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初期設定の愛 22.告白未遂、そして再会

高2の夏休みの最初の土曜日、
この日を告白決行日とした。Y子さんだ。バイト仲間のY子さん。
 
前日の夜、電話をして、明日時間ください。話したいことがある。
夕方6時に電話するので、家で待っていてほしい。
そようにお願いした。
 
すでに、ほとんど、告白しているようなものだ。
 
Y子さんの自宅の最寄り駅、その駅の改札前に電話ボックスがある。
 
夕方6時15分前あたりから、その電話ボックスの前でうろうろ、行ったり来たりを繰り返し、スタンバイ。
改札上の丸時計を見る。よし、5分前だ。だれかに電話ボックスとられないように、電話ボックスの目の前で、待機した。
 
 
「ひさしぶりー」。やや遠くから、
若い女性の声だ。僕を発見して、小走りにはしりよってきていた。
右手を軽く胸の高さに挙げて、何度かフリフリしてからその手を下した。
 
むむっ、女神だ。 透明感のある声、鮮やかな栗色のストレートショートヘア、白い肌、深みのある黒目。
 
目があった。控え目だが、少し高揚している。そんな声だ。なんだかうれしそうだ。
 
 
あまりのことに、僕は無表情になる。
キョトンとした。
これだけの至近距離だ。言葉がすぐにはでなかった。
「…………」
 
  「O君に恋愛相談されたの、彼女にふられたんだって、それで・・・・blah-blah-blah・・・・。」

女神が一方的にはなし続ける。
「一緒にいこうよー♡」。
 
あれ、こんな距離感だったかな。いやに親しげなのだ。
  
まあいいや。うれしかった。
 
「う、うん。」曖昧な返事をした。
 
そこへO君登場、テンション高めだ。 「オー、お前も一緒に行こう、行こう行こう。」O君はいつも、勢いがある。落ち込んでいる風にはあまり見えない。
 
O君も女神も、他人の都合はあまり頓着しないらしい。
まあ、いいか。
 
O君は前述のO君だ、このO君とも高校は別々で、中学卒業以来だ。(注)
 
 
さて、女神だが、
てっきり、僕にはもう興味がなくなったのだと思っていたのだ。
 
今、女神が意識を僕に向けている。笑っているのだ。というが、平静そうであるが、笑みが自然に湧いて出ている感じだ。
なんだかすごく楽しそうなのだ。すごく喜んでいる、わくわくしている。感じるのだ。僕もわくわくしている。幸せだ。なんだか満たされる。
 
そうだ、そうだこの感じ。この感じなんだよ。楽しくてしょうがない。この感じ。この感じだ。なんだか満たされる感じ。不満がもうないのだ。焦りもない。このまま、このままでいたい。
 
彼女は、しっかりと僕の顔をみてしゃべる。僕も同じだ。
なんだよ、普通にしゃべれるじゃないかよ。(心の声)
 
なんだか、付き物がとれたような感じだ。いっきに世界はバラ色だ。
人生って、こんなに楽しいのか。
 
じわじわくるこの感じ。
これはなんだ、恋か? 今更か?
  
注:【10.逃走】で登場している。

23.月とすっぽん へつづく


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