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二重人格ごっこ【毎週ショートショートnote】

『自分がもう一人いれば良いと思う?』
誰かに訊かれたら、僕はこう答える。
『もう一人の自分がいれば良いと思う』
大抵怪訝そうに、何が違うって顔されるけど。

一卵性双生児のはずだった。
母親の胎内、製造過程のどっかで、片方コピーミスで消滅した。
死産に該当するまで育たなかったから、どっちが兄で弟だったか分からない。合併された二人分の名前に痕跡だけ残ってる。

教えた母親も名付けた父親も恨んではない。
――でも、考えてしまうんだ。
自分がコピーだったんじゃないか?
しくじりをやらかす度、何かにつまづいて転ぶ度、
無性に考えてしまうんだ。

自分がころしてしまったかも知れない片割れ。
もしコピーだとしても、お前には二人分の命の責任がある。
楽になりたいと思う度、鏡を見て言い聞かせた。
無理矢理笑って言い聞かせた。


――なぁ、片割れ。
これからも一緒に笑って、一緒に泣いて。一緒に元気で長生きしような。

同じ顔のもう一人が、反射する光の中で笑ってる。



副題:ドッペルゲンガー双対生理論そうたいせいりろん