『コックと泥棒、その妻と愛人』 映画と衣装、その密な関係
こんにちは。エグチです。
CINEMOREで新しい記事を書きました。
ここから先は補足といいますか、少しだけ広がりのある、書き足りないことを。
映像の衣装。
作風や内容にもよりますが、こだわりだすと思いのほか大変なことになってくる要素の一つ。この映画ではジャン・ポール・ゴルチエが初めて衣装を担当してグリーナウェイ監督の世界を明確に視覚化していて素晴らしい仕事をしてます。
こういう作品を見ると、やっぱり、西洋人には西洋の、東洋人には東洋の美学というか、似合う似合わないがはっきりして面白いです。
泥棒一味はレストランに大きく飾られているハルスの絵をなぞったようなコスチュームですが、暴君のアルバートや、やさぐれたティム・ロスのように、着崩してもサマになっていて、西洋人の大柄な骨格にはジャケットスタイルがハマる。
でもきっと彼らは『用心棒』の三船敏郎のような乱れまくった着流しの色気は出しづらいですよね。
ヘレン・ミレン演ずるジョージーナはヘアデザインとコスチュームがバッチリはまっていて、フォーマルなコーディネートとして素晴らしい。だからこそ後半の展開にそれが逆にいきてくるという。
故伊丹十三監督が名作ドキュメンタリー『マルサの女をマルサする』(あの周防正之監督作)で、衣装には妥協しないと言ってました。自分が役者だった時に衣装やヘアデザインが中途半端だと役柄に入り込みづらかった。だから俳優にはしっかりと完璧な衣装を用意し、ヘアデザインも凝って、さあやるぞ!という気分にして現場に送り出してあげたい。宮本信子のあのスタイルには監督のこだわりの哲学がありました。
忘れられないコスチュームの一つ。『ブレードランナー』のレイチェルとデッカード。
チャールズ・ノッドとマイケル・カプランがデザインしたこのスタイルは西洋的なクラシックとフューチャリズムの融合が素晴らしく、トム・フォードやマルジェラ、アレキサンダー・マックイーンなどなど数え上げたらキリがないぐらい多くのクリエイターに影響与えてます。
カプラン曰く、当時、リドリー・スコット監督がコスチュームデザイナー探していて、オーディションのように映画の世界観をプレゼンさせてたようです。その中で氏だけがキラキラしないフィルムノワール的なものを提案してきたので採用になったと。
その手法に影響を受けた監督が一人。
デヴィッド・フィンチャー。
そのマイケル・カプランと作り上げたのが
タイラー・ダーデン from『ファイト・クラブ』。
公開時に「W」誌で組まれた、スペシャルシューティング。ブラッド・ピット演ずるタイラー・ダーデンのアナザーストーリー。映画よりマッチョでスキンヘッド、いい感じです。スティーブン・クラインと映画の世界観がドンズバではまっていて言うことなしです。
カプラン氏曰く、ダーデンというキャラクターはお金に執着していないので古着というかビンテージショップで服を調達している設定にしたと。エイジングされた感じと肉体のマッチョさが合い、破壊衝動とユーモアのカタマリのようなダーデンの個性が滲み出て、まあ、COOLです。あの役は具現化するのが相当難しかったと思います。
マイケル・カプランは『フラッシュ・ダンス』も手がけてます。西洋人の骨格を熟知して、強調するところと隠すところ、映画の世界観を理解して見たことのないものを形にする力、本当に巧みです。
ちなみにカプラン先生、最近だとJ.J.エイブラムスのブレーンになっていて、「ミッション・インポッシブル」「スター・トレック」「スターウォーズ」を手がけてます。
なんと。ブレラン、スタトレ、SWを制覇している現役スタッフがいるとは。
もはやリビングレジェンド。
氏から、まだまだ目が離せません。