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感想文部【毎週ショートショートnote】
うちの学校は、毎年九月に左義長をやる。
書道の上達を願って、一月に書初めを焚くのが普通の左義長だけど、うちで願うのは文章の上達。夏休みの宿題の読書感想文を、クラスごとに校庭のタラヨウの下に埋めるんだ。
タラヨウの別名は葉書の木。葉っぱを引っかくと字が書けるから、感想文も原稿用紙じゃなくてタラヨウの葉っぱを使う。
木の下に埋めた感想文はタラヨウの肥やしになって、来年もっとたくさんの葉をつける。自分たちの言葉が木の一部に生まれ変わるんだ。順位とか点数とか気にせず、みんな一生けんめい書いてくる。
残さずに埋めるなら、白紙で出してもバレないって?
郵便局の木とも呼ばれるタラヨウは、来年の夏に感想文用の原稿葉紙を返してくれる。生徒全員の名前と、裏には去年の感想文の感想文が入ってる。みんなそれが何より楽しみなんだよ。
秋の赤い実はタラヨウからの花マル印。
その年集めた感想文から少しずつ抜粋で。虫眼鏡片手に、みんなで小さな読書会を開く。
副題:多羅葉~葉書の木