G20開催のインドネシア、APEC開催のタイ、したたかさをみせたASEAN
年末にかけての大型イベントだったインドネシア開催のG20、タイ開催のAPECが無事に終わりました。直近のニュースの話題は、エジプト開催のCOPのほうに移っていますが、インドネシアとタイでの米中、日中韓、ASEAN印、さらに欧州も絡んだ多角的な外交の舞台を提供した今回のASEANの地味ながらしたたかな「縁の下の力持ち」の動きは、大いに評価されそうです。
特に、孤軍奮闘した感があったのは、インドネシアのジョコ大統領ではないでしょうか。G20には、G7(先進国)とその他(新興国)の対立と、民主国家と権威国家の対立も内包していますので、どう考えても、意見としてはまとまらないわけですが・・・それでも、同じ空気を共有すること自体に大いに意義があります。
APECも、直前まで、2014年から在任期間が8年を超えて、任期オーバーとの見方もあったのを、何とか2017年の新憲法発布後から8年との解釈で乗り越えたタイのプラユット首相も、バイデン大統領が、お孫さんの結婚式で帰国されたのはちょっとだけ残念な気もしますが(それはそれで、とても米国らしい素敵なお話という感じがいたします)、ハリス副大統領をお迎えした会議を終えてほっとしていることでしょう。
https://www.bangkokpost.com/thailand/general/2441414/prayut-brings-apec-summit-to-a-close
日本もまた、ASEANでASEAN首脳に加えて、日米、日中、日韓、日欧各国などの首脳会談を開催し、ASEANにおける重要会議の場をフル活用したことは論を待ちません。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/na/kr/page1_001401.html
これらがなければ、米中、日中、日韓の対話は、本国間ではなかなか難しい・・・のが事実です。その際、各国首脳は、政治家の本領をいかんなく発揮してさながら歌舞伎役者になります。その表情から、識者やメディアが今後の行方を読み解きますが、今回は、予想外?に皆さんよい表情でした。
その背景には、米中が、党大会と中間選挙をなんとか乗り切った後であり、ある程度、本音で外交に取り組めるモードになっていることが大きいように思えますし、ウクライナ侵攻が長期化するなか、協調すべきところはしてもよいのではないかという空気は感じられました。無論、両岸関係という重石は残ったままではあるのですが。
他方で、やはり、最大の勝者はASEANなのではないでしょうか。
個人的には、米欧と露、米と中、民主国家と強権国家、先進国と新興国の対峙の中で、今回ASEANは、そのどちらでもない第三国・地域であることを、おおいに訴求できたように思います。
米中や日欧が秋波を送り、そして韓国も。
やはり、大国主体で世界の分断基調自体が続く中で、中小国家の集合体ながらも、したたかに漁夫の利を得るのはASEANのようです。
ただし、経済に目を転じると、ASEANは外需主導の国が多く、世界経済が減速していることは要注意です。
IMFのゲオルギエバ専務理事は、ドル高がもたらすASEAN通貨安と輸入インフレ、サプライチェーンの分断リスクも警鐘していますが、全くその通りでしょう。
それでも、秋波効果もあって、ASEANは相対的な高成長は維持できそうな気配です。
激動の2022年もあと1カ月で休暇入りです。2023年を迎えるにあたって、このような前向きな締めくくりが続くことが期待されます。