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ネコクインテット【毎週ショートショートnote】

「ママ、ネコがいる!」
泣いたカラスがもう笑った。ひな壇を指す娘の歓声に『良かったね』と苦笑する。
「ほら、七段そろった。みんなで遊んでらっしゃい」
段ボールとレジャーシートで増設した緋毛氈ひもうせんには、おもちゃ箱から引っ張り出したぬいぐるみが整列している。お友達の家の七段飾りを羨ましがり、さっきまで駄々をこねていたのだ。
「あかりをつけましょ、ぼんぼりに~」
舌足らずな歌に合わせて三毛がシンバルを鳴らし、キジトラが太鼓を叩く。声や物音に反応するおもちゃだ。ホイッスルを吹く黒猫に歌うブチ。数が足りなくて五人囃子ならぬ四獣囃子だけれど。
「……あら、五匹置いたかしら?」
首を傾げた私の耳に、タンと軽い音が届いた。
「おはなをあげましょ、もものはな~」
タン、タン、タタン! はしゃぐ娘に鼻を撫でられ、長い尻尾がひな壇を弾く。
 
 
「おはなをあげましょ、モモのはな~」
小さかった私とおばあちゃん猫の、懐かしい合唱が一節過ぎった。



副題:モモと節句