中国の産業振興策のパターンを読み解く(その2)

私事になりますが、「現代中国の産業振興策の推進力―中央政府・地方政府・国有企業の政策協調―」を2023年度中に正式に出版する運びとなり、本日、学術出版で豊富な実績をお持ちの株式会社文眞堂(東京都新宿区早稲田)様と出版契約書を締結しました。

 世界のリーダーたるあの米国が「中国製造2025」に代表される中国の産業振興策を警戒していることは周知の通りですが、日本や欧州もそれに触発される形で、市場に委ねてきた産業振興策を政府主導に一部軌道修正しています。中国の産業振興策は世界を揺るがすほど耳目を集めており、日本企業はその対応に追われているのが実情です。

 本書は、2008年度から2016年度までの9年度に亘る中国のシンクタンクと小職の共同研究をベースにして、中国の産業振興策のメカニズムを中央政府、地方政府、国有企業の関係から解き明かすことを試みたものです。

加えて、
2000年度~2001年度の小職の香港駐在時の中国産業調査、
2006年度の財務総合政策研究所の訪中ミッション参画時の北京・上海におけるヒアリング、
2008年度の中国内陸部武漢調査、
さらには、
中国の産業振興策の周辺国への影響として2018年度のタイの東部経済回廊、
2019年度のカンボジアのシアヌークビルにおける調査など、
ユーラシア大陸を20年超に亘って駆け抜けたエッセンスをふんだんに盛り込んでいます。

 章立ては以下の通りです(第6章のみ節以下まで記載)が、日本企業の対応策について言及しており、学術書でありながら、ビジネスパーソンの方にも是非一読していただきたい一冊となりますので上梓できましたら改めてご案内申し上げます。

はじめに・本書のねらいと構成
第1章 問題の所在と分析視角
第2章 中国の中央政府、地方政府、国有企業による重点産業政策
第3章 1990年代以降の中央政府と国有企業の関係
第4章 1990年代以降の中央政府と地方政府の分権と集権の関係
第5章 中国における重点産業政策への日本企業の対応策
第6章 中国の重点産業政策とASEANとの関係
第1節 ASEAN上位国のケース
(1)所得水準が伸び悩むタイ・マレーシア
(2)産業高度化の障壁
(3)中国との協調を模索
第2節 タイ東部経済回廊開発(EEC)にみる中国との協調
(1)中国の広域開発とタイの地域開発の親和性
(2)デジタル分野の協調
(3)製造分野の協調
(4)中国重点産業政策の特徴
第3節 ASEAN下位国のケース
(1)資本投入が不可欠のカンボジア
(2)中国の積極関与の背景
第4節 カンボジアシアヌークビル開発にみる中国との協調
(1)中国からカンボジアへの生産移管
(2)中国地方政府の参画
第5節 中国モデルに葛藤するASEAN
(1)ASEANで高まる中国の存在感
(2)中国の中央政府と国有企業の関係の影響を受けるASEAN
(3)中国の中央政府と地方政府関係の影響も受けるASEAN

第7章 ASEANにおける中国の重点産業政策への日本企業の対応策
第8章 中国モデルの堅持が「放」と「収」を生み出す源泉
結語・あとがき

(写真)株式会社文眞堂の前野隆社長(写真右)、前野眞司専務(写真左)と筆者 本棚の書籍は、同社における刊行物



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