中国の産業振興策のパターンを読み解く
大学の出版助成に申し込んでいたのですが、この度採用していただき、大学叢書の一環として、単著を出せる運びとなりました。研究者の端くれとしては学術単著が不可欠と感じておりましたが、なんとか1冊、どうでしょう、夏が過ぎて晩秋になる頃でしょうか、刊行できそうです。
タイトルは、「現代中国の産業振興策の推進力ー中央政府、地方政府、国有企業の政策協調」となりました。私は、中国経済が専門・・・という感じではないのですが、実は、2008年度から2016年度まで、9年間に亘って、シンクタンクで提携先の中国のシンクタンクと共同研究を行ってきました。
そのため、中国の産業振興策のパターンと、それへの外資企業の対応、という形で、長らく調査・研究を行ってきたことになるのですが、ある時、シンクタンクの米国担当者が、「中国製造2025って一体何なんだ?」と慌ただしく聞いてきました。2016年末、米国でトランプ氏が大統領選を制した頃です。これまで、そのような紹介は一度も受けたことはなく、「第12次五カ年計画では、製造業高度化策を「戦略性新興産業」として打ち出してましたが、第13次五カ年計画では、それを「中国製造2025」として、バージョンアップしている感じです。いつものことですよ」とお返ししました。
しかし、米国担当者は納得せず、「とにかく詳細を教えてくれ。米国が騒いで大変なことになっている。一大事なんだ」とのこと・・・それから、トランプ政権は、「中国製造2025」を公然と批判、その後、米中産業大競争・・・となったことは周知の通りです。
私は、やっぱり日本では米国が騒がないと中国の産業振興策には注目しないんだな・・・少し寂しい気もしましたが、それだけ中国の存在が大きくなったと、米国までも認識していることには驚きました。
それから、中国式産業振興策に引きずられる感じで、米欧、さらに、日本も産業振興策を復活させている感があります。
また、中国の産業振興策は、先進国からは、そうは言ってもいわゆるターゲティング政策であり、時代錯誤・・・という批判の声がありますが、周辺アジアでは、評価する見方もあります。
その様子を、2018年12月にタイの東部経済回廊(EEC)、2019年12月にカンボジアのシアヌークビルで現地調査を行ってきました。ちょうどコロナ前のグッドタイミングでしたが、ASEAN上位国と下位国の視座で、中国との関係の章を設けております。
まだ大分先ですが、書籍の概要が決まりました、随時、お知らせさせていただききます。
また、日々匍匐前進しながら続けているアジア経済論の授業内容のエッセンスを、「令和版アジア経済論」として、こちらは、気軽に読める新書のような形で刊行したいと考えておりますが、構想段階です。
今、出版界は氷河期です。確実な販売数が見込めない限り、助成などがないと刊行は簡単には引き受けてはもらえません。今回は大学に心から感謝です。一昔前なら、皆さん新品のテキストを買っていましたが、今は、メルカリで買う時代でもあり、商業ベースの刊行のハードルは一層高まっているように思えます。好きな本が自由に買えるビジネスパーソンも、さほど多くはないように思えます。
無論、Amazon kindle出版など、新たな媒体も増えています。
こちらは、刊行のハードルは低いのですが、編集者の目が入っていませんので、その評価は書籍といえるかどうか微妙な面もあります。
そのため、共著にして販売先を増やしたり、有名な方とのコラボ本にしたり、あの手この手が、使われています。
それでも何とか、私は気力の続く限り、コンテンツを作っていきたいと考えております。しかも、しばらくの間は、これまで共著を重ねてきて、それは文殊の知恵としては大変素晴らしいのですが、どこか寄せ書き感が否めなかったこともあり、単独にこだわりたいたいと考えております。