【絵本】月の紳士 :クマの「パウロ」編 第002話
ある日のことです。
クマのパウロは、いつも通りに「月の紳士」の家を訪ねようとしていました。
月の紳士は、シルクハットに黒いスーツを身にまとい、美味しいコーヒーを淹れて、ためになる話を聞かせてくれます。まあるいモフモフのパウロ。
月の紳士に会えると思うと、今日も鼓動が高鳴ります。
しかし、何と言う事でしょう。
いつもそこにあったはずの月の紳士の家が無くなってしまっていたのです。その敷地がすっからかん。一軒まるごと無いのです。
ただ、そこにはシルクハットと懐中時計が残されていました。しかも、その懐中時計は壊れていました。パウロが耳を当ててみると、チクタクと音を立てています。
「パウロくん。世界に目を向けてみなさい。」
月の紳士の言葉が、パウロの脳裏をよぎります。月の紳士の不在について街の人に尋ねてみますが、なぜか「そんな人、知らない。」と言うばかり。
確かにボクはここで、この場所で月の紳士と出会ったんだ。パウロは思います。何かの理由で、月の紳士は居なくなった。そうならば、僕がその月の紳士のいることを証明してみせる。
こうしてパウロの世界をめぐる旅は始まるのでした。
まずは街のカバン屋さんに足を運ぶパウロ。
「旅行用に何かいいカバンはありませんか?」
そこで薦められたのが魔法のカバン。そんなにすごい魔法ではないけれど、見た目よりたくさん物が入るらしいです。
シルクハットを深々とかぶり。チクタク時計を肩にかけて。ちょっと魔法のかかったカバンを片手に、パウロの冒険は始まります。
こうして始まった、パウロの世界旅行。
まず目指すのは「観覧車のある港町」。そこは月の紳士が話してくれた、とても魅力的でちょっと危険なメトロポリス。もしかすると月の紳士を見つける手がかりがあるのかも。
そうして、船が出ている街まで行ったパウロ。「観覧車のある港町」までの切符を買って、シルクハットが飛ばされないようにしっかりと押さえながらパウロは出航の時を待つのでした。
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