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壁に少々らっきょう【毎週ショートショートnote】

音楽室の壁にはらっきょうが詰まっている。

音楽の授業中、シューベルトのピアノ曲『楽興がっきょうの時』を『らっきょうの時』と読み間違う輩が、例年クラスに3人はいる。
たまたま僕がその通算333人目で、なおかつ先生が『楽興の時』第3楽章を生演奏中だった、というのが理由かは定かでないが、合唱部の証言によると、放課後練習でピアノを弾くと、壁穴の一部かららっきょうの芽が伸びてきたらしい。
ピアノの音に合わせて芽の高さや出る穴を変え、メロディを忠実に再現したそうだ。試しに1本引っこ抜くと、マンドラゴラのごとく♭ラで鳴いたとも聞いた。

翌日以降、僕は先生から罰当番を命じられ、授業や部活でピアノを弾く度、壁穴のらっきょうを収穫させられた。
全校生徒分くらいのらっきょうを抜き続け、楽譜の音符まで並んだらっきょうに見えてきた頃、今度は体育の授業で大失敗した。

今日の給食がやかましいらっきょう漬けとバレーボールなのはそういうわけである。


副題:中学の時、素で間違ったんだよ……