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かまくらべしゃりサロン No.01|関目 峻行氏×高橋浩司

[対談] 関目峻行氏×高橋浩司

鎌倉市議会議員の高橋 浩司です。
「かまくらべしゃりサロン」は、鎌倉を拠点に活動されている方や、鎌倉に関係する方など、1度話してみたかった気になるあの人との対談記です。

第1回目のかまくらべしゃりサロンは、長男モナミの友人で毎月発行している新聞やリニューアル中のWEBサイト、選挙ポスター、選挙看板などのクリエイティブな面でお手伝いしていただいている関目 峻行さんとオンラインで対談しました。

関目くんは京都を拠点に日本全国さまざまな地域で「新しい日常作りのお手伝い」をコンセプトに空間・グラフィックなどのデザインと、企画やメディアなどのコト作りをされています。

EP01. 大学時代の学びとその後の道

高橋:関目くんは、大学で建築を学び大学院まで卒業したのに建築に関わる仕事をしていないのは何故ですか?

関目:いわゆる建築家という職業と比べると建築を仕事にはしていませんが、僕の中では今している仕事は建築の延長、あるいはその周辺領域にあると思っています。最終的に見えてくる成果物が建築でも建築以外でも良しと考えているので、プロジェクトごとに最適なアウトプットを選択しているため、建築に関わる仕事をしていないように見えるかもですね。shirokuma design hut.のWEBサイトをみたら少しわかるかもです。

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△ shirokuma design hut.のWEBサイト一覧


高橋:
なるほど。関目くんの中では建築に関わる仕事をしているということなのですね。建築家のような働き方ではなくて、今のスタイルにたどり着くきっかけとなる体験や経験がありましたか?

関目:実は大学3年生の頃までは建築に関わる仕事をして生きていくことを考えていました。ですが2011年3月の東日本大震災を経験して、所属した研究室のプロジェクトで被災地の復元模型(被災前の地域の模型を1/500サイズで制作)を制作・展示、さらにその模型を現地(僕の場合は宮城県気仙沼市大島)に運んで被災前の地域の様子や、地域の記憶、被災時の様子などの話を伺いながら白い復元模型に色を付けていき、被災前の記憶が反映された復元模型を制作する「記憶の街ワークショップ」に参加したことがきっかけで、月に1回気仙沼大島に通い始めました。

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△ 地域の方々の記憶が反映された復元模型を撮影している様子


復興やその後の未来について考える会を開催して、地域の方々と意見交換をしたり、地域イベントに参加したり、地域の中学生と制作物を作ったりという活動をしていく中で、建築そのものよりも、建築を取り巻く環境や、人間の営み(暮らし)に興味を持ちました。

その経験をきっかけとして、空間や人の関係を考える「場作り」や僕たちが暮らす街がもっと豊かになるには?という部分に多く触れることのできる仕事をしています。

EP02. 災害を教訓としての備え

高橋:東日本大震災は、私にとっても衝撃的な天災でした。阪神淡路大震災でも復興支援で現地を訪ねたのですが、その際は火災の匂いが強烈で、ビルは傾いたり、真ん中から割れていたりしていました。東日本大震災の時は、津波で何も無くなってしまったり、原子力発電所の事故で自宅に戻れなくなってしまったり、被害は甚大でしたね。そうした経験を首都圏を襲うであろう大震災に活かさなければとつくづく考えます。復興支援のために現地に入り込んで活動して来た経験からどのようなことを備えれば良いと考えますか?

関目:被災した地域の方々とお話をしていて、最も重要だと感じたことは「意識」です。大きな地震が起こる可能性があること、津波に襲われる可能性があることを認識しているのかいないのか。実際に災害が発生した時にどのように自分の命を守るのか。僕は、1度も考えたことがなかったです。ですが、彼らは過去の教訓から肌感覚でそれを知っていて、実際に災害が起きたときには実践できます。そのため、僕の通っていた気仙沼大島という地域では高齢者の割合が高いにも関わらず津波による死者数はそれほど多くなかったようです。

また、行政など整備する側として重要なこともあると思います。それは、主要動線をどう守るかです。気仙沼大島の場合、津波によって南北の主要動線が分断されてしまいました。支援物資を運ぶにも、移動するにも、主要動線が分断されてしまうと対応が後手後手になってしまうので、逃げる場所の確保や周知と共に、それらを繋ぐ主要な動線を守るための備えをしておく必要があると思います。

高橋:鎌倉の場合は、一時避難場所の整備と共に、その後の生活の場となる場所への動線などの確保をしていけると良いかもしれません。ちょっと個人的に気になっていることを聞いても良いですか?

EP03. 京都に住むという選択をした理由

関目:個人的に気になっていること…なんでしょう?

高橋:今は、京都を拠点に全国さまざまな地域で町おこしのお手伝いをしているそうですが、京都は鎌倉と同じ古都なので、川崎出身の関目さんが、京都を選んだ理由に興味があります。

関目:いくつか理由があるんですけど、大きく3つの理由と1つのプライベートな理由で京都に住むという選択をしました。

1つ目は、前々から機会があれば1度京都に住んでみたいと思っていたことです。川崎市で生まれ育った僕から見える京都は、修学旅行の行き先だったり、旅行の目的地だったり、観光のイメージが強くて、きっと住んでみたから見えてくる京都に興味がありました。

2つ目は、移住する前の環境と将来欲しい環境を比べた時に、京都という場所が物理的に最適かもと思ったからです。京都に移住する前は、福岡県北九州市の若松という地域に住んでいました。当時、北九州と横浜・川崎を行き来しながら仕事をする生活を送っていましたが、徐々に新潟県や徳島県、和歌山県など行き来する地域が増えてきました。これから先の未来でも様々な地域を行き来しながら生活をしていきたいと思っているので、物理的な中間地点の京都に住めば、東日本も西日本も北陸も、ついでに海外も、あっちこっち動きやすいんじゃないかなという理由です。

3つ目は、印象です。これまで僕が関わってきた地域は明らかに問題や課題を抱えている地域で、それらを誰とどう解決するのかという部分に関心がありました。最近では興味の範囲が少し変わってきていて「今、元気な地域をできるだけ元気なまま未来に残すには、今、何をするべきなのか」ということに取り組んでみたくなったんですよね。そんな視点で外から京都を見てみると、毎年多くの人が訪れて賑わっているように見えたからという理由です。住み始めてから地域ごとに全然違う環境なんだと気付くことになるんですけどね。

最後にプライベートな理由で、これを人に話すとそれが1番大きいよと言われるのですが「彼女が京都にいる」ということです。やっぱり大切な人とは近くにいて、なるべく多くの時間を一緒に過ごしたいですよね!

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△ 大文字山から京都の街を一望している様子

髙橋:会えない時間が愛を育てることもあるんだよね。

EP04. 政治への関心

関目:この前シェアハウスの住人同士で話していた時も最終的に「何事も愛が大事」という結論に落ち着きました。政治も愛かもですね。浩司さんのお手伝いを始めてから政治にもちょっと興味を持つようになりました。

髙橋:政治に携わる身として、選挙の投票率が下がっていたり、無投票も増えているのが、気になっていますが、若い方の政治離れをどう見ていますか?

関目:正直な話、僕、選挙には20歳の時の1回しか行ったことがないんです。たぶん僕と同世代の方は同じような状況の人が多いと思うんですよね。一方で、海外の友人たちは政治にものすごく関心のある人が多いです。僕は大学院生の時に1年程台湾へ留学していたことがあるのですが、台湾人の友人たちとはよく台湾の政治の話をしていた記憶があります。彼らと話していて気付いた事ですけど、日本の政治や選挙の際に見えてくる政策や公約が僕らよりも上の世代の方々に有利なものばかりに見えてしまっているのも1つの要因かもしれません。なので、僕を含めた同世代の方々が政治に関心を持たないことと同時に僕らの1票が僕らの未来に影響があるのかないのかで言えば、ないと判断してしまっているのだと思います。捉え方のズレなどもあるかとは思いますが、これは高齢者向け、これはあなたたち世代向け、これは未来の世代のためと少しわかりやすく表現ができると変わってくるのかもと思いました。

高橋:世代ごとに政策を打ち出すことも大事ですよね。私も台湾のひまわり学生運動のリーダーたちと対話をしたことがあります。また今度ゆっくり台湾の話をしましょう。

EP06. 鎌倉の印象

関目:浩司さんと新聞などの制作で打ち合わせをしている中で、鎌倉の歴史や伝説の話を聞かせていただいたのが印象的で、実際に鎌倉の伝説関連スポットを訪ねてみたくなりました。

高橋:そういえば8月に鎌倉にいらしてましたね。私はどうしても都合が付かずお会いできませんでしたが… その時の鎌倉の印象を教えてください。

関目:観光スポットを含めた昼間の鎌倉のイメージが強かったのですが、今回は夜の鎌倉だったり、暮らす鎌倉を体験できたと思っています。まず、夜の鎌倉を体験して感じたことは、横の繋がりが強い。そして、繋がりが特徴的だと思ったんです。鎌倉の場合は世代でも職種でも区切られていないように感じました。20代前半から40代前半辺りの方々がお店に集い、コミュニケーションをとっている。もちろんお店の雰囲気によって世代のバリエーションは変わると思いますが、世代という繋がりよりも鎌倉という地域での繋がりが強いように感じました。

昼間の鎌倉では「THE LIBERTY NEWS 9月号」の表紙写真の撮影をするために浄妙寺やハイランドの展望台、笛田公園など、鎌倉での暮らしに触れられるような場所に行って来たのですが、その途中で地域性も相まった個性的な人の集まりを見ました。その人たちは、鎌倉という地域で自分たちの暮らし作っていて、同じような価値観を持っていたり、同じような環境の人同士での集まりが街に溢れ出している。そんな印象でした。すごく暮らしやすくて、居心地も良いだろうなと感じました。


EP07. 行政と民間の連携

高橋:鎌倉には約135の神社仏閣の鎮守の杜や先人たちが守って来た緑の景観が豊かに残っていて、今回そういった地域を巡っていたんだね。鎌倉の町おこしを政治の側面からアプローチするとしたら、関目くんは何を大切にしたら良いと思いますか?

関目:普段、民間の企業と一緒に場作りや仕組み作りをする機会が多いですが、中には行政とのやりとりを経て出来上がった場やイベント、仕組みも存在します。そして、何より街に影響を与えるのは、その地域で暮らす人々の振る舞いだと思っています。僕は、実際にコトに取り組む人たちとそこで暮らす人々の日常が今よりも良くなるプロジェクトが良いプロジェクトだと思って取り組んでいるのですが、これが最も良く見えてくるのは公民の連携が取れているものだと感じています。

民間企業側が何か新しいことを始めるために行政に相談へ行った際によく出会う場面なのですが、前例がないという理由や解釈によって議論が難航してしまうケースです。

例えば、ゲストハウスでいうと旅館業法という国の定めたルールがあって、それを各自治体が解釈した上で自治体ごとのルールが決まっていて、解釈の仕方によって差異が出てしまうということがあります。この差異により、もしかするとその街の特徴になり得るプロジェクトの未来が狭くなってしまうなんてこともあるかもしれません。

高橋:そうですね。良い事をしようとしても法律が邪魔する事は多いんですよ。鎌倉でもコロナ騒動でテレワークをする方が増えまして、鎌倉らしい雰囲気でテレワークをして頂こうと建長寺さんにご協力頂きテラワークと言うイベントを実施したんですが、座禅タイムも取り入れ大好評でした。しかし、お寺の近所でテレワークをするコワーキングスペースを経営しようとすると法的に問題があるんですよね。こう言う事を考えると何を大切にしたらといつも考えますね。

関目:街を作っているのが、その街で暮らす人々だという僕の仮説が正しいとすれば、市民との意見交換ができていて、市民の代表である政治家が市民と街の未来に寄り添った政策ができていたら、前例がない場合の対応の方向性や、新しく生まれようとしているコトの良し悪しを判断する要素を持っておくことができるのでは?と思います。

なので、日常的に政治家と市民が対話をする機会や場であったり、地域の人が制度や仕組みを上手く活用できるようにするための正確な情報の拡散ルートの確保など、目に見えにくい事柄の見える化ができると、街全体が良い未来へ進んで行けるのではないかと思います。

EP08. 理想の政治家像

高橋:私の尊敬する政治家に南米パラグアイの前大統領ムヒカさんという人いるんですが、彼は世界で一番貧しい大統領と言われた有名な方です。ムヒカさんは軍事政権と戦って捕まり、10年以上牢屋に投獄されました。その時「人は一人では生きられない、社会性の在る生き物だから社会民主主義を目指すべきだ」と悟り、個人主義や資本主義が横行してはならないと考えたそうです。大統領になっても普段と変わらない生活を愛し、農家の仕事も続けていたと聞いています。一人一人に寄り添う政治を目指して、在任中から私財を投げ打って貧困家庭に家を建て与えたり、さまざまな経済政策によって40%だった貧困率を6.5%にまで改善させることに成功しました。政界を引退して85才になった今でも貧しい家庭の子ども達が通う学校を建設したり、農業を教えたりと、子ども達が大人になった時にパラグアイが理想の国になる事を夢見て活動を続けています。私が掲げた令和3年度版新政策三本柱の「意」で表現した市民に寄り添う行政-市民に寄り添う政治は、ムヒカさんが目指した政治でもあり、私の目指す理想の政治なんです。関目くんが考える理想の政治や政治家像ってありますか?

関目:今度ムヒカさんのドキュメンタリー映画が公開されますよね?見たいと思っていました。政治家って市民の代表だと思うんですけど、どんな政治家だったら応援したいかな?と考えると、街全体の方向性を示すことができる一面と距離感の近い一面を合わせ持つ人が良いかなと。やっぱり政治家って市民の代表で、僕らの暮らす街の未来をどうするかを決めていく立場にあると思うんですよね。そうなると僕個人の意見としては「政治家を応援する=僕らの暮らす街を応援する」という式が成り立って欲しいなと思います。

高橋:今日は、楽しい対談をありがとうございました。今度は是非、台湾の若者事情や経済、もちろん、建築や政治なんかを話題にして対談しましょうね。また、宜しくお願いします。

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かまくらべしゃりサロン No.01|関目峻行氏×高橋浩司
ゲスト:関目 峻行|shirokuma design hut.
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高橋浩司|鎌倉市議会議員
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