チャリンチャリン太郎【毎週ショートショートnote】

最初は自転車の鍵だったと思います。
――チャリン。突然落ちてきたんです目の前に。
見覚えのない錆びた鍵で、車に轢かれた様に真ん中でひしゃげていました。よくある事で気にも留めませんでしたけれど。

何日かして、また落ちてきました――チャリン。
ああ今度は小銭だわと思って。ぼろぼろに黒ずんだ十円玉、それとも百円玉かしら。――チャリン、チャリン。拾って交番へ届けようとしたら――チャリン。頭のもげたネジが一つ、二つ、三つ。真上をずうっ、、と追って行くと、工事の人がクレーン車で作業しているんです。
もしかしてクレーンのネジだったら、何本まで抜けたら壊れてしまうんだろう。よくある事だけれど、さすがに声をかけようと思ったところへ、

――チャリン。チャリン。
落ちてくるんです、焼け焦げたばらばらの部品が、次から次と絶え間なく。
――チャリン、チャリン。確かニュースで見た、国産ロケットの『ＫＩＮＴＡＲＯ』じゃないかしら。

ほら見て。墜ちて来る――

---

副題：１９９９／H-Ⅱ（８）