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「スイートソロウ」 懐かしくて切ない、誰かの物語

持田あきさんの女性漫画「スイートソロウ」は、伝言にまつわるオムニバス(全3巻)。東京へ片道3時間10分の街を舞台にそれぞれの人間ドラマが重なり合うー。

「スイートソロウ」は「切ない」に当たる言葉で、シェイクスピアが使用したことで有名だとか。そもそも日本語の「切ない」を直訳する英語はないらしい。知りませんでした。
ところで、この「スイートソロウ」と「伝言」ってすごい相性じゃないか!?「伝言」が「切なさ」を増幅させるというか、「切なさ」が「伝言」を際立たせるというか…
各話、セピア映画みたいな懐かしさと切なさと美しさがあるのです。持田あきさんの絵が繊細で綺麗だし。
このSNSやスマホが普及した現代に、わざわざ「伝言」を遣う粋さと、それを不自然に感じさせない舞台設定が見事です。
ちなみにこの「東京へ3時間10分」の街はどこか言及されていませんが、わかる人にはわかる岡山県のある街がモデルになっているようです。私は福岡県の端っこの出身ですが、この、めちゃくちゃド田舎では無いけど、都会の華やかさとは距離のある垢抜けない感じ、分かるなぁと思ってしまいます。言うなれば、どこにでもあるような地方の街。日本中、都会よりこんな街の方が多いでしょ!?という感じの。ずっと住んでると退屈で物足りないけど、一度外に出てから帰ってくるとホッとするような街。

各物語の主人公は、才能ある作家さんだったり平凡な会社員だったりと様々ですが、誰もに胸が締め付けられる様なエピソードがあり、それでもそれをそっと胸に秘めて日々を暮らしているのです。

実はこの作品、結構前に無料版か何かで一巻だけ読んでずっと印象に残っていて、何年か越しに読みたいな〜と思って探して電子書籍で購入しました。読み返す度に、その時の気持ちに左右されるのか、「あ、これ好きだな。」って思う話が違ったりします。何度でも読み返したい作品です。


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