地方での新聞向けパブリシティ
マンションメーカーで広報担当15年、PR会社経営15年のPRプランナーが、地方の中小企業に特化した広報PRのヒントを発信しています。
1.絶対的な占有率と影響力を持つ各県地方紙
大都市圏では、読売・朝日・毎日・産経の4大新聞と日本経済新聞が強い影響力を持ちますが、地方の各県では、それぞれの地方紙(県紙ともいう)が圧倒的な発行部数と影響力を持つ場合が多いです。
比較的人口が少ない県の方が地方紙の市場占有率(世帯普及率)が高い、つまり地元での影響力が強い傾向があって、占有率の最も高い徳島新聞(徳島県)は80%以上、高知新聞(高知県)、福井新聞(福井)、日本海新聞(鳥取)、北国新聞(石川)などが70%以上となっています。その他の地方各県でも、代表的な地方紙は、おおむね5割以上の読者を抱えています。
新聞は近年、各紙とも購読部数が減少傾向にありますが、県内への情報の波及効果を狙うには、地元の地方紙の協力が欠かせません。
地方紙の中で、北海道新聞(北海道)、中日新聞(愛知)、西日本新聞(福岡)などは「ブロック紙」といい、広域(数県)にわたって全国紙を上回る部数と影響力を持つ新聞もあります。
夕刊は、ネットの普及により新聞の即時性が薄れたことや、購読部数が減少してきたことなどから廃止する社が相次いでおり、朝刊のみの地域が大半になってきました。
2.地方紙の記事の半分は通信社の配信記事
地方紙の紙面(記事)の半分以上は、海外の通信社や日本の「共同通信社」「時事通信社」などから配信される記事が使われています。政治・経済・国際・文化・社会面といった、世界規模、全国規模のニュースは、地方紙の記者では直接の取材が難しいことから、通信社と提携して記事の配信を受けているのです。そのため、全国の地方紙のそれらの面は、ほぼ似た内容の記事が占めることが多いです。
そのほかの地域社会面や地方経済面、文化・家庭情報面などの記事は、地方紙の記者が直接取材し執筆しています。県庁所在都市のほか、県内の主要な場所に支局や担当記者を置いて、きめ細かく取材していますので、全国紙よりもはるかに詳細な地元の情報まで拾ってもらえます。
3.全国紙の地方支局は人手不足で縮小傾向
企業側としては、地方紙だけでなく全国紙や日本経済新聞にも記事を掲載してほしいところ。各県の県庁所在地には5大紙(読売・朝日・毎日・産経・日経)の支局(総局と呼ぶ場合も)があり、地域内のニュースを取材して地域版、または県版で、そして重要なニュースは東京・大阪などの本社版で報じる体制を取っています。
ただ、このところ、どの新聞も購買部数が減少しているため、地方支局の記者の人数が減らされる傾向にあります。
20世紀の終わり頃までは、読売・朝日は県都の総局(支局)に数十人、県内主要都市に数人の支局、そのほかの地域に1人ずつの通信員を配置して、くまなく情報を拾う体制ができていました。今は県庁所在地以外の支局や通信部の閉鎖が相次いでいます。どの社も少ない人員で広いエリアの情報を取材しなければならず、各記者は手が回りにくい状況になっています。
日本経済新聞や産経新聞では、人口が少ない県の支局には記者兼任の支局長を1人置くだけというケースもでてきています。面積が広い県では、さすがに1人で隅々まで取材するのは物理的に無理があります。したがって県庁所在都市近郊のネタや、プレスリリースとして持ち込まれるネタのほかは記事化されにくいという状況も生まれています。
4.記者は各記者クラブ担当に分かれている
各新聞社の地方支局は、県政、市政、警察、教育、経済など、その地域にある「記者クラブ」ごとに1~2人の担当記者が加盟しています。いくつかのクラブを掛け持ちしている記者もいます。また、急に起きる事故や事件に備えて、記者クラブに所属せず県内全域のあらゆる分野に対応する「遊軍」と呼ばれる記者も数人います。
このうち、中小企業の動きを取材してくれるのが経済担当記者です。経済担当記者は県内の上場企業や電力会社・鉄道会社など公共性の強い企業のニュースを取材しながら、注目すべき中小企業の動きも細かく取材して記事にしています。
5.地方でのパブリシティは「やったもの勝ち」
記者たちにとって、ニュースネタとなる情報を提供してくれる会社はとてもありがたい存在。なのに、中小企業や地元の商店などが地方紙や全国紙の支局に自らプレスリリースを持ち込んだり、取材を要請したりしてくるケースはまだまだ本当に少数なのです。
需要と供給でいえば、メディアの需要に中小企業からの情報の供給が追い付いていません。地方でのパブリシティは「やったもの勝ち」といえる状況なのです。
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