【書評】小泉悠『ロシア点描』--良い人なのか悪い人なのか
『ウクライナ戦争』『現代ロシアの軍事戦略』と読んできて、次には、ということでこの本を手に取った。うってかわって、この本は相当ほのぼの系である。
実際にロシアに住んでいた著者が、そこで見て聞いて直接感じたことを中心に書いてある。これはこれで面白い。
例えば、スターリン時代に作られたアパートがやたらと豪華で人気なこと。次にフルシチョフ時代に作られたものは割とざっくりした作りのこと。こういうのも実際に見た人でないとなかなかわからない。
地下鉄の話も良かった。モスクワの地下鉄はやたらと深いところにあり、内部も豪華だ。そして、核シェルターにするために作られたのか、すごく大量の人たちを収容できるように、非常に充実した作りになっている。
そして、ロシアに住む人々の話だ。著者が子どもを少々、薄着で外に連れ出そうとすると、見知らぬおばちゃんが、そんなんじゃダメよ、と声をかけてくる。それだけじゃない。ちゃんと厚着をさせるまでここを通さない、と道を塞いでしまう。
人と人との距離の感覚が日本とは全然違うんだね。他にも著者が道に迷っていたら、目的地まで連れて行ってくれる、やたらと親切な人達の話も出てくる。
こういった、ちょっと最初はとっつきにくいけど、実際にはめちゃくちゃいい人だったりするロシア人の話と、ウクライナで起こっている戦争の話がなかなか僕の頭の中で噛み合わない。
でも、そういう両面があるのが人間なんだろうね。