立法権の思い出【毎週ショートショートnote】
国民の政治離れが叫ばれる昨今。無関心層の参画を促すべく、裁判員制度に続いて立法員制度が導入された。
18歳以上の国民から選ばれた代表者が、内閣府特例参謀として政策立案を行い、実際に国会で議決に諮るものだ。
上級国民らしい無駄制度だな。鼻で笑った俺がまさかの第1期に当たった。
国政に携わるわけだから、素人の思い付きでは話にならない。内閣府に招集後、臨時の籍を置かれ、閣僚と政策秘書から政治の基礎を叩き込まれた。
国会会期中の150日間は議員宿舎に寝起きしつつ議事堂に通い、総理や大臣、議員のお歴々の居並ぶ場で法案を説明、実効性と公益性を問うた。
気絶しそうな緊張と恐怖。自分の挙動一つが一億人の生活を左右する。俺なら何億もらっても二度とごめんだ、責任の重さを骨の髄まで刻んで議事堂を後にした。
――そして今、私は金菊の記章を付けて衆院議場に座る。
導入から30年、立法員組で初の総理就任だ。
あの150日の重さは、今なお私の胸元にある。
副題:菊花に寄す