THE MINOWA~編集の法則ABCDE~(箕輪さんと本をつくってみて)
今、幻冬舎の箕輪厚介さんと本をつくっています。
箕輪さんは堀江貴文さんの「多動力」やメタップス佐藤航陽さんの「お金2.0」、showroom前田裕二さんの「メモの魔力」など、出版不況と言われる時代にベストセラーを連発している編集者です。
本記事では、箕輪さんと一緒に本をつくってみて感じた、箕輪さんの編集者としての素晴らしさを、私たちがつくっている本「THE TEAM~5つの法則~」にちなみ、「THE MINOWA~編集の法則ABCDE~」として法則化し、紹介してみたいと思います。
編集に関わる方は勿論、コンテンツをつくるあらゆる人に、少しでも参考になればと思います。
● THE MINOWA~編集の法則ABCDE~
書籍「THE TEAM~5つの法則~」のテーマは文字通り「チーム」です。
私自身の組織変革コンサルタントとしての経験をもとに、「チームのつくり方」を伝える本です。
世の中には経営者向けの組織に関する本(「ティール組織」など)や個人向けのキャリアに関する本(「LIFE SHIFT」など)は沢山ありますが、その真ん中に位置する「チーム」に向けた良い本があまりないな、と感じていたのが書くきっかけでした。
「チーム」は、ビジネスパーソンは勿論、登校班で学校に行く小学生からゲートボールクラブで活動する高齢者まで、老若男女誰しもが関わるものです。しかし、私たちは学校でも会社でも、あまり体系的にチームのつくり方を教わることはありません。そこで、企業向けの組織変革コンサルティングのノウハウを、誰でも使えるように分かりやすく書こうと考え、「THE TEAM」をつくることにしました。
幻冬舎とNewsPicksの出版レーベルNewsPicksBooksから出版することが決まり、まずは土台となる内容をNewsPicksアカデミアが運営するゼミナール全6回で講義しました。それをライターの長谷川さんに書き起こして頂き、本のプロトタイプを作りました。そのプロトタイプは、長谷川さんのご尽力もあり、経営者や管理職だけでもなく、チームに携わるすべての人の役に立つ良い内容になったと思います。
それをもとに、1か月ほど前から箕輪さんとのディスカッションがスタートしました。
この1か月ほどプロトタイプをもとに「THE TEAM」を加筆・修正してきたのですが、手前味噌ながら箕輪さんのアドバイスによって大きく進化しています。
「箕輪さんって凄いって聞くけど、実際編集者としてどうなんだろう?」って思っていらっしゃる方ももしかしたらいらっしゃるかもしれませんが、僕は「マジで凄いな」と思いました。
僕がもらったアドバイスを「THE MINOWA~編集の法則ABCDE~」として、勝手に法則化し、紹介したいと思います。(あくまで著者はこう感じたという話なので、箕輪さんの意図とは違う可能性はあります(笑)その点はご容赦下さい。)
● Antitheseの法則 ~伝えるのはメッセージじゃない、アンチテーゼだ~
最初のミーティングが始まるなり、一言目に言われた言葉が
「麻野さんの本は、他のチームの本と何が違うんですか?」
でした。
私はストレートでシンプルなその質問に、思わず言葉が詰まってしまいました。
色々と考えながらつくっていたつもりでしたが、お恥ずかしながら、そう聞かれると意外と明快に答えられませんでした。
この問いに向き合ったことで「THE TEAM」の背骨がはっきりとしました。
それは、「チームは『精神論』や『経験則』で語られるべきではない。チームは『法則』で語られるべきだ。」というアンチテーゼです。
世の中のチームに関する本は「チームには信頼が大切だ」というようなことが著者の体験や感覚に基づいてだけ語られているものが多いです。「THE TEAM」で紹介するチームの法則は、すべて組織論・心理学・社会学などの学術的知見を用いて解き明かされたものです。それをビジネスパーソンだけでなく学生や主婦の方でも活用できるように分かりやすい法則に落とし込みました。(勿論、イメージしてもらいやすいように私の体験談も紹介はしています。)
また、法則を表現するために、数式や図を全チャプターにふんだんに盛り込みました。イメージ的には、世の中の多くのチームに関する本が「国語」っぽい内容なのに対して、「THE TEAM」は「算数」っぽい内容です。チームが国語ではなく、算数として捉えられることにより、多くの人に受け入れられやすく、分かりやすく、使いやすいものになったと思います。
コンテンツは「メッセージをアンチテーゼに昇華させることで、読者の心は動く、世の中は動く」ということを気づかされた箕輪さんの問いでした。
チームを「精神論」や「経験則」ではなく、「法則」で語る。
チームの問題を「国語」ではなく、「算数」で解く。
本の「目的」が明確になったきっかけとなりました。
● Brightestの法則 ~比べるのは自分じゃない、トップランナーだ~
箕輪さんと一緒に本をつくり始める前は、箕輪さんは自己主張のすごく強いタイプなのかなと勝手ながら思っていたのですが(笑)、実際はすごく丁寧に僕の中にあるものを引き出していってくれる方でした。
特に、今までご自身が編集者として関わった著者や書籍を事例に、基準を高めるような投げかけをして下さったのがとても有効でした。
「メタップスの佐藤さんの『お金2.0』は、貨幣の起源や歴史まで遡ってお金を表現することで『深み』のある本になっています。『THE TEAM』ももう少し『深み』が出せませんか?」
この投げかけによって、「ホモサピエンスと集団」や「東洋で発達した関係性世界観」などを掘り下げた上で、「何故、日本人にチームという武器を装着しなければならないのか。」を『深み』を持って示すことができたと思います。
もっと強烈だったのがこの投げかけ。
「著者の人生をさらけ出すことで、本に『熱』がこもります。麻野さんは『8歳で両親と死別した』とか『公園で弾き語りして暮らしていた』みたいな体験ないんですか?」
「そんな強烈な体験ねーよ!っていうかそれ、前田裕二やん!」ってその場では返答しました(笑)
でも、その後、自分で本当に読者の皆さんに伝えるべき体験がないか、向き合って考えてみました。
やはり、自分なりに色々と経験してきたつもりでも、showroom前田さんの人生経験に比べれば至って普通です。しかし、ビジネスの実績だけ取り上げれば、決して前田さんにも引けを取らないと自負しています。
平凡な人間である私が、チームの力によって既存のコンサルティング事業を建て直して売上を10倍にさせたり、モチベーションクラウドという新規事業をつくって時価総額を10倍にすることができた、それこそが私が伝えるべき体験なのだ、とある時、気づきました。
この投げかけによって、『熱』の入った本にすることができたと感じます。
ベンチマークすべきなのは「世の中のトップランナーが持つ『深み』や『熱』」ということを気づかされた箕輪さんの問いでした。
トップランナーたちが生んだベストセラーに負けないクオリティの本にする。
本の「基準」が明確になったきっかけとなりました。
● Customerの法則 ~欲しいのは専門家のうんちくじゃない、読者の目線だ~
箕輪さんと話している僕自身の勝手な印象では、箕輪さんは僕の専門にしている組織や人事というテーマにはあまり興味がないんじゃないかと思っています(笑)
ただ、だからこそ、この本の読者の一人として、率直な感想や意見をくれ、いつも経営者や人事、コンサルタントなど、組織人事についての専門性が比較的高いメンバーに囲まれている僕には新鮮でした。
印象的だった感想や意見。
「『働き方改革』の話するのやめません?『働き方改革』『リンモチ』っていう時点で、何か話の展開が想像できちゃうし、俺だったらあんま興味持てないような気がします。」
確かに。
「働き方改革」の本はもう世の中にいっぱいあるし、それについて書くのはやめときました。
「もっとこの法則、覚えやすくできません?俺だったらとてもじゃないけど全部覚えられないな。覚えられないと、使ってもらえないし。」
確かに。
「チームの法則」は5つに絞り込み、それぞれの法則の頭文字を繋げると「ABCDE」になるようにして覚えやすくしました。
ゴールはあくまで「一般の読者に興味を持ってもらうこと。そして、多くの読者に本の内容を使ってもらうこと」ということを気づかされた箕輪さんの問いでした。
どんな人でも興味が持てて、どんな人でも行動に繋げられる本にする。
本の「役割」が明確になったきっかけとなりました。
● Driveの法則 ~楽しんでもらうのは出来上がった本だけじゃない、本が出来上がるまでの道のり、そして本を読んだ後の道のりも、だ~
本を書き始めた時に、箕輪さんからは「なるべく本を書く過程で感じたことや気づいたことをTwitterで呟いていきましょう!」と言われました。
一昨日、初稿を書き上げて、「そろそろプロモーションのことを考え始めましょう」となった際にも、「発売直前に今から始めましょうと言っても間に合わないのは、Twitterの発信を通じて本づくりのストーリーを楽しんでもらうこと。Twitterでの呟きは続けて下さい!」と言われました。
箕輪さんと話していて気づいたこと。
本の楽しみ方には色々とあるということです。
まずは本を読む。これは最も大切な本の楽しみだと思います。
しかし、それだけではありません。
例えば、本の著者を応援する。
本づくりに参加する。
本を著者や編集者と一緒に広める。
そして、本の内容を行動にうつす。
本を読んだ感想や本から生まれた行動を著者や他の読者と共有する。
そんな風に本を色々な切り口から楽しむために大切なツールがTwitterであり、Twitterで本づくりのプロセスを共有していくことやTwitterで著者と読者が繋がっていくことで、読者に本を読むことに留まらない本の楽しみを共有できるのです。(このnoteもその1つです。)
デリバーすべきなのは「本を読む前後のストーリーも含めた楽しみ」ということを気づかされた箕輪さんの問いでした。
本づくりや本を広めていくプロセスも含めて楽しんでもらう。
本づくりの「対象」が明確になったきっかけとなりました。
● Energyの法則 ~与えるのは指摘じゃない、勇気だ~
箕輪さんとは基本的にメッセンジャーでやり取りをするのですが、私が本の構成や原稿、本のプロモーション案などを送ると、必ずフィードバックの前に、ポジティブなリアクションをくれます。
そのリアクションには3つくらいのパターンがあると分析しています。
内容がすごく良かった時は
「天才!」
内容がまぁまぁ良かった時は
「素晴らしい!」
内容が普通だったときは
「さすが!」
の大体3パターンです(笑)。
多分、本当に天才だと感じているわけではないと思いますが、分かっていても著者の僕も悪い気はしないものです。
箕輪さんとメッセンジャーでやり取りすると、毎回モチベーションが上がってました。
友人の産業医大室さんにその話をすると、「写真家の篠山紀信はその撮影の技術もさるところながら被写体の気分を乗せていくのがうまくて、有名な女優も気持ちよくヌードにさせることができるらしいけど、ミノワマンもそういうところが上手いのかもね。特にあなたは乗せやすそうだけど(笑)」と言っていました。
(ちなみに、今日は一言目に「神様!」ってリアクションされました(笑))
著者としては、「この原稿は本当に面白いのかなぁ。」という一定の不安があるものですが、箕輪さんにポジティブなリアクションをもらう度に勇気が持てました。
「もっと思い切ってこういう表現にしよう。」とか「こんな攻めた感じの章も加えてみよう。」などの挑戦が出来たのは、箕輪さんに勇気をもらえた部分が大きかったです。
コミュニケーションで大事なのは「相手を勇気づけるポジティブなリアクション」ということを気づかされた箕輪さんの反応でした。
失敗してもいいから、思い切ったことをしてみよう。
本の「方法」が明確になったきっかけとなりました。
●「THE TEAM ~5つの法則~」 3月21日(木)22時Amazon予約開始、4月3日(水)発売
Antitheseの法則、Brightestの法則、Customerの法則、Driveの法則、Energyの法則、以上の5つの法則が「THE MINOWA~編集の法則ABCDE~」です。
きっと箕輪さんの編集術は私が気づいた部分以外にもまだまだ色々とあると思います。
また、「THE TEAM~5つの法則~」のプロセスで気づいたことは積極的にnoteやTwitterで共有していきたいと思います!
本記事で紹介した「THE MINOWA~編集の法則ABCDE~」でつくった「THE TEAM~5つの法則~」は4月3日発売予定ですが、箕輪さんに限らず、色々な方にご意見を頂きながら、少しでも多くの方に役立てて頂けるように取り組んでいきたいと思います。
よろしくお願いします!
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