オリンピックと都市・建築: PARIS 2024
7/29-8/5の日程でオリンピックを見てきました
日本の試合を中心に、自分が楽しめそうな試合と場所そのものに興味が湧く会場
この2つの視点から、合計6セッション+1つのメダルセレモニーを観戦。7月に入ってから直前に渡航を決めた割には、想定以上に堪能できました
7/29 バスケ女子:日本 - アメリカ
@スタッド・ピエール・モーロワ / デカスロン・アリーナ(リール)
7/30バスケ男子:日本 - フランス
@スタッド・ピエール・モーロワ / デカスロン・アリーナ(リール)
8/1 バドミントン混合:準決勝
@ポルト・ド・ラ・シャペル・アリーナ / アディダス・アリーナ
8/3 サッカー女子:準々決勝 日本 - アメリカ
@パルク・デ・プランス
8/3 フェンシング女子:サーブル団体
@グラン・パレ
8/4 陸上競技
@スタッド・ド・フランス
自分が学生時代にやっていた110mハードル予選には、日本人3選手が出場。幅跳び予選なども観戦
チケットが必要な競技以外では、
7/31 チャンピオンズパーク@トロカデロ広場
8/1 アーバンスポーツ会場@コンコルド広場
8/3 聖火
8/5 トライアスロン
灼熱のなか歩き回り、充実のインプットとなりました
1年留学していたので、都市構造は大まかに頭に入っていたが、会場を巡ってみると、「スポーツ・大型イベント(オリンピック)」と「建築・都市(パリ)」の関係性について、当時は思いもしなかった気づきが湧いてきたので、まずは3つほど、書いてみようと思います
1) 都市の軸線に並ぶ会場
パリは古くから都市の骨格として道路・軸線の存在感が強く、それに沿って主要な建築・モニュメントが建設され、現代の生活にそのまま引き継がれている
今回の会場一覧
セーヌ川が絶対的な地形として存在しながら、そのセーヌ川と並行に走る
「凱旋門 ー シャンゼリゼ通り ー コンコルド広場 ー チュイルリー庭園 ー ルーヴル美術館」
を結ぶ【軸線①】はパリの都市構造の背骨とも言え(この下を走る地下鉄は1号線)、オリンピック会場の配置やレースコースも、自然とその軸線に沿ったものになっている
【軸線①】と交差する【軸線②】は
「アンヴァリッド ー アレクサンドル3世橋 ー グラン・パレ」
に見ることができる
2) 平和を体現するチャンピオンズ・パーク
これまで、冬季オリンピックのメダルプラザはあったものの、夏季オリンピックで初めてメダリストと観客が競技会場以外で触れ合える場が設けられた。祝祭の場として、非常に重要な企画だと感じた
「トロカデロ広場 ー イエナ橋 ー エッフェル塔 ー エッフェル塔スタジアム(仮設 / ビーチバレー) ー シャン・ド・マルス・アリーナ(仮設 / 柔道・レスリング)」
を貫く【軸線③】の始点である、トロカデロ広場がチャンピオンズ・パークであり、開会式の船を降りた選手が集まり、開会宣言が行われた場所である。大会を象徴する中心地と言えるだろう
今回、開会式がスタジアム以外で行われ、特定の競技(通常は陸上競技)に紐づかない場所に中心的な意味を与えたことは、今後の大型大会や都市計画のあり方に一石を投じるものとなるだろう。パリは軸線や広場がふんだんに存在しているため、絵になる計画が非常にしやすい、とも言える
チャンピオンズパークに集まる選手、集まった観客の国籍はバラバラであるが、皆が同じ方向を向いてメダリストを祝福し、自国の選手が登場すれば、サインとセルフィーをお願いするべく最前列に入れ替わる様子は、あちこちで戦争が起きている2024年において、強烈に平和を象徴する空間・イベント・体験であった
慰霊碑、戦争遺構などのモニュメントに向き合い、過去に思いを馳せ平和を祈るのとはまた異なる、「今この時」を楽しみながら平和を感じる場所、願う場所、という役割において、現代のオリンピックや平和を表す象徴的なシーンだと感じた
28年のロサンゼルスでも同様の取り組みが行われるか、非常に興味深い。仮に現時点で計画になくとも、今回の盛況ぶりから、今から考え始めるかもしれないし、そうあって欲しい
日本の報道では、どうしても日本チームの活躍・メダル獲得数が中心になるのだけど、こういった面からオリンピックという現象を多面的に捉えるのもいいだろう
https://olympics.com/ja/news/champions-park-biggest-party-paris-2024
3) 仮設・可変のアリーナとスタジアム
今回、大会のために新設された恒久施設は、3会場と言われている
1)スポーツクライミング場
https://olympics.com/ja/paris-2024/venues/le-bourget-climbing-venue
2)ポルト・ド・ラ・シャペル・アリーナ / アディダス・アリーナ
https://olympics.com/ja/paris-2024/venues/porte-de-la-chapelle-arena
このアリーナを大会のためと言うのかは、判断が分かれるところ。バスケチームのホームで使いながら、コンサートの予定もかなり入っている
https://www.adidasarena.com/programmation
3)アクアティクスセンター
https://olympics.com/ja/paris-2024/venues/aquatics-centre
競泳は、ラグビーや音楽コンサートをメインで行うパリ・ラ・デファンスアリーナ内に仮設のプールを設営して行われた
なお、福岡の世界水泳でも、同様にマリンメッセに仮設のプールを設営して行われ、東京都がオリンピックに合わせて整備し、毎年赤字を出しているアクアティクスセンターとは・・・という気持ちに
ロサンゼルス2028のプールはNFLのために建設されたSoFiスタジアム内に仮設で作られる予定
ブリスベン2032は、新設アリーナの中に仮設プールという記載が見られる
リールでは、通常はサッカーをメインで行うスタッド・ピエール・モロワ内に、仮設のバスケットボールコートを設営して試合が行われた。サッカースタジアムのままだと広すぎるので、真ん中で2つに区切り、サッカーのゴール裏スタンドが、バスケのメインスタンドに
開閉式屋根を持つスタジアムだからこそできる技ではあるが、異常な暑さを見せた今回のオリンピックでは、数少ない冷房の効いた空間として、非常に快適であった
こちらはハンドボールへ転換する様子
東京の国立競技場の様な超一等地であれば、建設費は嵩むものの、こういう作り方も良いのかもしれない
トッテナムの新スタジアム
レアル・マドリードの新スタジアム
も同様の機構を持っている
なお、ジャン・ヌーベルが30年も前の1994年に作成したスタッド・ド・フランスのコンペ案にも同様の機構を見ることができる
ポイントは、何にでも使える多目的スタジアムではなく、通常、多くの人が楽しむ用途(フランスであれば圧倒的にサッカー、ラグビーなのだろう)に合わせて特徴的に作り切った上で、いざという時に軽微な追加投資で仮設構築物を付加し、多少の粗には目をつぶり、数十年に1回の大型大会の実施も可能にすることではないだろうか
日本では、築地に計画中の多目的スタジアムに期待。また、全国に計画中のアリーナも、水泳や他の用途の仮設利用を検討しておくのも良いだろう
「グラン・パレ」は、今大会の最も美しい競技会場とも言え、グラン・パレに行くためにフランスに行ったと言っても過言ではない。直前にも関わらず、フェンシングのチケットを買えたのはラッキーだった。しかもメダルセッション
そもそも美術品の陳列館であり、スポーツ施設ではないが、仮設スタンドを作ることで、歴史的な風格のあるフェンシング会場になり、今大会を象徴するベニューとなった。築124年のモニュメントを使うことで、最高のスポーツをする・見る場になったのだろう。日本選手からも、会場の雰囲気が最高というコメントがあったのを聞いた
オリンピックなどの世界大会は、新設のスポーツ施設でやるものだ、という先入観を取っ払う世界が参照する好例だろう
ちなみに、フランスはフェンシングが大人気で、フェンシングをモチーフにした絵になるグラフィックがたくさん目に飛び込んできた
【参考リンク】
パリ 2024
会場 https://olympics.com/ja/paris-2024/venues
日程 https://olympics.com/ja/paris-2024/schedule/grid
リセールサイト https://ticket-resale.paris2024.org/
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ロサンゼルス 2028
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