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古代ローマにトリップしてきた【サウナしきじ】

扉を開けると、そこは異世界だった。

目の前には白い椅子が8つ、黄色いベンチが2つ。そこに、たくさんの裸の男たちが座っている。誰も明日の心配をしていない。今、気持ちよくなることだけを考えている男たちばかりだ。

見たことのない景色だった。ついに来てしまった。もう元の世界には戻れなくなるかもしれない。それでもいい。

体を洗った後、サウナに入る。フィンランド式サウナで温度は110度くらい。テレビには広島vs巨人の試合が映っていた。

そういえば前世では野球記者をしていたこともあったっけ。まあそんなことはどうでもいい。今はただ気持ちよくなることだけに集中しよう。全身から汗があふれ出てくる。さあ、いよいよだ。水風呂に行こう。

サウナ室を出ると、驚きの光景が広がっていた。水風呂の水がまるっきりなくなっていたのだ。さっきまで男たちでにぎわっていた水風呂の中に、今は誰もいない。代わりにホースが入っていて、水がちょろちょろと出ている。

ちょうど水を入れ替えるタイミングらしい。浴槽がでかいので水がたまるまで時間がかかりそうだ。一度、温かい風呂に入る。

ゆっくりと、水がたまっていく。一番楽しみにしていた水風呂に入ろうとした瞬間に、ちょうど入れ替えだなんて奇跡だ。神様は、焦らしに焦らしてくるんだな。焦らせば焦らすほど、気持ちよくなれることを、僕は知っている。

さあ、いよいよ水風呂に入る。足から下半身、そして上半身。普段よりすんなり入っていけた。

柔らかい。水が全身を優しく包み込んでくれる。冷たさを感じない。

改めて浴室全体が目に入る。人、多いな。そうか今日は日曜日か。

男たちが次から次へと、水風呂に入ってくる。サウナ室も満員のようで、列ができている。ととのい椅子にも大量の男たち。

ピンときた。ここはローマ帝国だ。テルマエ・ロマエだ。

まるで異世界のようだと思っていたが、本当に異世界だった。古代ローマへやってきたのだ。どうりで筋肉質で凛々しい顔立ちの男が多いわけだ。

そんなことに思いを巡らせている間も、水は僕に優しく寄り添ってくる。気持ちいい。透き通った水を見てると、汚れた心がきれいになっていく気がする。

そしてこの水風呂、天井から天然水の滝が流れてくるのだ。しばし滝に当たる。

気持ちいい。最高に気持ちいい。ととのった。完璧にととのった。

どれくらい時間が経っただろうか。いつも水風呂に入る時は2分間、頭の中でカウントしているのだが、今日は数えてすらいない。10分は軽く過ぎたと思う。さすがに出るか。速やかにととのい椅子へGO。

白い椅子に座る。来た来た来た来た。2度目のととのいだ。

高温サウナからの、水風呂お預けからの、神がかった水風呂からの、ととのいタイム。言うことなし。お疲れさまでした。

人生で一番かもしれない。何と言えばいいのだろう。この気持ち良すぎる空間。生きててよかった。というよりも、俺は生きている!という感覚。

一生このままでいたいと思うけど、たぶんそれは無理なのだろう。外の世界に、出ないといけないのだろう。苦しいこともあるだろう。

素晴らしい人生にしたいとは思うけど、あんまり自信はない。なんでこんなに生きるって辛いんだよ、とか思うかもしれない。どんな人生になるか分からない。どんな最期を迎えるか分からない。

でも、僕はこの世界に生まれた。そして今、生きている。これは厳然たる事実だ。この先、何が起ころうと、誰に何と言われようと、揺らぐことはない。

それを感じられるだけで、安心する。美しい「サウナしきじ」での時間だった。

(おわり)

ここまでお読みいただきありがとうございます。

今回訪れた「サウナしきじ」がやばすぎてルポを書こう!と思いたち、とにかく感情のままに書き殴りました。言葉で表現するのは本当に難しく、どれだけ伝わったか分かりませんが、少しでもしきじを訪れた感動が伝わっていれば幸いです。とにかくおすすめなので、行ったことのない方はぜひ行ってみてください。

また、このサウナルポはインスタグラムにも掲載しています。

インスタでは、サウナ、水風呂など項目別に独断と偏見で評価をつけています。より詳しい情報もあるので、よければこちらもご覧ください。

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岡村幸治(コージー)
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