ビール傘【毎週ショートショートnote】
パチンコで有り金スッた挙句、土砂降りの中チャリをこぐ。
あー無理、ビール缶1本じゃ傘にもなんねぇ。片腕かざして交差点、赤信号でブレーキした拍子にタイヤが滑った。
途端に警笛が飛び出してくる。――げ、ポリだマジか!
「自転車も飲酒禁止だ、しょっぴくぞ!」
「飲んでねっスよ」
「片手運転の現行犯。つか未成年だろお前」
そのまま交番に拉致られ説教。ビール没収に加え、雨上がりまで拘束された。
お節介で典型的な元ヤン警官。名前は永ちゃんと言った。
没収されたビールは、二十歳の誕生日に返って来た。
要注意人物としてマークされ続けた俺は、別の警官から連絡を受け、嫌々交番へ引き取りに行った。
預かり証付きで保管されてた、期限切れの缶を飲み飲み歩く。
泥酔の暴走車に撥ねられて即死? くっそダセぇ。
――いつかそっち行っても、絶対あんたとは飲まねぇ。
空缶を逆さに突き上げる。
夕焼けにビールみたいな金の日暈が、あっけらかんと笑ってた。
副題:Toast to the halo