:妄想歳時記:毛馬胡瓜の、 願うたり叶うたり
夏の盛り、ぬるむ空気もけだるく淀む。
お盆になると、いつもと違い
なにわの伝統野菜、毛馬胡瓜(けまきゅうり)は忙しくなる。
泉州の水茄子も、てんてこ舞い。
それもそのはず、お殻や割箸の足を付けた牛馬に成り、
祖霊を迎え、そして送る大切な仕事がある。
天王寺蕪、田辺大根にも応援を頼むが、
夏は遊びに、どこかに行っている。
忙しさは一時に重なるから、ずらしてほしいと願うが
こればかりは昔から決まっているから、しょうがない。
年寄りの笑顔、普段はいない子どもの視線。
茶色いおかず、三角に切った西瓜、ロウソクの炎。
線香の煙に隠れて、だれにも気付かれず任務を遂行。
汗をかきかき最後日、こちらのお宅はありがたく、
キンキンに冷えたビールも供えている。
これはこれは、おさがり頂き仕事終わりの報告ついでに
祖霊の行たり来たりを帳面つける閻魔様と
1杯やるには、願うたり叶うたりの真夏の夜。
子供の頃の夏休み、
家のお盆には
ナスやきゅうりの
牛馬はいなかった。
ただ今ほど、
暑くはなかったと
思い出す。
なにわの伝統野菜
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