見出し画像

新天地へ [森ネズミのトト 就農奮闘記 vol.4]

聞き取り調査を終え、すぐに独立して農業することは難しいと理解し、
まずは栽培技術の習得にむけて動きだそうと決めた 2021年秋。

金銭面の課題も大きいため、国の制度「就農準備資金」を活用できないかと考えました。新天地を探すお話です。


1. 農業大学校

新規就農についていただいた資料のなかに「農業大学校」がありました。

農業を専門に学べる施設で、各道府県にあります。

また、国の交付金のなかで「就農準備資金」があり、
その対象施設に農業大学校は認定されています。

国から農業を始めるための資金を2年間もらいながら、学校で農業について勉強し、就農のための準備ができるということです。

気になったら、まずは問い合わせ。

メールで色々と質問させてもらったら、近々オープンキャンパスがあるとのことで、施設や内容を聞けるいい機会だと思い、すぐに申し込みました。

オープンキャンパスに行くと、周りには制服を着た高校生ばかり!
自分も若返ったような錯覚をしながら、ちょっとワクワクした気持ちで説明を聞きました。

年間のカリキュラムの説明を受け、校舎内を見回ったり、パンジーの種まきを体験させてもらったりしました。
県の施設ということもあり、設備は潤沢にそろっており、さまざまな野菜や花について育てられる内容で、魅力的でありました。

説明会後に個別に面談してもらえる時間をとってくれました。
私と同様に社会人から農業大学校に入学する人は数年に1人くらいはいて、準備資金も受け取っているとのこと。
入学試験も高校入試レベルの問題なので、そこまでは難しくなさそうです。

しかし、入学は断念することにしました。

魅力的な部分も多かったのですが、さまざまな野菜の技術を学べるとはいえ、広く浅くのように感じました。
また、基本的には慣行農法(農薬や肥料の正しい使い方)を学びます。
独立して農家としてやっていくことを目標としているので、畑の規模も技術や経営ももっと実践的な内容で学ぶ必要があると思いました。

また、学校を卒業した人の多くは農業法人や実家の農業に携わるとのことで、卒業してすぐに独立は現実的ではないようでした。
大学卒業して、そこからまた就農すると、どんどん年を取ってしまいますし。


by Tossan

これらのことから農業大学校への入学は諦め、より実践的に農業を学べて、独立につなげることができそうな環境を探すこととしました。

2. 農業法人

農業大学校は諦めたものの、「就農準備資金」を利用しながら実践的な環境で学べないかを調べてみました。
準備資金が交付されるには、県が認定した研修先で学ぶ必要があります。

県内には農業大学校のほかには2つほどしかなく、居住地からの立地や栽培品目から魅力を感じるものではありませんでした。

ということで、準備資金も諦めて農業法人への転職を検討しました。


転職先の条件は、
1. 無農薬で野菜(品目問わず)を作っている会社
2. 最低限の生活ができるくらいの賃金をもらえるところ
です。

インターネットで「徳島」「農業」「無農薬」というワードで検索します。
農業法人としての検索結果は多くなかったものの、検索上位に気になる会社がありました。

そこは自然農法をやっている会社でした。
当時、とりあえず無農薬で作りたいという思いしかなく、農法にもいろいろあるということがよく分かっていなかったため、自然農法という言葉はここで初めて知りました。

こちらの会社は、私のように独立を目指すような人も
研修生としてたくさん受け入れている会社でした。

HPの中には、これまで研修を行なってきた人々の体験談や作業風景が載せてあり、どの人も素敵な笑顔で、楽しそうに農業をやっている雰囲気を感じとりました。

人員募集のところを見ると、興味ある人は随時問い合わせくださいと書かれてありました。
早速メールで興味がある旨を連絡しました。

するとすぐに返信があり、まずは作業体験しにきませんか?
と快く受け入れてくださいました。

3. 農業作業の体験へ

体験は丸一日を希望し、始業も皆さんに合わせます!と張り切って回答しました。
当時の起床時間は6:30ごろだったのですが、体験当日、起床は4:30!!
さすがに早い。
季節は秋中盤で、外は真っ暗、厚着をしないと震えるほどの寒さです。

ただ、暗闇から徐々に明るくなっていく様子や人気の少ない街並みをみて、自分が生きているなかにはこんな様子や瞬間があるんだなと感じて、なんだか嬉しくなりました。
そして、農業やるんだなーと実感した瞬間でもありました。

体験に行くと、そこには10数人の研修生がいました。
見た目も若そうな人ばかりで、20~30歳の人かな?
男女半々とまではいかないものの、女性も多くいました。

なんだか農業法人のイメージと違う!

イメージでは男性ばかりで、なんならオジサンが多く、外国人の研修生もいるのではないかと思っていましたが、そんなことはありませんでした。

後から聞いた話では、自然農という形でそこそこ大きな規模でやられている農業法人は全国的に珍しく、全国から研修生の問い合わせがあり、このような構成になっているようでした。

体験の第一印象はとても良かったです。

ラジオ体操から始まり、みんなで今日の作業内容についてミィーティングを行ったあと軽トラに乗って畑(圃場)へ向かいます。

午前中は収穫作業。このときはコマツナやチンゲンサイを採ったかな。
午後は除草作業などを行いました。

けずったろーという道具で除草

詳しい作業内容は省略しますが、農薬を使わないため除草などの作業はすべて人手によって進めます。どうぐも使いますが、素手で草をむしることも多々です。
そんな作業をされてきて大きく育ったコマツナなどをみて、収穫して、農薬を使わなくても出来るんだと感嘆しました。

慣れない作業で、夕方には全身バキバキになっていましたが、実作業を体験でき満足しました。
そして、ここなら野菜の技術を学べそうだと感じ、入りたいと思いました。
他の会社を見てもよかったのですが、第一印象と他の研修生の人たちの人柄がよかったので、即決しました。

その後、別日であらためて社長と面接をして、研修生として受け入れてくださることが決定しました。嬉しい!

2022年2月ごろから入社できることとなり、いよいよ野菜栽培について経験をしていけます。
ワクワクです!
そして独立へ向けての一歩が踏み出せて、とても幸せでした。

ちなみに当時の雇用内容は以下です。
他の農家の人に聞くと、農業でこれだけ体制を整えてしっかり給料くれるのは珍しいとのことでした。ありがたい。

●就業時間
 冬期6:00~17:00 休憩 2時間30分(昼休憩と午前、午後の休憩含む)
 夏期5:00~18:00 休憩 4時間30分(昼休憩と午前、午後の休憩含む)
 気温気候、作業内容により変動しますが、1日休憩時間を除き8時間30分間が目安になります。
 時期により30分~1時間程度の残業があります。(もちろん残業手当はつきます)
●研修手当182,700円/月
●社会保険、雇用保険、労災、寮費、食費は研修手当から天引きになります。
●休み1回/週
●有給 半年を過ぎると10日間

【後日談】
いま思うと、自分が住んでいる県に、しかも難なく通える距離の立地にこの会社があって幸運だったと感じます。
わざわざ県外から研修にくる人が多いなか、私は通いで、自分の家庭のことや独立の準備もしながら働けるので、こんな好条件はありません。
体験の日に即決したのは、いい決断でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?