《第10回SCCしずおかコピー大賞 独りごと反省会。》 vol.6
課題1 「静岡企業の東京進出を後押しするコピー」
・僕らは、高層ビルなんかより
ずっと大きなものを見て育った。
このコピー、「静岡県=富士山」の公式を持ってきたものであることは、これまでの解説でもご理解いただけると思う。(または南アルプス、駿河湾や遠州灘等の地形・風景なども、ニッチですがありえます。)
その上で、何に魅かれたのだろうかを考えてみる。
大都会と地方都市とのスケール感。これはまるで、企業のスケール感に共通するように感じられる。特に日本の首都「東京」と静岡県内の都市であればなおさらに思う。
東京都の総人口13,937,664人に対して、静岡県の総人口は3,651,912人。
※出典
「東京都の人口(推計)」の概要(令和元年8月1日現在)
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/08/27/03.html
「静岡県市町村別推計人口(平成31年2月から令和元年11月まで)」
https://toukei.pref.shizuoka.jp/jinkoushugyouhan/data/02-030/3102jk-0112jk.html
平成28年度の東京都における都内総生産(名目)105兆5千億円に対して、静岡県の総生産(名目)17兆 444億円。
※出典
都民経済計算(都内総生産等)平成28年度年報
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/12/25/16.html
平成28年度 静岡県の県民経済計算(概 要 版)p2 -平成28年度県民経済計算の概要-より
https://toukei.pref.shizuoka.jp/bunsekihan/data/15-030/documents/28gaiyou.pdf
主要な指標は比べるまでもなく一桁以上の開きがある。このスケール感は、数値で見なくとも、体感的に感じているのが「近くて遠い」静岡県民ではないだろうか。意気揚々と東京に乗り込んだとしても、気圧される。同じ人間同士でも、そのスケール感の中でビジネスに勤しむ人たちと自分との間の差を、言葉遣い一つで感じてしまうこともあるものだ。
かつて、新宿の某クライアントの担当となり毎日営業に通いはじめた頃、東京の繁栄の象徴でもある副都心のビル群に圧倒された覚えがある。この巨大な建造物を作った人間の力強さと共に、この上階で悠々と働く人たちと地面から見上げる自分との格差が感じられたのだ(「うちの会社じゃあ、ここのテナント料を絶対払えないよな」とか「絶対、俺よりいい給料もらっている」などと思うわけです)。
そう、格差を感じた瞬間、自分たちと東京企業の違いに、気持ちが窮してしまったのだ。
このコピーは、この窮した気持ちに働くことを目指している。
人間が建てた「繁栄の象徴」高層ビルを『なんか』と言い放ち、圧倒しようと連立するビル群よりも高く大きい、形容するなら「雄大」な富士山を想像させ比較させることで、萎んでしまった気持ちに新たな空気を吹き込み再生させようと背中を押してくれている。
この『なんか』。読み込むほどにわかるのが、反骨精神を3文字で憑依させていること。人はどんなに圧倒されようと、この反骨精神があれば跳ね返せる。富士山の雄大さによるメリットで終わらなかったこと、反骨精神という普遍性に裏付けられたベネフィットに辿りついたことが、このコピーがファイナリストに残った意味だと思うのです。
新年あけまして おめでとうございます。(と言っても、もう7日。七草の日ですが。)
「コピーの学校」教頭による「第10回SCCしずおかコピー大賞」の作品についての独り言が、再開しました。ご意見などありましたら、ぜひお聞かせください。
本年もよろしくお願いします。
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