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初期設定の愛 8.手編みのマフラー

 
12月中旬だったかな、手編みのマフラーをもらった。
真っ白だ。ちょうど冬だ。少し早いが、誕生日のプレゼントのようだ。
これもKちゃんから渡された。
 
さすがに学校へは巻いてけないので、家で何度も巻いた。
何度も巻いて、はずして、巻いてははずして。幸せだった。
一人の時に、ちょっと庭にでてみた。
暖かい。これはいいぞ。気にいった。
 
首のあたりがちくちくする。今まで、マフラーなどしたことがない。
生まれて初めてのマフラーだ。
 
小学校時代、4年生くらいまでは、冬でも半ズボンだった記憶がある。
寒さには強かった。
前述の柔道少年の件、毎年正月元旦、朝の6時からの寒稽古、これで鍛えられたのか。稽古の後のお汁粉の味を思い出した。
 
このマフラーだが、なぜだか、当時小学校1年の妹がひどく気に入った。その年の冬中、妹が毎日巻いて学校へ通っていた。
机の上に置いたままのマフラーを母が見つけ、母が妹に巻かせたようだ。

それを見るたび、幸せに包まれた。にやつきが止まらない。
  
すごく似合ってた。なんだか、これはこれでよかった。
自分が巻いて学校へ行けない理由になったからだ。
 
私がこのマフラーを巻いた姿を女神は見ていない。時々、そのことを思い、何だか切ない気持ちになる。
 
いや。正直に言えば、55歳の初老男性が、今また泣いている。
どめどなく涙が溢れる。これは何の涙だろうか。
 

9.LOVE LIKE へつづく


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KOJI
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