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ビール傘【毎週ショートショートnote】

ある日の事、極楽の蓮池を散歩なさっていたお釈迦様は、池に咲く蓮の中に一つ、他と違った色を見出されました。
その花弁は黄金に輝き、白く泡立つずいからは、ほろ苦くも爽やかな、何とも好い匂いが漂います。

お釈迦様が蓮の下をかき分けてご覧になりますと、池の底から透けて見える地獄では、鬼たちが盂蘭盆会うらぼんえの宴会をやっておりました。
酌み交わす杯の酒は蓮と同じ黄金と白。ははぁ、この蓮めは根を伸ばし過ぎ、地獄の酒に当たったか。苦笑なさったお釈迦様ですが、愉しげな様子に気を惹かれ、蓮の葉を抜いて花から滴る雫を受け、象鼻杯ぞうびはいを試されたのです。

初めての酒に酔い心地のお釈迦様、手元の葉から池へ雫をぽたぽたり。
天より注ぐ黄金の雨に、地獄は上を下への大騒動――。

しばし後。酔いの醒めたお釈迦様がご覧になりますと、地獄は傘の花が咲き誇り、鬼と亡者に犍陀多かんだたまでが、傘を杯にどんちゃん騒いでおりました。



副題:『蜘蛛の糸』酔いどれ変🕷