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ニンジャスレイヤー、横から読むか?下から読むか?

記事のタイトルは岩井俊二監督の映画「打ち上げ花火、横から見るか?下から見るか?」のオマージュです。花火が江戸時代、モータルである徳川エドワード家康率いる軍が江戸戦争でニンジャに勝利した時代に市井の人々に愛され広まったことに基づいています。
これは私個人の考えですが、もしかしたら江戸時代に花火の文化が急速に広まったのは爆発四散したニンジャから着想を得た火薬職人らが兵器を娯楽に転用したからかもしれません。

ニンジャスレイヤーとの出会い

今年のはじめ、これまでの生活が一変して1人の時間が増えたので久しぶりに読書しようと思い立ちました。ちょうどコロナウイルスの騒ぎがはじまり外出など制限がかかったので、インターネットで読めることもあってニンジャスレイヤーなんとなく読み始めました。

数年前にアニメになってたしアイエエエ!で有名な痛快活劇なんだろうな。そんな浅はかな予想をしながらピクニック気分でネオサイタマへ降り立ちました。お花畑に行くようなルンルンとした気持ちはフジキドが流す血の涙で一瞬にして消え去りました。

ワビサビに触れて

ニンジャスレイヤーにはたいへん良い意味で裏切られました。とくにキルゾーン・スモトリのエピソードでこの物語をすべて読もうと心に決めました。殺伐とした雰囲気、いつの世も変わらぬ強者と弱者、そして強者のカチグミであってもニンジャの力の前では虫けら以下の力しかないというネオサイタマの過酷な現実。
他にもサンシタニンジャ、レオパルド=サンのエピソード「ア・カインド・オブ・サツバツ・ナイト」から溢れ出る虚しさ、哀れさ。カチグミサラリマンになるために必須の過酷なセンタ試験だとか、アガタ=サンが保証人がいないと治安の悪い地域でしか賃貸契約できなかったこと…。

こういった普遍的な悲哀、ビターさが激しいカラテの応酬やWasshoi!の掛け声やスリケンの合間を縫ってとてもうまく挟み込まれていて、ネオサイタマの非現実の物語がとても身近で切に迫るように感じられました。
カラテ描写がスシならば、ビター描写はガリやワサビのような効果を発揮しています。いやスシに例えきれないもっと深い概念…そう、ワビサビです。わたしはもう心の臓をクナイ・ダートで射抜かれてしまいました。

ダイブ・トゥ・ネオサイタマ

それ以降はTwitterもろくに開かずに起床そして朝ごはんや歯磨きのときもずっと読んでいました。Twitterを開いたと思えば「犬儒的スモトリスト」や「ICBS(都市間弾道スリケン)構想」についてしかつぶやかなくなりました。

それまではメカものだとかフロムソフトウェアの作品のファンアートをメインにしたアカウントでした。ニンジャスレイヤートリロジーを読んでいた2か月ほどで結果的に5、60人はフォロワーさんが減ったと思います。きっとミュートして放っておいてくれた人も多いでしょう。少し残念ですがそれは必要な犠牲でした。なぜならニンジャスレイヤーから得たもののほうが圧倒的に大きいからです。

ニンジャスレイヤーの中には作者のボンド氏とモーゼス氏のこれまで培ったセンスと知識、体験した文化が凝縮されていて、読者はそれを追体験できるのです。一気読みしていた時間は濃密で有意義で、それはもう贅沢な読み方だったと思います。

どんな作品にも言えますが、自分だけでは触れない分野のことを芋づる式に知れるのはいいことです。ニンジャスレイヤーを読んでいなければシャープのX68000という名PCが「ペケロッパ」という俗称で呼ばれていたこともきっと知らずに死んだでしょう。
このことが役に立つかはさておき、いろんな文化や価値観があることを知るというのは生きる上で大切だとわたしは考えています。

いろんな文化や価値観があるということを知らないとどうなるでしょうか?きっと何にでもコスパを求めるような遊び心のないつまらない人生になってしまいます。例えば立派なサラリマンなのにハンバーガーショップでドリンクを頼まずに無料の水を頼むようなやつです(服薬時などは別)。
このようにケチ臭く楽しみ方やおもいやりを知らない、ひとりよがりのつまらない一生を終えてしまいます。

結局どこから読むか?

わたしは先輩ヘッズがまとめてくれていたニンジャスレイヤーwikiから時系列に読み始めました。ちょうどサラリマンだったフジキドと同年代ということもあって入りやすかったです。
のちに発表順で読み返して、エピソードごとのアトモスフィアが似ているのは近い時期に発表されたからかな?という風におさらいをして楽しみました。

現在Twitterで連載されているのは4部でニンジャスレイヤーも若いマスラダ君に代が変わっているのでこちらから読むのもおすすめできます。
3部までは時系列がバラバラに発表されていましたが、4部は時系列なので迷いが少ないでしょう。

また4部はIRCというインターネット端末の使い方がいまの現実の世界と変わらない感じで使われているのもおすすめできる特徴だと思います。ニンジャたちもアップした画像に「良い」を欲しがったり、料理などの画像を上げて世界中にいる仲間と交流しています。
1~3部でのIRCは電話やメール、グループチャット的な使い方にとどまっていましたが、4部のIRCとニンジャのIRC映えしたい!という思いは今を生きるあなたならとくに親しみが沸くはずです。

横から…?

長い話をいちから読むの大変だよぉという方は、ニンジャスレイヤー公式アカウントのすぐれたAIがおすすめしてくれる短編エピソードを読んでみましょう。そこから気になるエピソード群やニンジャを見つけて読み進めるのもいいと思います。

わざわざこのnoteを見ているということは心配ないかもしれませんが、活字読むのしんどいな…という方はコミカライズ版がいいでしょう。Twitterのニンジャスレイヤー公式アカウントのフリート機能で余湖先生のコミカライズ版をチラ見することができるので雰囲気をつかめます。
ニンジャスレイヤー公式アカウントのフリート機能の巧みな使いこなしは各界で話題ですね。

下から…?

もうある程度連載を読んでるんだぜというそこのあなた、ニンジャスレイヤープラスは読みましたか?人気脇役ニンジャを掘り下げたエピソードだけでもかなりの量があって1か月490円なのは何かの間違いじゃないかと思いました。
フォレスト・サワタリがニンジャになった経緯は?レッドハッグ=サンはなぜ1度に2本のタバコを吸うの?大人気フェアリー…ヤクザ天狗=サンはスガモプリズンでどうなったの?

これらを読むだけでも十分な価値がありますが、おすすめは資料&読み物集のシャード・オブ・マッポーカリプスです。これを読むと忍殺世界のリアリティがぐんと増します。
私のおすすめは
◆シャード9:NNK‐128
◆シャード31:オムー連続射殺事件と、暗黒メガコーポ各社の企業マスコットへの取り組み
◆シャード40:知性マグロ
です。そのほかどんどん更新されているのであなたの目でオショガツとかに確かめてください。

さて、わたしは装甲騎兵ボトムズシリーズを見たらザナドゥ=サンのエピソードにも追いつかないといけません。見るべきものは多く、語るべきものも多い。時間はいくらあっても足りることを知りません。

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