見出し画像

坂本龍一のメディア・パフォーマンス その1


書籍「坂本龍一のメディア・パフォーマンス」

坂本龍一のメディア・パフォーマンス マス・メディアの中の芸術家像
編著=松井茂、川崎弘二  インタビュー=坂本龍一

フィルムアート社 / 2023.9.30 / ¥2,750
http://kojiks.sakura.ne.jp/sakamoto1.html

第1部 マス・メディアの中の芸術家像 1984/85年を中心に
 第1章 メディア・パフォーマンスというゲリラ戦
 第2章 作曲家・坂本龍一と武満徹という芸術家像
 第3章 「1984/85年のメディア・パフォーマンス」のための質問状

第2部 20世紀芸術を超えて 坂本龍一インタビュー
 第4章 武満徹との50年を振り返る(2018年)
 第5章 1984/85年のメディア・パフォーマンス(2019年)
 第6章 あるがままのSとNをMに求めて(2017年)

第3部 音楽のエラボレーション 21世紀の表現へ
 第7章 日記という表現形式から
 第8章 解体から沈黙へ
 第9章 コモンズを求めて──配信者という芸術家像のはじまり


2023年9月26日に書籍「坂本龍一のメディア・パフォーマンス」がフィルムアート社から刊行されます。こちらの書籍のメインとなるのは、上記した目次の第2部に収録された3つの坂本龍一さんへのインタビューです。

そのなかでも2019年5月に国際日本文化研究センター(日文研)で行われた坂本さんへの第5章のインタビューがもっとも重要なもので、こちらのインタビューはIAMASの松井茂さんと、当時は日文研にいらっしゃった坪井秀人さんを共同代表とする「マス・メディアの中の芸術家像」と題する研究会において行われたものです。

2019年5月 国際日本文化研究センター

こちらの研究会の様子は京都市立芸術大学の佐藤知久さんによる詳細なレポートが以下のウェブページにおいて公開されています。

実際,坂本氏は公開インタビューのなかで,小さな頃から「本屋の息子」として(父は著名な文学編集者)本に囲まれて育ったせいか,本の内容だけでなく,装丁や匂いなど,もの/メディアとしての本のあり方にも興味があったと述べていました。当時すでに本は古臭いものだと思われていたけれど,パフォーマンスという観点から見ると本というメディアは面白いメディアだと思っていた,と。両者の越境あるいは横断の仕方をどう見ていくかが,今後重要だと思われます。

佐藤知久「私たちが生きてきた時代について考えること」

佐藤さんのこちらの指摘にあるように、坂本さんは1983年に「本本堂」というプライベートな出版社を設立しています。しかし、それは自分の執筆したエッセイやインタビューをまとめて本にしたりするための出版社ではなく、書籍というすでに古典的なものとなっていた「メディア」を、「パフォーマンス・メディア」として新しく捉え直す試みのための出版社でした。

The Grey Wall(撮影:三浦憲治)

その象徴的な試みが、こちらの三浦憲治の撮影による記録写真が残された坂本さんの「The Grey Wall」という「メディア・パフォーマンス」であり、こちらのパフォーマンスでは1984年5月16日に本本堂から出版された高橋悠治と坂本龍一の対談「長電話」の表紙が、7時間かけて渋谷のパルコの壁に371枚も貼られています。

なぜ坂本さんは書籍という「パフォーマンス・メディア」を用いて「メディア・パフォーマンス」を実現しようとしたのか。そして「The Grey Wall」を始めとする坂本さんの「メディア・パフォーマンス」はどのように展開していったのか? その詳細は、2023年9月26日に発売される書籍「坂本龍一のメディア・パフォーマンス」をご覧ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?