となります。穀物や金による管理や社会の監視監獄性が高まるほど人は男系に傾きます。
出生率も大人になる確率も低く、移動の可能性を持った当時の人たちの妊娠周期は3~4年でした。子供を生んだらその子供が自立移動できるまでは子供をつくりませんでした。
この時代は国の管理がありませんので婚姻関係はほぼありません。成人した男は夜にある程度決まった女性の家へ通い、朝に自分の母親の家に帰っていくような、契約期間を設けた派遣型の通い婚、妻問婚(つまどいこん)をしていました。
刀自は、通いに来る男に造った酒を飲ませて精力をつけさせて、自分の子供(口噛みした子)とまぐわいをさせます。これはイメージですが、刀自はどぶろくを造って男を呼び寄せているとも見受けられますね。男は酒を飲むときには女性を求めます。
女は酒を造って男を呼び、男は酒のあるところに女ありと、子孫繁栄のチャンスを嗅ぎつけて女のところに夜這いします。この人間の繁殖行動を呼合い(よびあい)といいます。
女と男を酒が繋いで子供を得る。
私が酒はKODANE(子種)だと言っている理由がここにあります。
男女が酒によって呼合い、マグワイを予感させる縁起儀礼の構造は、後の集団儀礼にも大きな影響を与え、カガイ(蛇)の神事、口噛み酒の巫女、歌垣、盆踊りから現代のスナック、キャバクラ、クラブなど姿を変えて残り続けています。
女性が酒をのませる神話 ヤマタノオロチ伝説
女性が酒を飲ませる話。ヤマタノオロチ伝説が最も有名ですね。クシナダヒメ(クシ=尖った、ナガ(ダ)=ヘビ、ヒメ=女)は造った酒を8つの頭を持つ大蛇に飲ませ、スサノオに退治させて草薙の剣を得てスサノオと結婚してイナダヒメとなります
ヘビ頭は男、酒は女のメタファー(隠喩・類推)で、剣は子供のメタミニー(換喩・縁起物)です。これはクシナガヒメはたくさんの男に酒を飲ませてマグワイ、たくさんの子供を得たと読める縁起の話です。
農耕社会が強くなった古事記の時代では子供が稲に置き換えられて、クシナガヒメは稲田姫に変換されます。またここには狩猟から稲作へ、鉄へといったメタファーも読み解くことが可能で、このような神話はクシナガヒメが稲田姫に変わったように古代からアップデートされ続けているので、現代から古層を見ると様々な受け取り方ができるようになっています。
4BY活性雑穀どぶろくKODANEの製造方法
今回のKODANEもその名前の通り、子孫繁栄を願う酒として、様々な工夫をこらしてレッドブルやユンケル以上の精力増力をもたらすように製造しました。
◎原料
まずメイン原料の米は島根で多く作られるつや姫を使用しました。まずはそのネーミング。つや姫がまさしくKODANEのコンセプトを物語っています。姫は酒を造って何かに飲ませ、新しいものを生む巫女的存在です。
そして焼畑で造られる穀物として、麦、粟、稗もいれました。そして野生の豆である小豆(あずき)と、野生の穀物であるマコモ米(ワイルドライス)を使用しています。
当時、湿地帯の多かった日本列島ではマコモが大量に自生しており、野生の穀物として多く採取されていました。現在の日本では流通していないので、マコモ米はオーストラリア産です。オセアニアは遺伝子的にも近い民族なので抵抗感はないはずです。これらは四段糖化して入れました。
濾していない酒であり、六穀の酒なので、その他の醸造酒に区分されます。ここまで読んでいただけていればこの酒が日本の古層を表現する酒であることを理解していただけていると思います。その他の醸造酒でも内容が伴えば紛れもない日本酒であるという流れが起きることを期待しています。
◎酒母
今回の酒母は生もとです。過去に水もとでもやりましたが、生もとのモトスリがやはり呼合いやマグワイを類推させるので生もとにしました。
開栓注意は産道アナロジー
火当てをしていないので、開栓すると吹き出ます。容量を675mlにしたことと、瓶詰めから一ヶ月間静置してから発送するのでなんとか開けられると思います。ご注意ください。
開栓に時間をかけることは、神社までの細い参道や、茶室のにじり口とおなじで、一種のじらし効果をもたらします。活性の力から類推する生命の躍動とともに楽しんでいただけたらと思います。
KODANEの美味しい飲み方
今季のKODANEは、例年よりも辛口でなめらか。泡も細かくスムージーのようでした。私は今まででいちばん好みの感じでした。
そのままでも美味しく飲める(食べれる)KODANEですが、ひと工夫すると更に美味しくなります。単体である程度は完結する日本酒とは違った楽しみ方ができるのはどぶろくの大きな魅力ですね。
+ソーダでさっぱりと
+柑橘で爽やかに
+あんこで甘さをプラス
+意外にマッチ、ココア・チョコレート
今回のは特にスムージーのようにふわっとしているので色々と遊べそうです。